プリンと冷蔵庫と奪い合い


西暦無量大数年、人類はなんか超能力とかを得たりなどしていた!


…だが、このお話とは大して関係がないッ!

ガジェットの一つであるッ!

そうッ!

今から始まる人と人の尊厳をかけた戦いの前には関係がないッ!

あろうとなかろうと戦いとは起こるものだからだッ!



「…どーーーしても、譲らないと言うんだな?」

…私は、わかりきった最後通告を聞く。


「もっちろん!だって…」

あっちも当然、わかりきった答えを返す。


「「冷蔵庫の一つだけ残った高級プリン、食べたいもん!」な!」


…とまあ、そういうわけだった。



「準備は良いか?」

私の回りには、たくさんの特撮ベルト、オモチャだ。

私の超能力は、「オモチャを実際に駆動させる」能力…つまり下ごしらえがいる。

その中から一つのベルトを腰に巻き、ボトル状の変身アイテムを二つ指す。音声。

変身待機音。レバーを回す。

ガタガタガタン!ガタガタガタン!


『アーユーレディ?』「変身ッ!」


ガコンプシュー!

前後からアーマーが装着され、私は特撮ヒーローと化していた。


「いつでも良いよ!」

…対する向こうは、生身。

これはアイツの能力的にその方が良いと言うところもある、が、絶対めんどいからに決まってる…やろうと思えば武器も範疇のはずだ…


…まあ、今回は関係ないが。


「良し」

…テーブルに肘をつく。

赤と青のアーマーの手。


「やるよー!」

向こうは対面に座り、肘をつく。


手を、握りあう。


…これから始まるのは、アームレスリング、所謂「腕相撲」だ。


…前に一回ガチンコで余りを取り合ったら、家が半壊したので、それ以来「何かしらの破壊はあまりしない奴で決めよう」となっていたのだ。


…もちろん、能力は使うが。


「じゃ、やるか」

「うんっ!」


くっそう、ヘラヘラしやがって…可愛いな…

まあ実際、コイツの能力、ヘラヘラ出来るくらい強いからな…


おいてあるオモチャのゴング(超人達がプロレスしたりする奴のオモチャだ)がカウントダウンを進める…


『3.2.1』


…カーン!ゴングが鳴った!


…そう思った瞬間!


「イヤーッ!」「グワーッ!?じゃねえよ!」


…すでに8割がた、倒されていた!

あっぶね…!なにもせず負けるところだった…!


…あ、やべ、これあれだ…!

アーマーの右手から黒煙が上がる…!


「ヘヘーン!大成功!」

向こうが得意気にする…可愛さ…!


コイツの能力、それは「見た技を完全に再現できる」能力…!

昔は現実の技しかやってなかったんだが、私が面白がって漫画やら小説やらを読ませた結果…人間離れした技しか繰り出さなくなっちまった!

…というか!


「あんた私の部屋のガンドリーム読んだな!?サイバネ拳法のタイミング合わせて破砕する奴だろこれ!これしたいがために腕相撲にしやがったな!?」

…そう、コイツ勝手に私の漫画読んでやがる!ふざけんな!まだ私も読み終わってない最新刊!


「…てへぺろ?」

「クソッ可愛い…じゃねえよ!」


やべえ、このままじゃ押しきられる…!

コンマの思考で、一つのベルトを手に取る!


「変身ッ!」ガシャコン!


このベルトは、変身するときにーー


「ウワーッ!?視界が青白い!しかも押される…!」


視聴者から「やたら強い発生保証」だの「畳」だの言われる怪人を弾くためのもの…これほんとなんだろ…が出る…!


「ぶっ飛べ…!」

ここで押しきれないと負ける…!


…手応えがない?


見ると、アイツの体がなんかふわーっとしてる手応え…

…あ、やべえ、予想以上に私の漫画読んでやがる…


「力抜き殺法!ダメージは無効化ー!」

「お前、お前ーッ!一応その技あの世界のタツジンじゃないとできないんだけどーっ!?」


…しっかり手は握られてやがる…!


「じゃあとどめー!イヤーッ!」

空中から柔らかい腕をムチみたいにしならせて…叩きつける!


ゴシャァッ!テーブルに私の手がつく!

「アバーッ!サヨナラ!…なにやらすんじゃい!」


くっそう…負けた…!

すとんっ、アイツはしっかり着地する。


「でもしっかり乗ってくれるから大好きだよーえへへー」

「グッ、笑顔がかわいい挙げ句に大好きとか言われた!」

とてちてとてちて。

冷蔵庫からさっさとプリンを出して食べる準備を進めている…小動物みてえ…


「プッリン~プッリン~♪」


…まあ、負けたけど、アイツが嬉しそうだし、よいか、うん。


…そんな感じで、第…何回目だっけ…プリンとか争奪戦は幕を閉じたのだった、まる。



「…でも、漫画勝手に読んだのはお説教な」

「えっ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る