2020年7月19日

 7月17日の新譜は豊作だった。それらをまとめてメタデータを整えながら聴くなどしていたら昨日は丸一日潰れてしまった(ついでに上半期に買って積んでいた音源などもインポートしたおかげもある)。そして今日も朝からその新譜たちを聴きながらコーヒーなんぞをやっていた。


 その反動もあってか、散歩に出る際、普段はイヤホンをして行くのだけれど、今日はなしで行ってみようという気分になった。本当になんとなくの気まぐれで多くの意味はないのだけれど、耳元が静かで、物音の網の目からできる沈黙というやつを楽しんだ。


 歩いていると、ふとラジオのあの独特の荒い音が遠くから聞こえるようである。立ち止まって周囲を見渡していると、その音はどんどん近づいてきて、それが歩いているお婆さんの手提げから流れてきているものだということがわかった。ポータブルラジオをスピーカーで鳴らしながら歩くなんて、なんだか粋なお婆さんだと思って、感動してしまった。


 また、もう少し進んでいくと小さな公園がある。公園の形が三角なので、三角公園などと呼ばれている。すべり台とぶらんこ、砂場くらいしかない公園なのだが、桜の木が並んでいて、春は景色が良い。そこを通りかかると、今度は小さなスピーカーから音楽が流れている。若者が二人で音楽を聴きながら缶チューハイなどをやっていて、いっそ優雅であった。空を見ると雲が多く地面は陰ってはいるが、空は晴れて青く、雲も混じりけのない白で浮いていた。こんな日に外でガサガサの音質で音楽を聴きながら酒を飲むなんて随分楽しいだろうと思った。


 帰宅するとじんわりと汗をかいていたので、シャワーを浴びた。窓の外から幼い子供のふざけ合う声が聞こえる。普段音楽を流している時間に沈黙を選ぶと、どうも色々なものが聞けるようで、日常にささやかな変化を加えられてよかった。これは普段音楽を流しっぱなしにしている私だからそう感じる雑音への偏愛であるから、普段から雑音にさらされている場合はこんなに関心を生まなかったろうと思う。たまに習慣の外に身を置くから面白いのだ。


 さっぱりした私はLaraajiの"Sun Piano"を聴きながらビールを開けた。変化もいいが、安心感も良いと思った。

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