第6話(初ログイン)

サッカー部の部室は12畳ほどの広さにGLに繋がる筐体が4つ。雑然としている。


スカイは違和感を覚える。


「あれ。もう1人の太った先輩は?」

「ああ、佐久間なら帰ったよ。ボランティアだって。〝15歳問題〟に真剣なんだよ。佐久間はもうすぐ15歳になるからね」


15歳問題とは、15歳になると政府から支給される寿命の量を出来るだけ増やそうと〝良い人〟を演じる行為だ。そんな事をしたところで変わるのは多くて数ヵ月。無駄だが、15歳間近の子供にとっては大問題に捉えられる。


「大変だね。それよりこの筐体はどうしたの? 4つも」

「中古や粗大ゴミで捨てられてたのをメンテナンスしたんだよ。スカイ君はホント閉鎖的な環境で育ったんだね。自宅に筐体ないでしょ」

「ないよ。親が連合軍のレンジャーだったから」

「やっぱりね。公務員の家族はGLログインせずに莫大な寿命を手に入れられる。ATMやウェアラブル端末から寿命を支給されるでしょ」

「まあね」


次にオズが、スカイに話しかける。


「ねえ、飯田」

「スカイでいいよ、オズ部長」

「スカイ、今日はお祭りがあるよね。一緒に行かない?」

「悪い。先約が入ってるんだ。だからっ……」


スカイは、カミユに首根っこを掴まれる。


「バカか君は。学園一の美女のお誘いを断るのか?」

「幼なじみに誘われてるから」

「まあまあ、2人とも。私が絶世の美少女だからって争い事はやめて」


オズはロングヘアをかきあげながら言った。


「部長! 僕なら空いてますが」

「カミユ君、ごめん。女友達と行くわ」


スカイは何となくサッカー部のパワーバランスが分かった。


カミユは気を取り直す。


「…………よし、スカイ君。プラグを出して」

「プラグ? 延髄にあるやつ?」

「そうだよ。2つの眼球に次ぐ3つ目の剥き出しの臓器とも言われている」


スカイは自分でプラグの蓋を開ける。「痛い!」初めて開けた。


「じゃあ好きな筐体に座って。旧式のヘッドマウントディスプレイと脳内再生式が2体ずつあるよ」

「まずは旧式から試そうかな」


スカイは筐体に座り、カミユにプラグを挿してもらう。ヘッドマウントディスプレイを被り、初めてGLにログインした。


スカイの視界がパッと替わり、人通りの多い街の移る。スカイは今、東京のど真ん中に居る。


『聞こえるかい? スカイ君。センターモニターで観てる』空から天の声が聞こえた。


「カミユ先輩、ここはどこ?」

『つくーるシリーズのリアルシティだよ。200年前の東京を作ってみた。コビッド19が流行る前だ。テロリストが潜んでるから倒して』

「いきなり言われても…………」


スカイは、リュックサックを地面に置いた老人を見付ける。

(コイツだな?)


「おりゃっ!」


スカイは、老人の顔面に蹴りを入れた。


すると、ドカーン!! スカイの背後から爆風が来て吹き飛ばされる。視界は真っ暗になり、赤字で【ゲームオーバー】と出た。

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