プリンと冷蔵庫と奪い合い
◆
西暦無量大数年、人類はなんか超能力とかを得たりなどしていた!
…だが、このお話とは大して関係がないッ!
ガジェットの一つであるッ!
そうッ!
今から始まる人と人の尊厳をかけた戦いの前には関係がないッ!
あろうとなかろうと戦いとは起こるものだからだッ!
◆
「…どーーーしても、譲らないと言うんだな?」
…私は、わかりきった最後通告を聞く。
「もっちろん!だって…」
あっちも当然、わかりきった答えを返す。
「「冷蔵庫の一つだけ残った高級プリン、食べたいもん!」な!」
…とまあ、そういうわけだった。
◆
「準備は良いか?」
私の回りには、たくさんの特撮ベルト、オモチャだ。
私の超能力は、「オモチャを実際に駆動させる」能力…つまり下ごしらえがいる。
その中から一つのベルトを腰に巻き、ボトル状の変身アイテムを二つ指す。音声。
変身待機音。レバーを回す。
ガタガタガタン!ガタガタガタン!
『アーユーレディ?』「変身ッ!」
ガコンプシュー!
前後からアーマーが装着され、私は特撮ヒーローと化していた。
「いつでも良いよ!」
…対する向こうは、生身。
これはアイツの能力的にその方が良いと言うところもある、が、絶対めんどいからに決まってる…やろうと思えば武器も範疇のはずだ…
…まあ、今回は関係ないが。
「良し」
…テーブルに肘をつく。
赤と青のアーマーの手。
「やるよー!」
向こうは対面に座り、肘をつく。
手を、握りあう。
…これから始まるのは、アームレスリング、所謂「腕相撲」だ。
…前に一回ガチンコで余りを取り合ったら、家が半壊したので、それ以来「何かしらの破壊はあまりしない奴で決めよう」となっていたのだ。
…もちろん、能力は使うが。
「じゃ、やるか」
「うんっ!」
くっそう、ヘラヘラしやがって…可愛いな…
まあ実際、コイツの能力、ヘラヘラ出来るくらい強いからな…
おいてあるオモチャのゴング(超人達がプロレスしたりする奴のオモチャだ)がカウントダウンを進める…
『3.2.1』
…カーン!ゴングが鳴った!
…そう思った瞬間!
「イヤーッ!」「グワーッ!?じゃねえよ!」
…すでに8割がた、倒されていた!
あっぶね…!なにもせず負けるところだった…!
…あ、やべ、これあれだ…!
アーマーの右手から黒煙が上がる…!
「ヘヘーン!大成功!」
向こうが得意気にする…可愛さ…!
コイツの能力、それは「見た技を完全に再現できる」能力…!
昔は現実の技しかやってなかったんだが、私が面白がって漫画やら小説やらを読ませた結果…人間離れした技しか繰り出さなくなっちまった!
…というか!
「あんた私の部屋のガンドリーム読んだな!?サイバネ拳法のタイミング合わせて破砕する奴だろこれ!これしたいがために腕相撲にしやがったな!?」
…そう、コイツ勝手に私の漫画読んでやがる!ふざけんな!まだ私も読み終わってない最新刊!
「…てへぺろ?」
「クソッ可愛い…じゃねえよ!」
やべえ、このままじゃ押しきられる…!
コンマの思考で、一つのベルトを手に取る!
「変身ッ!」ガシャコン!
このベルトは、変身するときにーー
「ウワーッ!?視界が青白い!しかも押される…!」
視聴者から「やたら強い発生保証」だの「畳」だの言われる怪人を弾くためのもの…これほんとなんだろ…が出る…!
「ぶっ飛べ…!」
ここで押しきれないと負ける…!
…手応えがない?
見ると、アイツの体がなんかふわーっとしてる手応え…
…あ、やべえ、予想以上に私の漫画読んでやがる…
「力抜き殺法!ダメージは無効化ー!」
「お前、お前ーッ!一応その技あの世界のタツジンじゃないとできないんだけどーっ!?」
…しっかり手は握られてやがる…!
「じゃあとどめー!イヤーッ!」
空中から柔らかい腕をムチみたいにしならせて…叩きつける!
ゴシャァッ!テーブルに私の手がつく!
「アバーッ!サヨナラ!…なにやらすんじゃい!」
くっそう…負けた…!
すとんっ、アイツはしっかり着地する。
「でもしっかり乗ってくれるから大好きだよーえへへー」
「グッ、笑顔がかわいい挙げ句に大好きとか言われた!」
とてちてとてちて。
冷蔵庫からさっさとプリンを出して食べる準備を進めている…小動物みてえ…
「プッリン~プッリン~♪」
…まあ、負けたけど、アイツが嬉しそうだし、よいか、うん。
…そんな感じで、第…何回目だっけ…プリンとか争奪戦は幕を閉じたのだった、まる。
◆
「…でも、漫画勝手に読んだのはお説教な」
「えっ」
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