2020年4月15日
家から出て少し行ったところに、自由にお持ちくださいという文字とともに木材が沢山置かれている場所がある。木材と一口に言っても、それは、何かを作る際に余った材料だったり、古い家具をばらしたものだったりと種々様々あるようであった。
私は予てよりあの木材置き場には目を付けており、その中でとびきり古いものを狙っている。物には長い時間を経ることで妖怪憑きとなるものがあるという。だから多くの人は九十九年ほどで道具を捨てるそうな。うちには百年を超える骨董品はバンドネオンしかないが、これは海外から来たものであるから、どうにも日本の文化的な変化は起こらなかったようである。
ともかくある日私は木材置き場へ行って、その中でいっとう古そうな木を選んで持って帰った。それを部屋の隅に置いてソワソワしていたが一向に動き出す気配はない。なあに、気にすることはない、ならばもっと古い木材を持ってくればよいのだ。
そうやって数日間に渡って木材を家に運び込んでいたら、すごい量の木材が部屋に積まれていた。そしてそのどれもが動き出すことはなかったのだ。面倒になってしまい、それらの木材を書庫にいれて忘れてしまっていたのだが、一昨日書庫にL.F.セリーヌの本を探しに行ったら木材にしたたか足の小指をぶつけて思い出した次第だ。
結局その木材は細かく割ってそれを茹でてうどんのようにして食ったり、ミキサーにかけておがくずのようにしたものをコロッケの衣にしたり、今日は豪快にステーキにして楽しんでいる。まだまだ暫く食料には困らなそうだが、もうすでに少し味に飽き始めている。
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