第16話 聞き込み

 わたしたちはまず、手分けして今まで猫を盗まれた人たちへの聞き込みを始めた。聞き込みを終えると、塾に集合してそれぞれが得た情報を照らし合わせてみた。


 すると次の2つの共通点が浮かび上がった。

・猫が盗まれた当時は家に鍵がかかっていなかったか、猫が外にいたこと

・猫は元々捨て猫で最近拾ったこと


「もし犯人は鍵を開けて家に侵入したのなら、鍵を開けることができる知識や道具を持っている人間ってことで少しは絞れたんだがなあ。」

 ダイチくんが頭を抱える。


「暑いから、昼クーラーをつけるにしても、朝や夕方には窓を開けとる人も多いしなあ。犯人は空いている窓から侵入したり、家の外で歩いている猫をさらって、例の手紙を置いていったということしかわからんなあ。」


「だが、奇妙なのは2つ目だ。聞き込みに回った8件全部が最近猫を拾って、2週間もしないうちに猫が盗まれていたっておかしくないか?」


「おかしい!」「おかしい!」モモタとギンタが口々に言う。


 この街では普段捨て猫がたくさんいるわけではない。わたしだって、こないだ駄菓子屋さんのシャッターの前で見たのが初めてだ。


 ヨッシーが口を開く。

「同じ時期に捨て猫が増える…。例えば一度にたくさん猫が生まれた、とかはないのかな。」


 たしかに。猫は一度に何匹もの子どもを産む。育てられないと思った飼い主が色んなところに捨ててしまったということならあり得そうだ。


「それはないな。」ダイチくんが断言する。

「聞き込みによると猫はすべて大きくて確実に子猫ではなかったそうだ。それに猫の模様は全部ばらばらだった。」


 ダイチくんが、聞き込みで飼い主さんたちに書いてもらった猫の似顔絵を広げる。それを見ると、色も白・黒・茶とばらばらで、模様も全身同じ色、しましま、ぶちなどばらばらだった。こんなにばらばらの模様の猫が1匹から生まれることはないだろう。


「じゃあ、なぜか同時期にこの街で捨て猫が増えたことになるなあ。不思議な話やわ。しかも、気になるのは、盗まれた猫はどこに行ったのかやなあ。」


 アオイさんの言葉にダイチくんがうなずく。

「そうなんだ。ボスに聞いてみたところ、猫の泣き声がうるさいとか猫がどこかにたくさんいて困っている等という通報や相談はなかったそうだ。」


「どこかでひっそりと飼っているか、どこかに売られちゃったのかな…。」


 私がつぶやくと、ヨッシーがはっとしたように立ち上がった。

「わたし、窓開けたまま来ちゃった!!」

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