ゲネラルプローべ
先生(さきしょう)
第1話 0.1%の普通
ゲネラルプローべ(Generalprobe)とは
演劇・オペラ・舞踊などで、初日の前日に本番と全く同じ手順で行う総稽古
東京都内ではあまり見ることができない、雲一つなく星の輝く晴天の夜空。この夜空を晴天や満天、はたまた100万ドルと形容するかは、国語の先生ではない俺には区別がつかないし、そもそも個人の主観でしかないだろう。しかしこの夜空が綺麗だ。晴天という言葉は、良く晴れた天気に使う言葉だろうか。たしかに夜空に使うのは聞いたことがない。流星群や彗星の接近の時にはニュースのお天気お姉さんが「今日は雲が少ないので絶好の観測日和!」とは言うが「今日は晴天なので夜は絶好の観測日和!」とは聞いたことがない。これは俺が意識して聞いたことがないだけかもしれないし、放送用語で使用が禁じられている表現なだけかもしれない。お天気お姉さんも渡された原稿を読んでいるだけかもしれない。でも晴天も快晴もピーカンも聞いてイメージするのはなんで
『~町 、~町 』
いつも聞いている駅名のアナウンスで微睡みから意識を引き上げる。慣性の法則によって体を揺られてさらに目を開き、自動ドアの開閉の音と駅のチャイムで意識を覚醒させる。
「うぉっ………とっ」
もうろうとする意識の中で、急いで窓の外と車内の電光掲示板窓で駅名を確認しようとした。しかし電光掲示板は、目の前に立って居たサラリーマンが壁になり確認できず、振り向いた窓からの外の風景からは、流行りのソーシャルゲームの広告しか見えなかった。だんだんと視覚以外の感覚が覚醒してくる。一呼吸置いて到着駅のチャイムとアナウンスが耳に入って来て理解できるようになる。
『~町 門前仲町』
「………やべぇ」
前にいるサラリーマンとキスをする急いで立ち上がって、一歩踏み出した時にはもう時すでに遅く、無情にも自動ドアを閉めるコンプレッサーの音が聞こえる。深くため息をついて何事もなかったかのように座り直した。
「……はぁ、クッソ」
次の駅までのほんの数分、前に立っていたサラリーマンに俺は残った少しの羞恥心を感じながら、次の駅では下車をした。1日に2800万人も利用者がいるこの路線では、こんなことは、日常茶飯事なのでほかの乗客は、こちらに注目はしてはいなかったのが救いだ。
「今日は休むか」
乗り過ごした隣駅のホームで澄み切った青空を仰ぎながら、俺は良心を線路に突き飛ばした。幸い俺の心にはホームドアは付いていなかった。
さっきの駅を寝過ごした時点で、始業時間の13時30分には間に合わないので、副社長に電話連絡をすることが確定したからだ。このまま隣駅のホームで
幸い今日は仕事が
「こんな
自分のような労働意欲ゼロの奴でも、給料が発生している本当にいいところだと思う。そんな職場を無断欠勤にしないためにも、スマホを取り出し短縮ダイヤルから職場に電話を掛けた。
「ええ、なので本日はお休みさせてもらいます。また体調が戻りましたら明日は向かいますので………」
Webサイトからそのままコピー&ペーストしたような、当たり障りのない定型文のような理由で休むことを伝えた。副社長も正直半信半疑だろうが、そこを突っ込まないのが社会人というものだ。
学生の頃は『学校は休まず来るように』とさもそれが当たり前のように教育されて来た我が身だが、その教育は
隣駅のホームで突き飛ばした良心が人身事故を起こさないか一抹の不安を感じながら、臨時休日のスケジュールを考えながら、反対側のホームの電車に乗った。時間は平日のお昼頃、電車は比較的に空いており、椅子の方を一見し座る事を検討したが座ることは諦めた。もし座ってスマホ弄ってい乗り過ごすなんて事があったら、遊ぶ気力さえもなくなってしまうからだ。それに久々の平日ズル休みに少し興奮して居るのだろう、ドアの前に立つ事にした。
「どうしたものかな」
今は月曜日のお昼時、
彼は様々な問題を熟考した結果、行きつけのレストランでお昼ご飯を取りながら読書ということで結論を出した。そこはこのご時世には珍しく喫煙者のためのレストランであるからだ。だからこそ
ここ数年で徐々に煙草について世間の風当たりが強くなってきているのを感じる。値上がりもそうだが、今では禁煙の飲み屋まで台頭してくるようになり、それが売りになるということが驚きだ。
「まったく、こっちは高額納税者なんだぞ………」
『次は秋葉原〜、秋葉原です』
今度こそしっかりとした意識で電車のアナウンスを聞き、目的の駅に降り立つ。駅で一服したかったが、灰皿は撤去されていた。最近は駅のホームでも吸えないことに不満を持ちながら、ホームの階段を下りていった。
駅を出てから徒歩1分もしないところにある
行きつけのレストランは料理が美味しい事と値段がリーズナブルなところや、近年の禁煙ブームに逆らいながら「喫煙者のため」と銘打っている所、ゲームセンターの地下にあると言う少しアングラな感じが、とても気に入っている。近年本当にランチタイムでタバコが吸えるところが少なくなってきているので、この地域で、お昼食べるなら大体ここに来ているような気がする。早くタバコを吸いたい衝動と新しく買った続刊を読みたい衝動を抑えながら少し早歩きでレストランへ続く階段を降りた。
「いらっしゃいませー」
今では聞かないアナログのドアベルの音と何処からともなく聞こえる定員の声を聞きながら店内を見渡す。平日のお昼時、店内はさほど広くはないがサラリーマンが多く居るようだ、彼らもまたこの禁煙のご時世に逆らいながら生きている喫煙者なのであろう。彼らに勝手に仲間意識を持ちながら、案内してくれる定員が来るのを入り口で待つ。
「あれっ? せんせー?」
「あ゛」
よく聞いたことのある声に意識を向けるとそこには見覚えのある顔があった。
「あっ、 お一人様ですかー?せんせー」
そこにはさっき居るはずもないと考えていた、
赤石 一 (あかいしはじめ)
年齢: 26歳
趣味: 表向きには読書(漫画・ライトノベル)
表向きには映像鑑賞 (アニメ)
特技: 表向きには機械に詳しい(PCオタク)
職業: 定時制高等学校 社会科教師
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