第2話(大震災)

ーー飯田(いいだ)スカイは親友4人と学校をサボって焼き肉パーティーをした帰りに誘拐された。ほぼ拉致だ。盗難車に押し込まれ、男の自宅に連れていかれる。そして粗末な小屋に閉じ込められた。勿論、外部と遮断、隔離された所だ。腕時計型ウェアラブル端末も没収されてしまった。スカイはまだ12歳の小学生だ。父親が連合軍のレンジャーで幼い頃から徒手空拳を習っていたとはいえ、大人の男相手に抵抗むなしく捕まってしまった。


男は、スカイのウェアラブル端末から親に電話をかける。すぐに母親が出た。


『スカイ? 遅いじゃない。早く帰ってきなさい』

『息子さんを預かってる』

『…………あなた誰?』

『今から言うマイナンバーの口座に寿命を50年振り込んで』

『誘拐!? 悪い冗談はやめて。早く帰ってこないと、お父さんがぶちギレるわよ』


男は困惑している。この母親は身代金誘拐だと信じていない。後5日の寿命。急いでコイツらから寿命を盗まないとタイムオーバーだ。


『身代金を払わないならガキを殺す。どうせ、後少しでタイムオーバーだ』

『はいはい。お友達と楽しく焼き肉を食べたのね。夕食はふりかけだけにするわよ? 度が過ぎると、お母さんも怒るよ』


その時だった。グラッ! グラングラングラングラン! グシャーン! 14時22分に大震災が襲った。一昔前なら南海トラフ大地震と呼ばれていたものだ。男の家が倒壊した。スカイはその隙を逃さず、小屋から脱出する。


『地震発生! 地震発生! 直ちに避難してください!』


スカイは、音声を頼りに自分のウェアラブル端末を探す。男が梁に挟まれ、圧死寸前だった。


『地震発生! 地震発生! 直ちに避難してください!』


「助けて……くれ」

「雑魚は死ね」

「助けて! 助けて! 助けて!」


スカイは瓦礫の中から自分のウェアラブル端末を拾い上げると、左手首に装着した。スカイはウェアラブル端末でマップを見て、大体の位置を掴む。そして、警察に通報する。


『こちら110番。警察です。事件ですか? 事故ですか?』

「誘拐された。今、脱出した」

『誘拐!? 直ぐに警察官を向かわせます。周りは安全ですか?』

「犯人はさっきの揺れで柱に挟まれてる。俺は大丈夫」


ブーーー! 飛行バイクが、スカイの目の前に降り立つ。機動捜査隊の隊員だ。当たり前だが、腕時計型ウェアラブル端末にはGPSが内蔵されている。


「お怪我は?」

「ないよ」


ーースカイは無事に保護されたが、地震の影響により、スカイが通う小学校の児童、374人全員が亡くなった。災害は人口を減らす格好の機会だ。だが、スカイの他に4人の児童が助かった。共に焼き肉パーティーに参加していた者だ。メル、ツヨシ、ヨウヘイ、ミノル。


ーースカイは無事に家に帰されたが、父親は大震災で行方不明になってしまった。連合軍は大震災でのレスキュー作戦に消極的だったが、父親は強硬出動して連絡が取れなくなった。

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