2020年4月9日

 中本のカップ麺がコンビニに置いていない、二日ほど前に放送されたバラエティー番組で紹介されたのが原因であろうという話だ。私の好物なので、これがなくなるのは非常に苦しい。苦しくて呼吸の仕方を忘れてしまうほどである。呼吸法を忘れるとこれが厄介だ、息を吸うのはどうやるのだっけ、肺を動かすにはどうするのだっけ、吸う息の分量はこれで正しいか、吐き出す際の時間はこれで長くないかなど、一つずつ考えるとえらく息苦しく、目眩がすることなどもある。そういうときは努めて他のことを考え、呼吸が再びオートマチックなものとして機能するよう促すのが良い。


 そうして私は呼吸を再び取り戻して、考え込んだ。カップラーメンがないのなら店舗に行くしかなかろう。しかし問題は私は非常に出不精のため、二駅でも移動するとなるともうかなり精神的に終わってしまうのである。精神的に終わっている状態でめしを食べても味なんかするわけないので、これは非常に良くない、本末転倒となりえない。それにとにかく移動が嫌すぎるので、コンビニのカップラーメンの棚の前で、電車に乗りたくなさすぎて泣いてしまった。


 今日は仕方がない、諦めようということで何も買わずに家に戻った。結局今日も何が起きるわけでもなく、ちょっとした通話をDiscordでやっただけで、それ以外は無と言っても良い。ものぐさなため無を無のままにするのは容易だが、無駄にしている時間があると自覚するのは異常な焦燥感を生むのでこれも精神に毒である。なのでとりあえずは本を読むなどをして過ごす。だが、作業とかやるべきことがあるだろうおまえ、という別の焦燥感が首をもたげてくる、精神的には非常に忙しいが、日記にすると特に何も起こっていないのである。非常に苦しい気持ちでこれを書いている。


 買いだめしておいた中本のカップ麺にお湯を注いで、窓を開けると気持ちの良い風が入ってきてくしゃみが出た。人通りも少なく、ポストアポカリプスのような静けさが少し気分を高揚させた。

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