第23話 リモート居残り
その日の夜、自分の部屋のベッドの上で「ばれないようにやろう」というダイチくんの言葉を思い返していた。
塾は休みになっているから集まれないし、他の場所もだいたい閉鎖されている。ばれないように調査なんてできるのだろうか。
そのとき、わたしの”スマホーバー”が鳴った。画面にはダイチと表示されている。
わたしはベッドから跳ね起き、スマホーバーを耳に付けた。
「はい!もしもし!?」
「フタバ、今大丈夫か?」聞き馴染みのあるダイチくんの声が耳元で響いた。
わたしがはい、というと、ダイチくんは
「明日、16時にリモート居残りをしようと思う。フタバも参加してくれるか?」と言った。リモート居残りとはなんだろうか、よくわからない。
わたしが困惑しているのが伝わったようだが、ダイチくんの説明は雑だった。
「とにかく16時からリモート居残りをするからスマホーバーを持って、部屋にいてくれ!あ、一人でな!」
次の日、ダイチくんの言う通り、16時少し前から私は自分の部屋で待機していた。部屋のドアには「入るべからず」という張り紙をした。
16時になると、スマホーバーに「ダイチくん」の文字が表示された。
わたしが通話ボタンを押すと、そこにはダイチくんの顔と、他にもヨッシー、モモタとギンタの顔が映しだされていた。それぞれがスマホーバーの画面の中を4等分した小さい四角に収まっている。(モモタとギンタは1つの四角にみっちり収まっている)
「おう、フタバ!これで後はアオイだけだな。」
ダイチくんがそう言うのとアオイさんが画面に現れるのはほぼ同時だった。全員の四角が少し小さくなる。
「あぶない、あぶない。寝過ごすとこやったわ!セーフやんな?」
口の横によだれの後のあるアオイさんがそういうと、ギリギリな、とダイチくんが言った。
「さあ、全員そろったな。これからリモート居残りを開始する。」
そういうと、ダイチくんは2枚の紙を取り出した。
「これは塾に届いた爆破予告の手紙をコピーしたものだ。本物は警察に捜査資料として押収されてしまったんだが、隠れてコピーしたんだ。」
2枚のうち、1枚にはどうやら便せんがコピーしてあるようだった。もちろん、差出人の名前はなく、塾の住所が書いてあり切手が貼ってある。
もう一枚には手書きの字で
『夏休みの間に、塾を爆破します。』と書いてあった。かなりそっけない内容だ。
「これを見てなにか気づくことはないか?」
ダイチくんが言うと、モモタとギンタがすぐさま答えた。
「消印が」「この街の郵便局になってる!」
その発言に皆が驚いた。
「2人ともそんな細かいとこ見れるようになったん?いっつも感情的になってすぐ空回りしてるのに…もううち嬉しいわあ!」
アオイさんに褒められたモモタとギンタが少し照れくさそうに言う。
「なんだよ!みんなびっくりして!」「最近、おれたちももっとみんなの役に立ちたいなと思って、2人で推理漫画やミステリードラマ見て勉強してるんだ。」
2人の顔を見ていると、彼らは本当にこの活動が、そしてMAMのみんなが好きなんだということが伝わってきた。そう考えてみると、モモタとギンタはいつも憎まれ口ばかり叩いているが、居残りに遅れたことはないし、いつも一生懸命仕事をやっている。
そしてさっき二人が言っていたことを思い出す。
「消印ってなに?」
わたしが言うと、2人は得意そうに話しだした。
「消印っていうのは手紙をポストや郵便局で出したときに押されるスタンプのようなものだよ。」「そこには出した場所と、郵便屋さんが受け取った日付が書いてあるんだ。」
なるほど、たしかに便せんのコピーをみると、この町の名前が入っている。
「つまり、犯人はこの町から手紙をだしたってこと?」
ヨッシーがそういうと、全員の顔がこわばった。
居残り秘密結社!? 秋野清瑞 @rirontohouhou
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。居残り秘密結社!?の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
生活綴方/秋野清瑞
★2 エッセイ・ノンフィクション 連載中 1話
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます