第10話 持ちものチェック

 神社の裏へ行くともう他の3人をつれたみんなが待っていた。


「おいおい、誰がケガしてるって?誰もケガなんてしてないじゃないか。」駄菓子屋のおじさんが少し怒ってわたしを見る。


 すると、ダイチくんが口を開く。

「休憩中にお集まりいただきすみません。実は僕たち、ある事件の調査をしています。」


「ある事件?」駄菓子屋のおじさんが言う。


「みなさんがいろんなお祭りやイベントで配っている風船が、何者かによって空へ飛ばされているのを知っていますか?」


風船を持った八百屋のおばちゃんがああ、という。

「たしかに、1回風船をもらいに来た子がすぐにもうひとつ風船をもらいに来ることが最近よくあったねえ。なんかひもを切られた、とかって言って。」


「…詳しいですね。そうなんです。何者かが子ども達の持っている風船のひもを切ってまわっているんです。そして、どうやらこの祭りにもその犯人が出没しています。最新の情報によるとその犯人は商店街のはっぴを着ているとか…。それでみなさんにお集まりいただいたんです。」


「おいおい、それじゃあ俺たちは容疑者ってわけかい!?」

金物屋のおじいちゃんに続けて散髪屋のおじさんが困り顔で話す。

「そんな…。あの、商店街ではっぴを着ているメンバーは他にたくさんいますよね?なんでわたしたちなんでしょうか?」


「実は風船が飛ばされたのが18時前後なんです。そのときに休憩に行っていたのはあなたたち4人だと。」


「他の人はみーんな一緒に居たっていってたよ。」「うん、忙しくてトイレも行ってないってさ。」「僕ら聞いたもんな。」「うん。」


「…とまあ、そういうわけなんです。申し訳ないのですが、持ちものを調べさせてもらってもよろしいでしょうか?」


「なんでい、子どもの探偵ごっこに付き合ってられねいやい!俺は戻るぞ!」

 帰りかけたおじいちゃんを止めたのは駄菓子屋のおじさんだった。


「まあまあ、彼らも真剣なんですから。ちょっと付き合ってあげましょうよ。」


 そう肩を叩かれ、おじいちゃんも「ったくしょうがねえなあ。」としぶしぶ帰るのをやめたようだった。


「ご協力ありがとうございます。それでは、僕とモモタ、ギンタで男性を、アオイが女性の持ちものチェックをさせてもらいます。」


 4人の持ちものチェックを見ていると、わたしはふと手の中に違和感を感じた。かたく握っていたこぶしを開くと、そこにはひもがあった。切られた風船のひもの端をずっと握りしめていたらしい。わたしの汗でしめり、温かくなってしまっていたひもをみていると、なにやら違和感を感じたがそれがなにかはわからなかった。


 「どういうことだ?」


 チェックが終わったらしいダイチくんがモモタギンタがと顔を見合わせる。

 そしてアオイさんも頭を横に振る。


 「だれも刃物なんて持っていないぞ・・・。」

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