第3話 アイス食べたい!
アオイさんが行ってからも一回教科書を開いたんだけど、やっぱりやる気が出ない。
鉛筆を置いて、机の上に突っ伏していると
「大丈夫?疲れたかな?」とダイチくんがやってきた。
私はあわてて、だ、だいじょうぶでひゅと思いっきり噛んでしまった。
「あ、そうだ。商店街のおじさんがみんなで食べなってアイスくれたんだ。ふたばちゃんも食べるかい?」
アイス!
その言葉に思いっきりうなずいた。
わーい、アイスだ!と待っていると、ダイチくんはアイス…ではなく、1枚のプリントを持ってやってきた。
「アイスを食べる前にこのプリントをやってもらおうかな。」
え、プリント?と思いつつダイチくんの方を見ると、いつもと変わらない笑顔なはずなのになぜか目の奥が笑っていない
なんだか不思議だけど、プリントをやらないとアイスもらえないし…さっさとやってしまおうと思い、プリントを見ると、算数の問題・・・ではなく、呪文のようなものが書いてあった。
『矢と田の真ん中あなほれワンワン。底についたら右2歩進め。宝石取ったら左に3歩。宝石を取ったらがっちゃんこ。できた宝はなんじゃろな。』
なんだこれは、頭におおきなハテナを浮かべていると、ダイチくんがアイスを持ってやってきた。
「じゃあ、アイスここに置いとくからね。それ終わったら食べていいよ。」
えっ、こんなところに置いておかれたら溶けちゃうじゃん!なんだか今日のダイチくんはいじわるだ。
そんなことを思っている間にもアイスのカップの周りには水がぷつぷつと浮かんできている。急がないと!
すばやく鉛筆を走らせ、できたプリントをダイチくんに持っていく。
すると、ダイチくんの眉毛がピクッと動き、え、もう?とつぶやく。プリントを確認し、そして真剣な顔でこちらを向いた。
「双葉ちゃん、ちょっと話したいことがあるんだけど、塾が終わった後少し居残りしてくれるかな?」
よくわからないけど、とりあえず「はい!」と返し、ダッシュでアイスのもとへ向かう。よかった。まだカチカチだ。
アイスを食べながら、さっきのダイチくんの言葉を頭の中でもう一度思い浮かべる。「居残り」って何だろう。
…まさか、あまりにも勉強のできが悪いから怒られたりするのだろうか。
…も、もしかして、デートとか!?
一人ぐるぐるふふふと考える双葉の後ろでヨッシーはにやりと笑っていた。
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