27(改)

「こんなこと言ったら、まだゲームを攻略するつもりでいたのかって怒られてしまいそうですけど……。でも狙いどおり、聖剣はありました。ちゃんと復活していて……」


「えっ!?」


 思いがけない言葉に、息を呑む。


 折れて消えた聖剣が、復活していた――!?


「でも、もうなんの反応も示してくれなくて……。だから、私も退場組なんだと思います。もうこのゲームのヒロインは私じゃない……」


「マリナさん……」


「だから……お話します。レティーツィアさまに思うところがないわけではないけれど、レティーツィアさまが次のヒロインに負けて、リヒトさまを取られてしまうのも癪だし、『六聖の乙女』としてこの世界に君臨するのも嫌なので……」


 マリナはそう言うと、あらためてレティーツィアを見つめた。


「第一作目のヒロインは、ご存じのとおりマリナ・グレイフォード(私)です。庶子の生まれで、のちに男爵家の落とし胤であることが発覚し男爵令嬢となる――明るくて素直な女の子。第三作目のヒロインは、同じく庶子の生まれで、のちに伯爵家の娘であることが発覚し、伯爵家に迎えられます。凛とした正義感を持つ、思慮深く優しい、芯の強い女の子です。名前は変更できますが、公式ではジュリア・アルファスタ。そして――」


 マリナはそこで言葉を切ると、レティーツィアを見つめたまま指を二本立てた。


「二作目だけは、ダブルヒロインシステムが採用されています」


「ダブルヒロイン?」


「ええ。二作目は一作目とヒロイン以外のキャラクターの顔触れが変わらないうえ、攻略対象も十人と大人数なので、シナリオに幅を持たせるために導入されたのだと思います。性格が正反対のヒロインが二人いれば、それだけ展開に変化がつけられるでしょう?」


「ああ、なるほど」


「一作目のマリナ・グレイフォードとは違うタイプの二人です。一人が、クールで不愛想、信じられる一部の人にしか本音を言えない素直じゃないツンデレな子。そしてもう一人が、本が好きで大人しく、少し気が弱いけれど思いやりがあって優しい子です」


「性格の違うダブルヒロイン……。それは最初にどちらのヒロインを選択するかによって、攻略できる対象がある程度決まってきたりするのかしら?」


「ええ、そのとおりです」


 大きく頷いて――マリナは再び自嘲的に笑った。


「……本当にご存じなかったんですね。私、勘違いしてました。レティーツィアさまは、ヒロインである私に対抗するために、彼女を味方につけたんだとばかり……」


「え……?」

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