第20話(秘密)
ーー次の日の朝。スカイの寝顔を間近でガン見するゆうこ。その気配を察したスカイは目覚める。
「おはようございます。スカイ様」
「わっ! なんだ!」
スカイはゆうこの顔を払いのけ、起き上がる。無機質か有機質か分からない分、怖さ倍増だ。
スカイはリビングに行くと、テーブルにタブレットレターが置かれていた。母親の置き手紙だ。
【180歳のおばあ様の容態が芳しくないので見に行ってくるね。朝食は冷蔵庫から適当に。ご飯は炊いてあります。母より】と書かれていた。
スカイは軽く済ませようと考えた。冷蔵庫の中を漁り、生卵を2つ出して、ボウルに落とし入れる。めんつゆを少し入れて、泡立て器でかき混ぜる。次にご飯を丼に盛り、かき混ぜた生卵をぶっかける。贅沢卵かけご飯の出来上がり。スカイはそれを掻き込んで、登校した。
スカイは走って登校してると、前をメルが1人で歩いてた。
「おっはよー、メル」
「あ、スカイ。おはよう」
「弓道部はどうだ?」
「一射入魂よ」
「なにそれ」
「まずは習字で漢字を書くの」
「変なの、アハハ」
「集中力を鍛えるトレーニングよ。サッカー部はどうなの?」
「…………メルには言っても大丈夫だろう。ジュニアオリンピックに出ることになった」
「入学して、まだ1ヶ月くらいだよ? 凄いな、スカイは」
「雷電為右衛門の子孫説はどうやら、じいちゃんの妄言だったみたい」
スカイは話題を変える。褒められるのは照れ臭い。特にメルには。
「いいじゃない。祖先が誰であろうと、スカイはスカイよ。ジュニアオリンピックはいつあるの?」
「4日後だよ。1つ秘密を守ってくれないか?」
「何?」
「チートを使うんだ。てか、もう使ってる」
「反則って事?」
「本当は15~17歳じゃないとジュニアオリンピックには出られない」
「私達は今12歳よね。年齢制限を破る訳ね。バレない? GLでルール違反すると、かなり重いペナルティーを課せられるって、聞いた事あるけど大丈夫?」
「大丈夫だ。とりあえず、秘密を守ってね」
「分かったわ。誰にも言わないよ」
スカイとメルは川沿いの道を歩き、学園に着く。
スカイは1年信長組の教室で自分の席に着いた。時間割を見ると、1時限目はGLの基礎知識の学習だ。スカイにとっては今更感がある。
キンコンカンコン。チャイムと同時に、担任の章子が入ってきた。
「「「おはようございます!」」」
「皆さん、おはようございます。今日はGLについて学びますよ。早速質問がある人いますか?」
「先生は寿命をどれくらい持ってるんですか?」
桜子が挙手して質問した。
「そうねえ。10年以上20年未満ってところかしら」
「教員もギャンブルで寿命を増やすんですか?」
別の生徒が質問した。
「私は滅多に賭け…………資産運用はしないわ。公務員は優遇されてるの。そうよね、飯田君」
「え? 何?」
「飯田君、授業に集中して」
「「「ワハハハハハ!!」」」
教室がドッと沸く。
「250歳になるじいちゃんが元航空幕僚長だったから、寿命と衣食住にはギリギリ困らないくらいだな」
「飯田君ちは凄い家系ね。サッカー部はジュニアオリンピックが近いから応援頑張ってね」
「うっ……、うん」
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