日々之好日/『 』
ぷあーん。ぷあーん。
電車の走る音。
雲一つない青い空。
「わー!遅刻遅刻―!」
そんな中を私は走る。
◆
ざり、ざりざりざり。
ざ、ざざざざ。
ざりざりざりざり。
◆
「うわーっ!遅れる遅れる―!」
すたたたたー。
何時もだったら一度や二度は他人とぶつかっている私だが、今日は全然ぶつからない。
これなら始業に間に合うかも!
「うお~っ!だっしゅだーっしゅ!」
そのまま私は走り去った。
何があったのかも気づかずに。
/
「…………はあ、全く。」
それを見ていた女性が二人。
「時間遡行――それと歴史改変、何とか上手く行ったわね」
何やらくるくると空中に文様が描かれている。
「しかし、手伝った私が言うのもなんだが、本当にいいのかい」
こちらは物騒な剣を持ってお茶を飲んでいた。
「……いいのよ、『私とあの子は出会わなかった』、それでいいの」
文様を消す。自分の未練ごと。
「……まあ、理解はできるけどね、私にだって。まあ有り難く
剣で空中に文様を描く。
「ええ、あの子と…私で作ったのよ」
「…そう、じゃあ。もう会うことはないと思うけど、御達者で」
その台詞を最後に片方の女性は文様の中に消えた。
「…………」
それを見送り、彼女は溜息ごと、残っていたお茶を飲んだ。
◆
日々之好日、おきらくごくらく。
――あの子がそう生きられるなら、私はそれで良かったの。
私は一人になったけど。
それでもしっかり笑って見せる。
だから一緒にご唱和ください。
『あの子と私は出会わなかった』。
だから、この話はここでおしまい。
始まる前に終わってしまった、二人の少女のお話は。
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