2020年4月30日

 ドン・デリーロの『アンダーワールド』の再読という重労働を終えた。私の愛するアメリカのポストモダン文学作家。トマス・ピンチョンと同世代である彼の作品は、政治、経済、宗教、アートが陰謀論或いはパラノイアによって描かれることが多い。冷徹な視線に暴力と純真さによる詩情。テクノロジーと資本主義の寂寞。君を憂いに沈めることしかできない単語、平和ピース


 惜しむらくはどの作品も版元品切れなのか絶版なのかわからないが、とにかく売っていない。『リブラ』も『マオⅡ』も『アンダーワールド』もとにかく古本屋にも見かけないし、見かけても値段がちょっと高騰していて人に勧めづらいのだ。トーキョーの様々なお気に入りの古本屋はいくつもあるし、海外文学作品に強いお店もチェックするが、とにかく売っていないので、もし見かけたら買っておくと良いと思う。アメリカ文学で三人好きな作家を挙げよと言われたら、トマス・ピンチョン、ドン・デリーロ、ウィリアム・フォークナーと答えるくらいには好きなので、是非ともチェックしてみて欲しい。


 ここまで口角に泡を溜めながらまくし立ててしまった。失礼した。ついでに夕食の話をすると、今日は豚肉のすた丼風のやつを作った。にんにくをすりおろして、お米がどんどん進むような味付けで炒り煮にしたやつで、こいつが生たまごと非常に合う。うまいうまいと食って、あと片付けは翌日の私に委ねた。


 しかしつくづく自分は蟄居することにストレスを感じない人間なのだなと思う。家にあるたくさんの本、音楽、映画。あといくつかのゲームソフト。これらがあれば数ヶ月でも外に出ずとも苦ではない。しかもインプットが一定量を越えてしまえばこういう場所でアウトプットもできる。便利な世の中である。いや、売野機子の漫画にこんな台詞がある。「どんな苦しみも、どんな淋しい感情も、芸術が音楽が救ってくれると信じてきた。もっと手前に欠けているものがあるならそれは文化じゃ埋められない」。蟄居できるのは私の環境や生活が幸運であったからなだけか。


 平和ピース

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