9(改)

『六恋』には、続編が存在したはずだ。


(続編制作決定の報と第一弾のトレーラーは見た記憶があるけど、基本的に主人公以外のキャラクターに変更はなかったはず)


 レティーツィアが前世でハマり倒した一作目は、攻略対象は各国一名の計六名だった。 そのため従者が攻略対象の場合、その国の皇子は攻略できなかった。具体的には、水を司る国――キュアノスは、従者のアレクシスが攻略対象だったため、皇子のクレメンス・フォレミオン・リド・キュアノスは、皇子でありながら脇役だった。ヴェテルもそうだ。従者で暗殺者だったノクスが攻略対象で、皇子のセルヴァが脇役。


 しかし二作目では、世界六国の皇子全員が攻略対象に。そして従者も、一作目ですでに攻略対象だったアレクシスとノクスに、一作目での人気が高かったイザークとアーシムが加わるという話だったはずだ。それで、全部で十人。


(だったら、双子はゲームのキャラではない……? いえ、そうとも限らないわ)


『六恋』に、二作目以降がなかったとは限らない。


 もうゲームの『設定』や『シナリオ』にこだわるつもりはない。何よりも大切なのは、本人の意志や想いであることを学んだからだ。


 けれど、六聖の力を不当なことに使おうとしたマリナ・グレイフォードを止めることができたのは、やはり『設定』と『シナリオ』の知識があったからだ。


 使い方を間違えなければ、その知識は力となる。


(だから、ゲームのキャラクターはできるだけ把握しておきたいのよね)


 リヒトを幸せにするためにも。


 そのためには――。


「…………」


 考え込んでいると、エリザベートが、「レティーツィアさま? どうされました?」とレティーツィアの横顔を覗き込む。


 ハッとして顔を上げると、イザークがニヤリと悪い笑みを浮かべた。


「双子が気になります? 初登校は週明けになるはずですが、今日明日と手続きのために学園に来ているはずなので、先に紹介しましょうか?」


 イザークがニヤニヤしながらリヒトを見つつ、言う。


「いえ、とくに気になるわけでは。紹介はみなさまと同じタイミングで結構よ」


「ですって。よかったですね。殿下」


「……うるさいな」


 もちろん、続編のキャラクターかどうかは気になるところだけれど、それを本人たちが自覚しているはずもない。紹介してもらったところで、わかるはずもないだろう。


 それよりも――。

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