第12話(チートの始まり)

ーー次の日の朝、スカイはサッカー部の部室へ行く。今度は4人揃った。スカイにオズ、カミユ、佐久間。すると、カミユが申し訳なさそうに言った。


「スカイ君、昨日は悪かったね」

「何の事?」

「クラスメートが近山農園の令嬢をナンパしたらしいけど」

「ああ。ミノルの事か」

「僕は近山農園でアルバイトしてるからさ。一気に肩身が狭くなったよ、ハハハ。スカイ君は近山農園の令嬢と付き合ってるのかい? 彼氏らしいことを言ってたみたいだけど」


オズが話に割って入る。


「ちょっと待ちなさい! 私のファーストキスを奪っておいて、彼女が他に2人も!?」

「いや、付き合ってる訳じゃ…………」


すかさず、カミユがスカイの首根っこを掴む。


「ハハハ、スカイ君、ファーストキスだって?」

「いや、あれは事故だ」

「私のファーストキスが事故ですって!?」

「何で俺ばっかり…………」


スカイは誤解を解くために必死に説明する。そして、勝手に円満解決した事にして、GLにログインする。そのやり取りに佐久間は笑いを堪えていた。


カミユはログインせずに、センターモニターでスカイに指示を出す。


『スカイ君、簡易ログインだ。昨日は脳を酷使したみたいだから、ライトなやつで行くよ』

「どんなやつ? またコビッド19前の東京?」

『格闘ゲームをやってみよう』

「リミットは30分?」

『VRサバゲーは特段に脳を使うからね。格闘ゲームなら数時間は大丈夫だよ。好きなのを選びな』

「おっと!」


スカイはバーチャル本棚からゲームソフトを選んでいると、150年前の格闘ゲームを発見した。


『良いの選んだね。それを3D化したVRゲームだよ』

「おお! 立体に見えるのにドットは粗い」


スピードに任せ、爪で切り裂くキャラや手からビームを出すキャラ、投げ専門のキャラなど、総勢50キャラがおり、そこから3体を選び、交代させながら敵の3体を倒す格闘ゲームだ。


ーースカイは50戦ほどコンピュータ相手にやり込み、アーケードモードをまたやろうとした時。


『スカイ君、そろそろやめにしようか。ログアウトして』

「は~い」


スカイはヘッドマウントディスプレイを外してプラグを抜く。段々痛みに慣れてきた。


オズはスカイの健闘を讃える。


「このタイプの格闘ゲームで53連勝は凄い」

「コンピュータの攻撃パターンは読めるからね」

「それも才能だよ、大型新人君」


佐久間はスカイの能力に興奮していた。


「カミユ君が手を加えたのにね」

「手を加えた? どゆこと?」

「敵からダメージをデカくしてあったのさ。特にコンボは」

「赤子の方が歯ごたえあるわ、アハハ」


興奮しっぱなしの佐久間はオズに進言する。


「部長。スカイ君の年齢を詐称して予選に出ましょうよ」

「佐久間。本気? チートよ?」


すると、カミユが立ち上がり、部室の奥を物色する。


「ありました! サバ読みソフト!」

「カミユ君、バレたら寿命剥奪よ?」

「バレずに優勝でもしようものなら30年の支給は固い」

「オズ部長、俺やるよ。大会はいつ?」

「来月」

「近いな。サバ読みソフトってのはどんなの?」

「プラグに噛ませるチップよ。目視では分からないけど。ちょっと心配」


カミユは試験管に入ってるチップを取り出す。1円玉より小さく、ほぼ透明だ。


「カミユ先輩、何でそんな物があるの?」

「部長が15歳になる前にサバを読んじゃおうと去年作った物だよ」

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