第二話 東奔西走②
ベットで二人の規則的な寝息が聞こえる。
やっと本当に終わった。
ソファに体を投げ打ち天井を仰ぎ見る。
明日からどうする。まずは蹟大の処遇が第一だ。特に住む場所の確保。たぶん家庭の問題なのだろうけど援助交際なんて危険なものに手を出したほどだ。アイツがまっすぐ家に帰るのか。正直半々ってところだ。そのまま帰るといえばそれで終わりだが、帰ったところで、現状は何も変わらない。あいつは再び今度は別の方法で自分を傷つけるかもしれない。
次に精神の問題。心的外傷後ストレス障害、通称PTSD、つまりは俺の蒔菜みたいなもんだ。自分に起きていることだからわかる。日常生活を送ることはできるが、ふとしたことでフラッシュバックにさいなまれる。発症した半数以上は、そのほかの精神障害を併発することもあるらしい。俺だって復讐という狂気にまみれなくては今の自分を保っていない。
恐らくフラッシュバックのトリガーは男性。男性の何がトリガーなんだ。相手の容姿、服装、何が原因になるかなんてわからない。学校だって危うい。病院に行くにしても、家庭からの協力は難しい。協力を得られたとしても言えるのか、娘さんはレイプされそうになったんですって。
「あー、八方塞がりだ。」
額に手を当て、目をつぶる。
学校なんてどうだっていい、定時制なら一カ月は休んでも問題は無い。やはり問題は帰る場所、彼女の居場所を作ることだ。第一候補は桜葉の家。アイツの家庭環境は…………ん?
「知らないな」
興味さえなかった、当たり前か。それにあいつから家族の話はされたことは一度もない。
「訳アリか、なしか。クソッ。情報が無さすぎる」
この優幻と楓ちゃんを除けばこの二人とコミュニケーションと呼べるものを取ったのは、この一週間だ。
「あー」
無能すぎる。俺、無能すぎる嫌になる。
桜葉の家がだめなら次はどうだって、俺に頼れる人間なんて原神くらいしかない。アイツ新婚だし、無理だよなぁ。家出少女保護の施設を調べてもらうくらいは手伝ってもらうか。
「あーあ、やっぱそれしかないのか」
思いつく一番適当にこの物事を解決す方法はすでに思い浮かんでいる。
「…………はぁ」
仮定の話をしても仕方ない。明日のアイツ次第だな。
「それにしても異常だ」
赤石はテーブルに手を伸ばしスマートフォンをつかみ、スリープを解除し画面を表示させる。
「ありえるのか、娘が居なくなったんだぞ」
蹟大のスマートフォンには未だに親からの連絡が入っていなかった。
「よっぽど蹟大が家に帰っていないか、興味が無いのか」
アイツが家に帰ってる返ってないなんて知る由もない。
「すべては明日分かるか」
スマートフォンをテーブルに戻し上体を起こし、ベットで寝ている彼女達を見つめる。
「……こう見るとただの女子高生なんだけどな」
何かあるからウチなんだよな。普通の奴なんて担任を含めて居やしない。楓ちゃんが例外なのだ。
「……はぁ」
とりあえず明日は七時に起きよう。
自身のスマートフォンでいつものように目覚ましを設定し、再びソファへ体を戻す。
「…………はぁ」
鬼が出るか蛇が出るか、はたまた仏か。
赤石は意識を失った。
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