ゴミの世界と墓の山
全部私のせいなのだ。
だから。
――私が、全部片付けないとならないのだ。
◆
『…今入った情報によると――』
ボッ。ドシュッ。ボボボボッ。
『――B34地区の墓場で――』
「…フン、遅いよ情報が」
ボンッ。ボッ。
『――蘇り現象が確認され――』
…カッ!ズゴォォォォン…
うち捨てられたガラクタのラジオごと、ゾンビどもを燃えちらしぶっとばす。
「…たった今、それは片付いたところだよ」
死んだ瞳でそっとつぶやく。
誰も聞くものもいないのに。
――そう、私は思っていたのだ。
…カラン「…あっ」
――こっちを見つめる瞳があった
「…うげえ」
――私は。
聞くものがだれもいないと。
そう、思っていただけだったのだ。
◆
死んだ瞳にくすんだ金髪。
長身で長髪。髪を切るのが面倒だと言っていた。
「蘇り」たちを殺すための、燃えて爆発する剣。
――名前を聞いたら「忘れた」とぶっきらぼうに言うので勝手に「デッドマン」と呼んでやった。
「一応私女性なのだけど」と大きな胸をそらしながら出してきた抗議の言葉は無視した。
まあつまり。そんな人に、私は拾われたのだった。
…拾われたというよりは拾われに行ったの方が正しいけど。
◆
旅についていく途中に色々な話を聞いた。いや聞きだした。
「なんでデッドマンは甦りたちを殺すの?」
「贖罪のためさ」
「何の罪を贖うの?」
「やつらが生まれてしまった罪を、この世界を作ってしまった罪を」
「…なぜ、こんな世界になってしまったの?」
「…私が、大事な人をあきらめきれなかったから、かな」
だから、今度こそは。
――私が、あの子を殺すのだと。
そう、デッドマンは言外に語っていた。
◆
…変なのになつかれてしまった。
黒くてちっちゃいちんちくりんだ。
変だ変だと思っていたら体の構造まで変でいやがった。
「蘇り」に感染しない。いや厳密にいうなら感染してもならない。
これでも元・研究者だ。おかしな現象を調べるのはお手の物。
ミスってパンデミック引き起こして世界を変えちまうようなへぼだけど。
しかしホント―に変なもん拾っちまった。
目茶目茶べたべたくっついてくる。なんだこいつ。
一人で寝るのが嫌だからってくっついて寝てくる。なんだこいつ。
…それを、手放しがたくなってきている自分に気づく。
…なんだこいつ。
◆
「…アー…ウー…」
――ああ、やっと見つけた。
私の諦めきれなかった、その残滓。
いるだけで「蘇り」を生み出す、キャリアー。
…私の、大切な人。
「…」
そう、今度こそ、この子を殺すのだ。
「…なんだって?」
「…どうしたちんちくりん」
「…この人の声が聞こえる」
「………………は?」
コイツおかしくなったのかな?
「ウー…アウー…」
「ふむふむ、わかる、かわいいよね」
…なんか通じ合ってる。
「…ウ」
「…うん」
なにか合意が取れたらしい。
「えい」
「ウー」
なにか二人同士で抱き着いて…なんで!?
「いったい何をするつもり!?」
「…私の体質を利用して、私にウイルスを全部入れる」
「この人は、蘇る。本当の意味で。」
「…え」
あれよあれよという間に、ウイルスは移っていく。
…そして、あの子は甦った。
私の贖罪は終わった。
…でも。
――私が本当に罪を犯したのは、この時だったのかもしれない。
◆
墓が二つ。
佇む黒い髪の美女。
「…気にしなくていいのに」
「私のことは」
…死なないためのウイルスを引き受ける。
その意味を、彼女は知っていた。
…死ななくなるのだ。
それを、彼女たちは悔いていた。
罪を重ねたと。
でも、いいのだ。
私にとっての大切だった人が。
笑顔でいられる時間が作れたのだ。
私が、ちょっとばかし永遠を生きるぐらいが何であろう。
もしかしたら、罪だったのかもしれない。
でも、私は後悔なんてしていないのだ。
そして、私は剣を携えて歩き出した。
◆
「これで、私の話はおしまいだよ、漫画家先生」
「なに?別にこの世界はそんなことになったことないから嘘くさいって」
「そりゃそうさ、私の世界の話だもの」
「あんまりにも永く生きてて暇だったから研究施設使っていろいろ研究してたんだよ」
「母親が研究家だったもんで」
「んでまあ、所謂”平行世界”というのを渡ることができるようになったってわけだね」
「そういうものは結構存在してるみたいだよ、前に他の世界から宇宙船が流れ着いたのを見たことがあるよ」
――センセイ―ッ!どこにいますかセンセイ―ッ!
「おっと、君の連れ合いが探してるから私はそろそろお暇しようかな」
「じゃあ、もう会うこともないと思うけどおさらばで」
「連れ合いは大事にするんだよ?死んだら終わりだからね、アハハ」
◆
「ああ、これを見ているそこの君…この作者の作品に私が紛れ込んでても見なかった振りをしてくれ給えよ」
「書かれなきゃわからないだろって?アハハ、そりゃそうだ」
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