第18話 捨てられた猫
それから5日間、ヨッシーは塾に姿を見せなかった。家に様子を見に行っても会ってもらえなかった。
『居残り』には思い空気が漂っていた。
ダイチくんはその日は大学で説明会があったらしく、珍しくスーツを着ていた。少し難しそうな顔をした後、「そういえば、塾にも最近来なくなった生徒が数人いるな。」と言った。
「もしかして。」「もしかして。」モモタとギンタが顔を見合わせる。
ダイチくんがその子の家に電話をかけると、その子たちもヨッシーと同じように猫がさらわれたショックで外に出られないようだった。どうやら私たちが聞き込みに回った時には、その子ではなく家族が取材に応じてたようなので全く気が付かなかった。
アオイさんすっと立って、猫探しのポスターにかいてある電話番号に1件1件電話をかけ始めた。
かけ終えたらしいアオイさんはこちらを振り向いてこういった。
「やっぱりどこの家も、子どもたちが、猫を拾ってきてかわいがっとったみたいやで。」
偶然かもしれない。けれど私たちがクロスケを拾った日のことを思い出す。クロスケはシャッターのしまった駄菓子屋さんの前に捨てられていた。まるで、駄菓子を買いに来た子ども達を待っているかのように。
「あの、みんながどこで猫を拾ったのかもう一回調べませんか?」私は言った。
「そうだな、それとネコサライからの置手紙も全部回収しよう。」
その声を合図にわたしたちはむわっとした外に駆け出した。
17時を少し回ったころ、全員が塾に戻ってきた。
全員の頭にはきっと駄菓子屋のおじさんの言った言葉が浮かんでいる。
「子どもたちの悲しむ顔が見たかったんだ…。」
猫はどれも学校や公園、空き地など子どものよく通る場所で拾われていた。逆に言えば、子どもが拾うように子どもがよく通るところに猫が捨てられていたのだ。
「子ども達を悲しませるためにこんなことをしているのか…。」
「「許せない。」」
私もモモタとギンタと同じ気持ちだった。目の前に広がる、ネコサライからの置手紙をにらみつける。
『ワタシハア、ネコサライデスウ。アナタノオ、ネコハア、モラッタヨオ。』
そのあと、『居残り』は18時まで続いたが、何の進展もなかった。ダイチくんが解散と言ってみんなが帰り始める。
すると一番初めに玄関を出たモモタが叫んだ。
「猫!!」
みんなで外へ出ると、塾の玄関のすぐ横に真っ白な猫が段ボールに入ってこちらを覗いていた。
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