第19話 ダイチくんが犯人?
「ネコサライがすぐそばまで来ていたってことか!」
悔しそうなダイチくん。しかし、私は気づいてしまった。ダイチくんの真っ黒なスーツの方の方に、真っ白な毛が2,3本ついている。
記憶をたどってみると、聞き込みから帰ってきたとき、ダイチくんは一番最後に帰ってきた。その時に猫を玄関の横に置いておいたということはないだろうか。
「フタバ、どうしたんだ?疲れたか?」顔をしかめながら黙り込む私をダイチくんが心配そうにのぞき込んだ。
ダイチくんがおんぶしてくれた時のあの背中の広さと温かさを思い出す。
違う。ダイチくんは犯人じゃない。そう思いたいのに、心の中でもう一人の自分が問いかける。「じゃあなんで、白い毛を肩につけているの?」
違う、違う、違う‥‥。考えろ、考えろ。
「ダイチくん、電話貸してくれませんか?ヨッシーに電話するので。」
わたしはそういって、みんなから離れたところまで移動するとヨッシーに電話を掛けた。
ヨッシーが出てくれるか不安だったけど、5回プルルルルとなった後、ヨッシーが「フタバちゃん?」という声がした。
「うん、ヨッシー。塾に猫が捨てられてるの。犯人が分かりそうなの。すぐ塾に来てくれない?」
ヨッシーは少しの沈黙のあと何も言わずに電話を切った。大丈夫。きっと来てくれる。
ヨッシーが来るまでに、もう一つ確認しなくちゃ。
みんなの元へ帰ると、わたしはダイチくんをまっすぐに見つめて問いかけた。
「ダイチくん、そのスーツを着てから今までどこへ行ったか教えてください。」
「え?ああ、スーツはクリーニングに出してて、今日受け取ったんだ。それで家で着替えて、大学であった説明会に参加して、そのまま塾に来たよ。『居残り』での聞き込みも玄関先でしたから、家の中には入っていないかな。」
「なるほど…。」
真剣な顔つきの私をみんなが不思議そうに見ている。
夏の空はまだまだ明るい。遠くからたったったっと音がする。
ヨッシーだ。ヨッシーが息を切らしてみんなの元に現れた。ヨッシーはみんなを見回したあと、段ボールに入った白い猫を見てこういった。
「クロスケ!!!」
やっぱり。
「え?どういうことなん?真っ黒だからクロスケって名前にしたんやろ?この猫真っ白やん。全然違う猫やで?」
「この猫はクロスケなんです。」
ヨッシーはそういって白い猫を抱き寄せた。
わかりそうだ。わたしの頭が全速力で動いていく。
「ダイチくん、あのMAMって街の、安全を、守るをローマ字にした頭文字をとってMAMなんですよね。」
「いきなりなんだ。そうだぞ。」
「ネコサライの置手紙を借りて帰ってもいいですか。分かりそうなんです。犯人が。」
「え?」ダイチくんの顔がこわばる。
「明日の『居残り』は商店街で集合でお願いします。ダイチくん、そのスーツを着て絶対に来てくださいね。」
ヨッシーの腕の中で白い猫がニャオンと鳴いた。
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