旅と砂塵とオアシスと
あの女は私を置いていった。
…絶対に許さない。
◆
風が吹く。砂塵が舞う。砂嵐が吹きすさぶ。
容赦なく私の体を痛めつけてくる。
私は歩く。
…喉が渇く。
私は歩く。
…脚が棒のようだ。辛い。
私は歩く。
…今日はどのあたりで眠ろうか。
そのようなことを考えながら。
私は歩く。
――このどこどこまでも続く、砂漠の中を。
私は歩く。
――あの女を追いかけながら。
私は歩く。
――行きつく先も分からないまま。
私は、歩く。歩き続ける。
追いかけて。追いかけて。追いかけて。
――いったい何のために?
…もしかしたら、私は、それをこそ知りたいのかもしれない。
だから、私は歩くことをやめようとしないのかもしれない。
◆
「…チッ」
水が切れそうだ。
オアシスはまだだいぶ遠いらしい。
…これは私も年貢の納め時か?
…まあいい、まだ足は動く、歩ける。
動けなくなるまでは、歩く。進む。
たった一人の女を求めて。
◆
いた。
思っていた以上にあっさりと見つかるときは来た。
「…」
…死にかけの状態で。
向こうも水不足みたいだ…行き倒れていた。
「…」
倒れているこいつを見て考える。
…私は何をしたかった?
私は、こいつに追いついて何を言いたかった?
私は、私はこいつに、何をしてやりたかったんだ…?
◆
「…?」
僕は目を開ける。
…そうか、水がなくなって…
…あれ、ここは…?
周りを見渡すと、そこはオアシスだった。
…なんで?
水を飲まされた跡がある。誰に?
荷物を確認すると、手紙。
『追い抜いてやったぞ、くそ女』
「…」
――あの、野郎…!
僕を追い抜いていきやがった。
…絶対に許さない。
荷物をまとめて立ち上がる。
絶対に、追いついてやると決意しながら。
◆
僕は歩く。
――このどこどこまでも続く、砂漠の中を。
僕は歩く。
――あの女を追いかけながら。
僕は歩く。
――行きつく先も分からないまま。
僕は、歩く。歩き続ける。
◆
私は歩く。
――このどこどこまでも続く、砂漠の中を。
私は歩く。
――今度は、追いかけられる立場として。
私は歩く。
――いつか追いついてくれると、そう信じ続けて。
私は歩く。歩き続ける。
◆
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