第10話(1300キル)

スカイはまず、倉庫の一角に身を潜め、獲物が来るのを待つ。辺りはコンテナなどで迷路状になってる。スカイは聞こえてきた足音を逃さなかった。すぐ武器をグレネードランチャーに持ち替え、飛び出して発砲する。ズキュン! ドカーン! 一気に10人キルした。すると、スカイにキルされた1人がボイスチャットをしてきた。


「倉庫街のステージでグレネードランチャーは禁止ですよ」


スカイは無視してグレネードランチャーを試し打撃ちする。ドカーン! 今度は6人キルした。


「使えるじゃん。ペナルティでもあんの?」

「いや、そうじゃなくて」

「意味不明」

「嫌われるよ。ズルいからね」

「ははぁーん。さてはただの雑魚だな? 下がってよいぞ、雑魚」

「お前、ムカつくなー」

「流石はローリミット。雑魚同士で仲良くやってろ」

「覚えてろ」


ソイツは泣きながらログアウトした。


スカイは気を取り直して、次の獲物を探す。慎重に隣の倉庫に移動して2階に上がる。上から敵にグレネードランチャーを撃ちまくる。ドカーン! ドカーン! 30人まとめてキルした。スパパ! スパパ! 敵の狙撃だ。スカイには当たらない。スカイはしゃがみ、弾倉が空になったグレネードランチャーを仕舞い、ガトリングガンに持ち替える。


「さーて。コイツも楽しませてくれるのかな?」


スカイはガトリングガンを撃ちまくる。調子に乗った万能感に包まれ、心地好い。


スカイはキルしてキルしまくる。10人、100人、1000人と。1300人キルに達すると天の声が聞こえた。


『スカイ、聞こえる?』

「その声はオズ部長? 今忙しい」

『一旦ログアウトして』

「まだ5分くらいしかやってない。もうちょいやらせて」


今度は佐久間の声が聞こえた。


『スカイ君、そろそろマジで終わりにしようか。プレー開始から1時間以上経ってる。GL依存症になるよ』

「嘘!? …………仕方ないな」


スカイはヘッドマウントディスプレイを外し、プラグを抜く。強制終了だ。スカイはチクっと痛みを感じる。オズは蒼白な顔をしていた。逆に佐久間は興奮している。


「スカイ君、凄すぎる! 新記録だよ!」

「そんなに? 周りが雑魚だっただけだよ。ローリミットだし、アバターのオマケのお陰もあるし」

「スカイ、50万円は振り込まれるわよ。出だしから無傷で1300キルを超えたみたいね」


オズとは裏腹に佐久間は興奮しっぱなしだ。


「才能ですよ! 1回もキルされなかった! みるみるうちに強くなって! 大型新人だ! サッカー部に来てくれてありがとう、スカイ君!」

「あ、ああ。頭がクラクラする。船酔いみたいな感じ」

「GL依存症にはなってないみたいね。立てる?」


スカイは立ち上がろうとするが、脚に力が入らない。


「GL依存症になるとどうなるの?」

「廃人になる。佐久間、ちゃんとスカイに説明した?」

「えっ、あっ、そのう…………」

「12歳に30分以上、ウォーパークをプレーさせちゃダメよ」

「オズ部長、自己責任だ。佐久間先輩は悪くない。どれくらい休めばいい?」

「24時間は休むこと」

「1日も? もっとやりたい」

「オーバーワークは脳を傷めるわよ」

「それは嫌だな」

「しっかりと休息を取って、トレーニングを積めば、ジュニアオリンピックに出せる。年齢制限があるけど」

「オリンピック!? 何歳から?」

「15歳よ」

「あと3年も~?」

「本学園は今年初めてジュニアオリンピックの予選に出るから」

「実績はないの?」

「エントリーは15歳から。私と佐久間待ちよ」

「佐久間先輩は14歳じゃない?」

「誕生日がギリギリ間に合うんだよ」

「なるほど。カミユ先輩は4年生だけど、サッカー部に5年生と6年生は居ないの?」

「3年前に部員の喫煙がバレて、サッカーをするサッカー部は一度廃部になってるんだよ」


オズはGL筐体に座る。


「暗い話はそこまで。スカイ、モニター観てて。手本を見せてあげる」


ーーオズは更に強かった。ハイリミットのテーブルで、物の10分で450キル。ダイは2回だけ。スカイは格の違いを見せ付けられた。

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