血煙と笑顔と
――ああ、また今日も、いつもの日常が始まる
「うふふふ、本日はお日柄もよく、野良犬風情を這いつくばらせるにはいい日ですわね?」
そういうと向こうは刀を二本抜く。やたら綺麗な姿勢が気に入らねえ。
いつものごとく抜いた刀がアイツの周囲を旋回し始める、サイコキネシスがどうとか言っていやがったがよくわからん、リーチも長くて気に入らねえ。
長い茶色の髪がなびいて綺麗だ、本当に気に入らねえ!
ぜってえあいつをめちゃくちゃにしてやる!
「ぬかせ~~~ッ!きっちり今日こそぶっ殺してやるからよ~~~ッ!」
――対するおれは
――拳を構える、何度も何度も使った武器だ
「今度こそその無駄にきれいな顔を陥没させてギャグマンガみたいにしてやるよ~~ッ!」
いつものごとく牽制の右、左ストレートを振る。
ドウン。ドウン。衝撃波を飛ばす。
「ふふふ、やれるものならやってみなさい、あなたの生首はインテリアには最適ですもの!」
当然、向こうの刀二本が切り裂いてくる。この辺はいつも大体こんなだ。
――後ろの方で部下どもの「退避―、退避―」の声が聞こえている、いつも俺たちが戦うときは周りを退避させる。あまりに繰り返しすぎて今じゃ最初の一合で大体避難が済んでる。
――ああ、つまり、つまりいつものことになるぐらい
――俺はこいつを殺せてねえってことじゃねえかよ!
「やってやんよ今日こそぜってえぶっとばしてやるんだよ!」
――ああチクショウ本当に腹が立つ!
「死にやがれ――――ッ!」
◆
とあるところに二つの国がありました。
まあ何やかんやでお決まりの戦争がはじまりました。
実際もう100年ぐらい続いてるんじゃないですかね。私よく知りませんけど。
――それでまあ、私はその片側としてたくさん人を殺しまくってるわけですが、ですが
「オラ――ッ!」
衝撃波。飽きるほど見た。
――それを、いつものごとく自分の脚から出して移動に使ってくる。
――毎度毎度、脚から血が出てるんですよあの移動!痛くないのかしら!
――そもそもあの衝撃波何なんですか、「体鍛えてたら出せるようになった」とか言ってましたけど人体的にどう考えてもおかしいでしょう!
――全身真っ白に、返り血と自分の血が混ざりあった朱色が彩る。今日もたくさん殺しあってきたのね。
――ああもうやたらと野性味があって綺麗で腹が立ちますね!
――笑顔の弾丸が迫る。
――その笑った顔から見える八重歯もチャーミングですよコンチクシヨウ!
「そうはさせませんよ!」「うおっ!」
――下から刀を動かし切る、当然避けられるけど距離はとれた。
――よし、ここだ。
「…食らいなさい!」
――用意していた短刀、都合3本目。
――私が制御できる本数を超える、でも一瞬だけなら――
――向こうの肩口に突き刺さる、首狙ったのに!避けましたね!
「あ痛っってえ!けどな…」
――そこで、気づく。
――向こうの左手、何か投げた後のような――
――まずっ…!
「考えることって似通るもんだなあ!」
――左太ももに、痛み。心臓コースは避けた。
「…いっっっったいわね!」
――あの衝撃波を使って高速で投げたのね…!味な真似を…!
――届かないと思って油断した…!
「…今日のところはこれぐらいにしておいてあげますわ!」
――サイコキネシスで自分の体を浮かせる、こうすれば私も高速で離脱できる。
「あっクソ逃げんな!」
――もう一本投げてきたが、来るとわかっていたなら問題ない。切り裂く。
――今日はとんだ失態ですわ…!
――ああもう!本当に腹が立ちますわねアイツ…!
――図体ばかりでかくて、白い短い髪が血で綺麗で、ほんっとうに腹が立ちます!
――後胸がでかいのも腹立ちます!
◆
「だーっ!今日も殺しきれなかった!」
――短刀投げはうまくいった。でも向こうも同じこと考えてるとはなあ…
――また新しい手を考えねえと、右肩の処置をしながらそう思う。
――このまま遠距離戦を見て投げるものを増やす、却下。その線で行くと向こうの方が強い。
――衝撃波のバリエーションを増やす、これも却下。一番遠くまで届くのでも物を投げた方が届くことが今日分かった。
――なら近接、中距離戦か…
――でも向こうの刀が、刀が邪魔で――
「…そっか!それだ!」
パチン!つい指を鳴らす。でもいいアイデアだこれは!
「見てやがれあの野郎…!ククク…ククククク…!」
――部下たちからは俺の笑い方は怖いってよく言われる、何でだ。
◆
「…失態ですわ失態ですわ…!」
――当たるは当たりましたが、同時に投げられるのに気づかなかったなんて…!
「あのウドの大木絶対許しませんわ…!」
――左足は何とか動く、よし、致命的な場所には刺さってないのが幸いですわね…
――これなら明日には何とかなるでしょう。
――問題は、どうやってあいつを殺るかですわ…!
――今までは近づけさせなければ警戒するのは衝撃波とそれを使った高速移動だけでしたが…
――このまま遠距離戦を鍛えてこられたら、さすがにちょっと不味いですわね…
――でもそれはないでしょう、遠隔戦なら私のキネシスの方が変幻自在。
――対して向こうは衝撃波から高速投合しかできない、直線の動きでしか飛んでこないはず
「…」
――なら向こうがとる手は、いかにして私に近づいてくるか…
――そしてそれに対抗する手段は…
「………………ん………」
――向こうは、体を動かし、破壊力を出す…
「…真似してみるとしましょうか、優雅じゃありませんけど」
「…ふふ、ふふふふ…」
――お嬢様の笑顔はいつも怖いといわれます、なんででしょう?
◆
次の日!
「…テメーなんだその服装はよ~~~ッ!脚がちらちら見えてるじゃねえか~~~~ッ!俺の真似か何かかよ~~~~ッ!」
「あなたこそなんですのその背負ってる刀は~~~~ッ!明らかに私の真似でしょ~~~~~ッ!」
「うるせえ~~~~~ッ!テメエを殺る方法をいろいろ考えてたらこうなったんだよ~~~~~~ッ!」
「こっちだって同じですわよ~~~~ッ!」
「そんなら今日こそ殺ってやるぜ~~~~ッ!」
「やってみなさいな~~~~ッ!」
◆
――一定の範囲に入ると血煙が舞う、そんな空間が出来上がるのがいつもの日常だ
「あー、あー、またやってるよあの二人…」
「もう部下同士の私たちですら割と顔見知りになるぐらいやってますものね…」
「なあ、知ってるか?そろそろ戦争終わるらしいぜ」
「あら、そちらにも情報がありますのね、ええ終わるらしいですよ」
「…終わったらあの二人どうするんだろうなあ」
――あーあ、地形まで変わってるよ今日…隊長の刀がうっかり山切ってんだけど
――いつものごとく笑ってやがるし、能天気だなあ…
「…まあ、きっといつまでもあんな感じでしょう、物理的に戦うだけが道じゃありませんもの」
「…まあ、そうだよなあ」
「…私たちはどうします?同棲でもします?」
「ハハ、それは魅力的な誘いだが、おいらを倒してから言ってくれや!」
「じゃあ、そうさせてもらいますよ!」
◆
むかしむかし、あるところに二人の、やたら強くて仲が悪い女性がおりました。
その二人は延々殺し合いを続けましたが結局相手を殺せませんでした。周りはめちゃくちゃ迷惑していました。
なので戦争が終わった後は同じところに住ませて何とか被害を狭くしようとしたらしいです。
「オラ~~~~ッ!今日は将棋とやらで勝負だ~~~ッ!」
「受けて立ちますわよ~~~ッ!」
その結果まあ何とか平和になったそうな、めでたしめでたし。
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