19(改)
(手土産を用意しようと考える程度には、監視を出し抜く勝算があるんだわ……)
レティーツィアはゴクリと息を呑むと、いまだ自身の手を握ったままのイアンのそれにもう片方の手を重ねて、力を込めた。
「ん? なぁに? 俺に惚れたー?」
「あの、イアンさま。どうか、わたくしも連れて行っていただけませんか? わたくしも、マリナ・グレイフォードさんと二人でお話がしたいのです!」
「……は……?」
予想だにしていなかった言葉だったのだろう。イアンが大きく目を見開く。
「え……? 二人きりで、マリナちゃんと?」
「ええ。できれば、リヒト殿下やイザークには知られずに。お願いいたします!」
両手でイアンの大きな手をしっかりと握り締めて、そのアメジストの双眸をまっすぐに見つめて、熱心に言う。
「……なにそれ」
レティーツィアに向けられている視線が、一気に冷ややかになる。
「レティちゃんさぁ、わかってる? それ、俺一人がちょっとイケナイことをするのとはわけが違うよ? それで、レティちゃんに万が一のことでもあれば、俺はもちろんのこと、ヴェテルの立場も危うくなっちゃうんだけど?」
「ええ、わかっております。無茶なお願いをしていることは……」
「無茶って言うかさ」
イアンはガシガシと後頭部を掻くと、はぁっと息をついた。
「怖くねぇわけ? マリナちゃん、レティちゃんにまた何かするかもよ? そして俺は、『六聖の乙女』の手足となって君を排除しようとしたセルヴァの弟なんだよ?」
「ええ、そうですわね」
「しかも、ついさっき逢ったばかりだ。レティちゃんは、俺のことなんか何も知らない。それなのに……」
「迂闊だと思いますか? ――ええ、そうですわね。わたくしも、愚かだと思いますわ。そんな危険なことはするべきではありません」
そんなことは、承知のうえだ。
それでも――会いたい! 話がしたい!
レティーツィアはイアンの手を握る両手にさらに力を込めて、きっぱりと言った。
「それでも、マリナ・グレイフォードさんともう一度話がしたいのです!」
すべては『
これから先の推しとの未来のため。
推しを誰よりも幸せにするために――!
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