6(改)

 六元素の力を一つずつ司る世界六国は、ともに歩むべき存在。

 その平和を崩す争いの火種を作ることは、なによりも重い咎だ。


 一国でも滅べば、世界に満ちる元素が欠けてしまう。そうなれば、人も動物も今のまま生きてゆくことはできなくなってしまう。


 世界六国の争いは、世界を壊すことでもあるからだ。


 当然、一国の皇子セルヴァ他国の皇子リヒトの持ちものに手をつけるなど、あってはならない重罪。平時ならば、毒杯を干すという形での極刑が命じられてもおかしくない。


 しかし、当時は『六聖の乙女』が現れたことで、世界はひどい混乱の最中にあった。


 そのうえ、首謀者は『六聖の乙女』自身。基本的にセルヴァに拒否権はなかったということを考慮して、リヒトはその処遇をヴェテル王に任せていた。


『先の王が――そして陛下が守り、作り上げてきた国を、汚すような真似を許してはいけない。ですが、彼に選択肢がなかったのもまた事実。今回のことは私の胸に秘め、処罰については陛下にお任せしましょう』


 リヒトの言葉に、ヴェテル王は深く頭を下げたという――。


「はい。セルヴァさまは、王位継承権および王籍の剥奪。そして、ヴェテルの国教であるダリス教の聖地・イリスダリスの地に移封となりました。今後は神殿に属し、神に仕える神官となるべく修行をされるそうです」


「……! 神官に……」


「ノクスには五年の禁固刑ののち、ダリス教の修道士となることが申し渡されました」


「そう……。ノクスは、セルヴァさまにお供できなかったの……」


 あれほどセルヴァに仕えることを己の誇りとしていたのに。


 表情を暗くしたレティーツィアに、しかしイザークはあっさりしたものだ。


「皇子を諫めるべき立場にいたのに、命じられるままに罪に手を染めてしまったわけですからね。そりゃ、そうなるでしょう」


 そうきっぱりと言って、「まぁ、妥当な処分だと思いますよ」と肩をすくめた。


「そのとおりだな。妥当すぎるほど妥当な処分だ」


「では、セルヴァさまはこの学園を去られるのですね」


 この『六聖アエテルニタス学園』は、この世界のために設けられた学校だ。

 世界六国の王となるべき者はもちろん、政治にかかわってゆく者や民を導く立場に立つ者は、六聖アエテルニタス学園で学ぶことが義務づけられている。将来国を治めるために、国を動かしてゆくために、三年間――学園という社会の縮図の中で、自身と同じく他国を背負う者たちと交流を深めながら、世界のしくみを学ぶのだ。

 セルヴァはヴェテルの次期国王としてここに通っていたのだから、王位継承権を失い、そのうえで王族ですらなくなったとなれば、当然そうなるのだろう。

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