休載と救済
マンタ先生の第八回・殺伐感情前線は休載します。
次回作にご期待ください。
◆
どたどたどたどた!だだだだだだだだ!
「何勝手に休載してんですか先生―ッ!そもそも貴女マンタ先生じゃないでしょ先生―ッ!」
バゴ―――――――ン!回し蹴りで仕事場のドアがぶっ飛んだ!
やべえ、これはかなりキテル!
「だってだって!天の意思がそう書けって言ったんだよーっ!仕方がないんだよーっ!」
私は適当な言い訳を垂れ流す!向こうは聞く耳持たない!
「良いからさっさと書いてくださいよ先生―ッ!まだ1日はありますよ先生―ッ!」
そう言いながら助手(私は編集のこの子をそう呼ぶ!)は流れるような動きで私の足を四の字固めにしていく!
「あ痛ったい!いってえ!ギブギブギブ!折れる折れる!」
私は抵抗らしい抵抗もできず足を折られかける!
「足なら何本折れてもいいでしょ~~~~ッ!両手があれば作品は作れますよ~~~~~~ッ!」
訂正!かける、じゃなく折られている!
「それにこの触り心地から察するに、貴女昨日は夜8時ぐらいにネタに詰まってぐっすりお休み12時間睡眠と見ました!」
「ウワーッバレバレ!いつも私の健康管理お疲れ様です助手!」
「どういたしまして!じゃないんですよ~~~っ!」
「アババーッ!」
固め方がコブラツイストに移行してきた!豊満な胸が押し当てられて幸せ!
「良いからさっさと書いてくださいよ先生~~~ッ!私が先生の作品読まないとどうなるか知ってるでしょ~~~~ッ!」
「知ってるけど出ないものはでないんだよ~ッ!」
…この助手は、私の漫画の大ファンなのだ。
具体的に言うと人生を救われたレベルでの。
そこから色々やって私の編集になるんだから大したものだと思う。
なので私の漫画が休載されると、助手にとっては救済されなくなるわけだ。
HAHAHA、くだらないジョークだったね!
「AAAAAAA!いいからかけぇ―ッ!」
「ヤバイ!言語を忘れだしている!これは本格的にやばい!」
…ちなみに、助手はやたらとハイスペックなので、暴走すると町とか県とか国とかの単位で危なくなるぞ!漫画みたいだね!
「…あ」ピコーン。何か降ってきた。
「あ、何か降ってきましたか先生―ッ!」
コブラツイスト、関節技…うんうん。
12時間睡眠明けの明瞭な頭に、歯車がカチン、カチンとはまる音がした。
「よし!行ける!書くぞ―ッ!」
「先生ヤッター!必要なことがあったらいつもの如く申し付けてください!」
「とりあえずアシスタントを3人ぐらい!」
「ラジャ―ッ!」
◆
「あ、上がった~…」
死にかけの状態で原稿を送る。
「上がりました!?ではさっそく読ませていだたきます!」
そして助手君はいつもの如く、私の原稿を読みだした。
私は助手の背中に抱き着く、というかもたれかかる?まあどっちでもいいか…
これもいつものことだ。大体原稿が上がった後の私はこんなだ。
「おおー…わーっ…」
…私がそうする理由?
「ええーっ…!そう来るとは…!」
…だってまあ。特等席だもの。
「こ、ここで次回とは…!」
――私が書いた物を、絶対に読んでくれる読者一号の、喜ぶ顔が見られる。
…読んでくれる人がいる、って言うのは、作者にとっての救済だよ君ぃ…
後いい匂いするし助手…くんかくんか…
「…お休みなさい先生」
「…うん、いつもありがとうね助手ー…スヤァ…」
…これがまあ、いつもの通りの、私たちの少し不思議で、でも上手く回っている”救済”の話だったのさ、めでたしめでたし。
◆
第九回・殺伐感情前「させませんよ先生――――ッ!」
「うぎゃあバレた―ッ!逃げねば!」
「食らえ西部劇めいた投げ縄術!」
「ホギャ―ッ!」
…来週にはこんなやり取りがあったとかないとか。
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