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マリナは上を仰いで悔しげに唸ったものの――彼女自身それが結果論でしかないことがわかっているのだろう。たられば話をしたところで、今さら何かが変わるわけでもない。マリナはそのまましばらく無言で天井をにらんだあと、「……やめよう。みっともない。私は負けたんだから……」と呟いた。
「せめて、引き際ぐらいは……」
そして、決意に満ちた凛とした眼差しをレティーツィアに向けた。
「私が知っているのは、第三作目までです。第一作目、ヒロインを入れ替えての第二作目、そして、第一作目のポータブルゲーム機移植版。こちらは、一作目のシナリオがそのままフルボイスに。さらには本編の追加スチルにトゥルーエンドの後日譚的な特別シナリオが入ったパッケージとなっています。そして、はじめて攻略キャラクターがごっそりと入れ替わる第三作目――。そこまで、全攻略対象の全ルートを攻略済みです」
聞きたかった続編の情報に、レティーツィアは息を呑んで姿勢を正した。
「第三作目まで……」
「ええ、イアン・フィアードラウル・ヴェテルは、その第三作目の攻略キャたクターです。セルヴァさまの弟を名乗っていましたが、ゲームでは息子という設定でした。そもそも、第三作目自体が、第一作目・二作目の次世代の物語なんです」
一作目と二作目の攻略対象と、三作目――次世代のそれが混在しはじめたということ?
「次世代……。イアンさまはセルヴァさまの息子……。それが、なぜ『弟』になっているのでしょう?}
「わかりませんが……。急に退場者が出たからじゃないですか?」
退場――。セルヴァが、王位継承権と王籍を失ったから? だから、『次』が現れたと言うのだろうか。息子から弟へと――無理のないようにキャラクター設定が変化して?
(いったいどういう力が働いて、そんなことになっているの?)
この世界を支配しているその『力』は、いったいなんなのだろう?
ゲームをシナリオどおり進めようとする強制力?
でも、本当にそんなものがあるのなら、どうして自分は排除されていないのだろう? ヒロインであるマリナがシナリオを遂行する一番の障害となっていたのに。
「だけど一つ言えることは、きっと退場者はセルヴァさまとノクスだけじゃありません。私もです。いえ、私こそが」
「そんな……」
「本当です。私、諦め切れなくて、夜に学園の北の森に忍び込んだんです。リヒトさまはもう無理でも、『六聖』の力だけでも取り戻せないかと思って……。ゲームはやり直しがきくものじゃないですか……」
マリナが苦しげに顔を歪める。
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