第9話(アバターチョイス)

ーー次の日の朝、スカイは学園へ登校してサッカー部の部室に顔を出す。佐久間が1人でセンターモニターのチューニングをしていた。


「やあ、飯田君。おはよう」

「佐久間先輩、おはよー。スカイでいいよ。他の2人は?」

「部長はもうすぐ来ると思うよ。カミユ先輩はアルバイト」

「どこでバイトしてるの?」

「近山農園だよ。給料良いんだって」

「へえ。近山農園か」

「知ってるんだ」

「近山農園の一人娘と幼なじみだからね」

「僕も近山農園でアルバイトしたい。スカイ君。ご令嬢に便宜を図ってよ」

「いいよ。1つ気になったんだけど」

「何?」

「GL部ってここだけ?」

「いや。他にもGLをやってる部活はあるけど、VRゲームに特化してるのはサッカー部だけだよ。〝ハイパーテオブロマ〟や〝ウォーパーク〟っていう大規模対戦シューティングゲームのプレーが出来るのはサッカー部だけ。やってみる?」

「うんうん! やるやる!」


スカイは筐体に座って延髄のプラグの蓋を開ける。チクっと痛い。ヘッドマウントディスプレイを装着して準備万端。


「慣れてるね。初心者にはウォーパークが良いだろう」


パッと、スカイの視界が真っ白になった。


『スカイ君、まずはアバターを決めよう。初期アバで行けよ』

「分かった」


スカイは、ざっとアバターのクローゼットを見ていると、航空自衛隊のユニフォームがあった。それを選ぶ。ピコン。


『お支払いは電子マネーにいたしますか? 寿命支払いにいたしますか?』


『スカイ君、やってくれたね。ハハハ、部費が1万円パーだ』

「佐久間先輩、安心して。稼ぐから。初期アバは柄じゃない」

『稼ぐって。寿命を賭ける事が出来る年齢じゃないのに?』

「お金なら大丈夫でしょ」

『おいおい、賞金でも狙うのか? 15歳以下は金銭も賭けられないよ』

「なら賞金を取るよ」


スカイはGLにログインして、その中のウォーパークのテーブル群へ行く。1万2000程のテーブルのうち、初心者マークのテーブルを横切り、ハイリミットのテーブルにエントリーした。


『バカ! スカイ君、何をやってる!?』

「まあ、見ときなよ。俺は、伝説の力士、雷電為右衛門の子孫説がある男だ」

『相撲を取るんじゃないんだよ?』

「代々連合軍の家系だ。安心して」

『どっちだよ!? あーあー、始まっちゃう』


スカイの視界が戦場へと切り替わる。すると、音声ガイダンスが流れる。


『新規ご登録、ありがとうございます。新規の方はハイリミットのテーブルでプレー不可となっております』


「じゃあ、ローリミットで」


佐久間は内心、ホッとして胸を撫で下ろす。


『かしこまりました。まず、操作方法を学んでください』


「分かった」


ウォーパークの初心者が使える武器は基本的にハンドガン、アサルトライフル、スナイパーライフル、手榴弾のみ。スカイは連合軍のアバターを設定したので4種の武器に加え、サバイバルナイフ、グレネードランチャー、ガトリングガンがプラスされた。


『スカイ君、ウォーパークは出だしから30人キルすると5000円の賞金だ。1回でもダイになったら強制終了だからね』

「了解! ニュータイプなところを魅せてやるぜ!」


スカイは倉庫街のステージに飛ばされた。200人対200人のチーム戦だ。


『3、2、1、スタート!』

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