第5話 ショートホームルーム
午後5時45分 それは彼女達の青春が始まる時間
ショートホームルーム(SHR)
朝の会や帰りの会などとも呼ばれることのある、特別活動の1つ。ロングホームルーム(LHR)と呼ばれる大体、水曜日の6限か、金曜の6限あたりにある、担任の先生が、行事の係決めや、ちょっとしたお話をする時間の縮小版や延長線上と思うだろうが、両者は全くの別のものである。
ロングホームルーム(LHR)は文部科学省が制定する学習指導要領という本に、【こういった目的】で【こういった内容】の指導をしなさい、と国が決めたものが基準がある。つまりはやる内容は厳密には決まっている。決して教員が好き勝手にしていい1時間ではない。しかしショートホームルーム(SHR)は修学旅行や運動会などと同じで特別活動の1つであるため、内容が学習指導要領で定められていない。むしろほとんど触れられていない。つまりはショートホームルームをやれとは国は決めていない。それを決めるのはその学校の方針を決める校長か副校長である。
ショートホームルームなんてめんどくさいこと、やりたくもない。管理職連中が勝手に下に押し付けているだけの業務だ、つまりサービス。学校現場では生徒のためのを思ってという大義名分を使えば教員に
「よぉーす」
出席簿片手に覇気のない赤石が教室に入ってくる。挨拶は形式上のもので誰かに向けたものではないのは、彼の態度を見ればよくわかる。赤石が入ってきたことなんてお構いなく、
出席番号2番
「…………でね、昨日のLiveでさぁ
「それはえぐいて、
赤石も彼女達が何をしていようと気にしない。
「起立」
彼女達の会話なんて無視して赤石は号令を自分で
「
彼の号令を聞いたクラスメイトはバラバラと自分の席から立ち上がる、決して起立ではない。あくまで
「気をつけ、礼」
「「よろしくおねがいします」」
赤石の号令に従ったのはクラスでたった二人。出席番号4番
「全員居るな」
赤石はクラスを一瞥し出席確認を行う。その間も蹟大と龍頼の楽しいおしゃべりは続いている。本来は一瞥ならもいらない、この教室に入った瞬間に全員居るという事は一目で一目瞭然であるからだ。なぜならそれは、第三久須師高等学校の1年1組の在籍数は7名しかいないからだ。
「連絡事項はたぶん無い、以上解散」
赤石はそう告げてショートホームルームを終わらせ、踵を返す。しかし教室の出口に差し掛かったところで、声がかかる
「先生!」
「ん?どしたか御伽噺」
「ほ、保護者会の出席票を持ってきたのですが」
彼女はそう言ってプリントを差して、赤石に手渡す。
「ああ、そんなもんもあったな。おい、だれかほかに持ってきているやついないか保護者会の出席票」
大声でクラスに向かって声をかけるが、生徒からの反応は無い。相変わらず彼女たちは思い思いの行動をしている。蹟大と龍頼の会話には新たに桜葉が混ざって楽しく談笑をはじめ、小望月はずっと教科書を読むふりをしている。彼女たちも赤石の話を聞いていないわけではない、自分には関係ないと思っているから反応しないだけだ。 それを赤石は理解しているから、彼女達を追求することはない。
「とりあえず、受け取っておくは、あんがと」
そう言って赤石は教室を出て行った。
生徒と教員お互いが、お互いを認識しているだけ。最低最悪のショートホームルームこれが彼と彼女達の普通の日常
午後5時45分 それは彼女達の青春が始まる時間
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