渇きの戦場
戦場は血を求める。
何処までも貪欲に。何処までも果てしなく。
――そして今日も又、血が流れ――
◆
国と言うには少し小さく。
だが村や町と言うにはあまりに大きい。
そんな”国未満”の境目では何が起こるか。
――当然の如く。
◆
怒号、怒号、怒号。
断末魔の呻きと流れる血潮。
刃と刃がぶつかる音。
誰かの号令。誰かの叫び。誰かの嘆き。
そして私の呟き。
「…もう……嫌だな…」
その呟きは誰にも聞かれることなく消えた。
◆
ざあざあ。ざざー…
――何時の間にか主戦場から離れてしまったようだ。
もういっその事、このまま逃げてしまおうか――
雨から逃れるために入った洞窟の中で、私はそんなことを考えた。
寒い。雨が降り止まない。
――ばしゃん。
「おや、先客かい」
更に一人入ってきた。敵軍の服とマントをまとった女性が。
「――ッ」
「あー落ち着け落ち着け、別に今殺し合うつもりはないさ」
そこからまあひと悶着(殆ど私が喚いただけだが)あって、一晩一緒に過ごすこととなった。
「殺し合うんなら戦場でやった方が楽しいじゃん?」
――これが向こうの言い分だった。
◆
寒い。
「さむいなー…よし、一緒にあったまるか」
あいつはそんなことを言って、私をマントの中に連れ込んだ。
暴れたかったが、暖かかったのは確かなのでやめた。
明日にはまた殺し合うのに、変なやつだと思ったし、今でもそう思っている。
◆
目を覚ましたら、あいつはいなかった。
マントだけおいて去っていったようだ。
雨は止んで虹がかかっていた。怒号と叫びもまた。
私はやや考えてから、また立ち上がり、自軍へと戻っていった。
――戦場でなら、また会えるかもしれないから。
◆
戦場は血を求める。
何処までも貪欲に。何処までも果てしなく。
――そして今日も又、血が流れ――
◆
――また雨が降り、血を洗い流す。
ばしゃん。
「――やあ、また会ったね」
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