第17話 ダイチくんのおんぶ
塾の玄関を出て駆け出したヨッシーをみんなで追う。
16時を過ぎているとはいえ、熱されたアスファルトの放つ熱がむわっと伝わってきてかなり暑い。流れる汗でヨッシーの姿がにじんていく。
商店街の入り口に入った時、足元のアスファルトの割れ目がわたしの足を捉えた。わたしは派手に前に飛んだ。一瞬何が起こったかわからなかったが、手と膝の痛みで転んだのだと分かった。
「大丈夫か?ほら、乗れ。」
うずくまっているとダイチくんがわたしの前にしゃがみこんだ。
「え、大丈夫です!全然痛くないし!」
ダイチくんは私の嘘を聞いた後、すりむいて血が出ているひざを見て、
「いいから、乗りな?俺は大丈夫だから。」と言った。
ヨッシーのためにも早く家に向かわないといけないし、これ以上断れそうになかったので、申し訳なかったけど言われるままにダイチくんにおんぶしてもらうことにした。
わたしが乗ると、再びみんな走り出した。
ダイチくんの背中で揺れながら、重たくないかななどと考えていると、
「フタバ、心配するな。俺はスポーツマンなんだぞ?」とダイチくんが笑って言った。
塾でのダイチくんと違って『居残り』でのダイチくんは優しくないとずっと思ってきたけど、そうじゃないのかもしれない。
そうこうしている間にヨッシーの家に着いた。
ヨッシーがお店の横の出入り口から家の中に入った。私たちは外で待っている間、クロスケー?クロスケー?とヨッシーの呼ぶ声が聞こえていた。
しかし、しばらくするとその声も聞こえなくなり、その後いくら待ってもヨッシーは出てこなかった。
「ヨッシー?大丈夫か?」アオイさんが呼ぶが返事がない。
アオイさんがダイチくんにおんぶされている私をみて、
「ちょっとうちが様子見てくるわ。」といい中に入っていった。
少しの後、アオイさんに肩を抱かれたヨッシーが泣きながら出てきた。ヨッシーの手には紙が握られていた。
『ネコハア、ネコサライガア、サライマシタア。カナシイデショウウ。』
ヨッシーがみんなに見せたその紙にはそう書いてあった。
「ふざけてやがる…」ダイチくんが地面を睨んでつぶやいた。
まだまだ暑い商店街にヨッシーのすすり泣く声が響いていた。
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