【R17閲覧注意】第二話 東奔西走EX【読まなくても話はつながります】
「ねぇ。なんで男の人はそんなに若い女の子とエッチしたいの?」
ソファの隣に座る彼女が赤石を見上げるように質問を投げつける。
お前の疑問はもっともだろうよ。お前と蹟大は情動を向けられる側の人間だ、疑問に思うことは当然か。
いつも赤石であったら『そんなもん知らん』で一瞥する、昔の赤石であれば保険の教科書を持ち出して授業を始めるだろう。しかし今の彼はその両方に位置する。
赤石は彼女の問いに作らない建前ではない自分の言葉で、誠実に答えるために腹をくくる。
「いいか、今から俺が学校ではできない保健の授業をしてやる」
「夜の保健体育の授業っすか」
彼女が少し茶化すように答えを返すが、それをあえて無視して話を続ける。
「変な期待はするな、あくまでこれは自論だ、だがお前の疑問の回答になるかもしれない、それでも聞きたいか?」
「聞きたい」
彼女は真剣な表情で赤石の目をまっすぐ見つめなおした。
「いいか、男性が性的興奮を感じ絶頂をする方法はおそらく二つ」
そういって彼女の顔の前に左手で指を二本立て、Vサインを取る。
「一つとして肉体的刺激。つまり陰茎の刺激による強制的な興奮のことだ」
指を一本折る
「二つ目は精神的刺激による興奮。つなりはシュチュエーションによる興奮だ。人の性癖は青天井だ。具体的な例はない。俺は恐らく絶頂にはこの精神的刺激による興奮が大きく作用していると思う」
指を全部折り、もう一度指を二本立てる。
「男性はこの二つの刺激が複雑に絡み合って、絶頂を迎えることができる。どちらかの刺激のみで絶頂を迎えることができる人がいるらしいが、ここでは割愛しよう」
左手を閉まった。
「次に女性器についてだ」
「いやんっ」
隣に座っている桜葉が大げさに自分の肩を抱く。
「やめてもいいぞ」
「嘘です、嘘です。教えてください」
彼女は急いで姿勢を正す。
「基本情報として話すと、一般的に女性器の入り口から子宮までの距離は平均して、約七センチメートルと言われている」
目の前のガラス張りのテーブルに約七センチメートルの線を指で引く。微かに手の脂が軌跡を残す。
「しかし日本人男性の陰茎の平均は十三センチメートルと言われている」
その軌跡の数センチ上に今度は十三センチメートルほどの線を引く。
「神が人類の設計を間違えたかのような値だが、女性器は非常に伸縮性のある器官で、子宮は人体の中でも浮いている臓器と言ってもいい。出産のときには直径三十三センチメートル以上の赤ちゃんの頭が通るくらいだからな」
その線の上にさらに三十三センチメートル指を走らせる。
「次に肉体的刺激を与える膣圧の平均は、二十水銀柱ミリメートルと言われている。これは圧力なので一概に握力に変換が出来ないが、男性が男性が女性の膣内で射精が出来なくなる、射精障害にならないようにするには、自慰行為は握力四キロ前後の力で行わなくてはならないらしい。十キロ以上の力で自慰行為を行うと、射精障害や勃起不全になる確率が医学的に高くなるらしい。つまりは膣圧は十キロの未満であるという事だ。人差し指を出してみろ」
桜葉が差し出してきた立てた人差し指を、左手で軽く握る。
「これかが五キロくらいだ、そして」
次は彼女が痛がらない程度に強く握る。
「成人男性の平均握力は、これくらいよりちょっと強いくらいだ」
「嘘でしょ、全然違うじゃん」
「そうだ、それに人によっては自慰行為の際に両手で同時に陰嚢も刺激する人も居る。そこで問題だ」
彼女の人差し指を放して話を続ける。
「刺激という部門で女性器は、自慰行為以上に刺激を与えることができると思うか?」
「……無理でしょ」
彼女は即答した。
「正解だ。つまりは女性器はぬるい穴ということだ」
「ひっど! ひっど! 今なんて言ったのよ先生え!?」
彼の放った言葉に彼女は思わず彼女はソファを立ち上がり声を上げる。
「シーッ。蹟大が起きるぞ。それに聞く堪えないなら、この話はもうやめよう。所詮は俺の主観だ」
彼は口の前に指を立てて静かにするよう促し彼女を見上げる。
「いや、いい! 聞くよ。ちょっと、声上げちゃったけど、こんな話他じゃ聞けないし」
彼女は再び座りなしてこちらを見る。
「続けるぞ。やめてほしいならいつでも言え。じゃあどうして男は性交をして射精が出来るか、答えは最初の二番目に言った精神的興奮に大きく起因すると俺は考えている。美人とはなんだ桜葉」
「美人?」
今度は頭の中でしっかりと問いに対し答えを考えているようだ。
「顔が整っている、的な? 目が大きいとか。涙袋がぷっくりしてるとか」
「なるほど、お前が言うんだおそらく現在の美人の定義はそれなのだろう。俺は美人とは希少性だと思っている。生物学的に考えると遺伝子情報が整っている、いい遺伝子を持っていると言い変えれるかもしれない」
彼女は言っている意味がわからない様子だ。
「例えば桜葉、お前の美人の定義が全人類が同じであったらどうだ、全人類が美人か?」
「それは違うんじゃないかな、全員がそうなら美人じゃなくなると思う」
「そうだ、みんな持っていたらそれは美人の定義になりえない。昔から美人の定義は歴史の移り変わりごとに変わってきた。平安時代では顔の形ではなく、髪の艶で美人の定義がなされていた。それほどに、あの時代で綺麗な髪を保つという事は難しいことだったんだよ」
彼女の髪を軽く撫でる。
「なるほど、そういう意味ね。確かに綺麗な人は美容にお金使ってるし、わかる気がする。じゃあ生まれつきお金持ちの子や、美形の女の子以外は全部普通って事?」
「いい質問だ、これが授業なら良をあげただろう」
「人類すべての女性で希少性のあるものが一つあるなんだ?」
「んー、みんな持ってて貴重?」
彼女は再び頭を悩ませる。
授業のノリで彼女に質問を投げたが、答えがあまりにも不適切だったことに気づき、すぐに解説を行う。
「お前に答えさせる単語じゃなかったなすまん、配慮が足らない質問だった、すまない。答えは処女だ」
薄暗い室内ではわかりずらく彼は気付かなかったが、彼女はその単語に頬を染める。
「昔からな、男は女の最初になりたがり、女は男の最後になりたがると言ったもんだ。古来より処女は希少性の高いものとして扱われてきた。処女の血は悪魔を呼び寄せる、破瓜の血は黒魔術に使われ、神への生贄はいつだって穢れを知らない処女の少女と相場は決まっていた」
「なにそれ、ひどくない?」
「ああ、だがそんなもんだ。諸説あるが中世には初夜権と呼ばれる権力を貴族が行使する時代もあった」
「しょやけん、どんな字を書くの?」
赤石はテーブルに備え付けのメモ帳で漢字を書く、その意味を理解した桜葉は再び声を上げる。
「噓でしょ、ありえないんだけど!」
「シーッ。審議は確かではないがな」
彼は再び口の前に指を立てて静かにするよう促す。
「一七〇〇年後半にヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトによって『フィガロの結婚』と呼ばれる新婦の初夜権を奪おうと画策する戯曲が作られている。あのモーツァルトだぞ恐らくあったのだろう初夜権は」
「……キッモ」
そう彼女は吐き捨てる。
「話を戻すと、希少なものを手に入れる、得る、汚す、傷つける、このような行為に男は興奮や優越感を得られるのだろう、征服欲の一種だと思う」
「征服欲よくねぇ……」
「もちろん、すべての男性がそうではない。愛欲も存在するだろう。親愛なる存在だからこそという人の方がほとんどだろうよ」
「愛欲……」
寂しそうに彼女がつぶやく。
「最終的な結論としてだな、若い女と性交をしたい男性のほとんどが征服欲による情動だろう。こいつを傷つけてやった、抱いた、汚したという気持ちは、自身が自信をコンプレックスに思えば思うほど、得られるものは大きい。自身に自信がないのに女性という神秘に自分の存在を刻み込むことが出来るんだからな。つまりは援助交際なんてしている大人は、女性を抱くためじゃない、女子高生を犯す、傷つけるためにやってるというわけだよ」
「なるほどね、最高のクソ野郎ってわけだ」
「そうだ、しかし女子高生という希少なものを犯したい中高年と、楽してお金が欲しい女子高生、このどっちかが死滅しない限り援助交際は無くならないだろう」
「そんなことありえなくない?」
「そうだ、ありえないんだ。それはこの二十年弱の歴史が証明している。まあ彼女達をその道に誘う、大人サイドが十割悪いと俺は思うから、死ぬべきは大人だと思う」
そう言いながら赤石はベットで寝ている彼女を眺める。
「アイツみたいに、色々抱えたやつを騙す奴がな」
再び桜葉に向き返る。
「これが俺の考えだ。わかったか大人は汚い生き物なんだ。これで授業はおしまいだ、さぁ、よい子は寝る時間だぞ」
赤石は立ち上がり部屋を見渡し、今日、自分はどこで寝ようか思案する。
部屋の中には巨大なベットが一台、今座っていた二人掛けのソファとガラス張りのテーブルがあるだけだ。ベットは大きいが、蹟大が寝ているので論外、このソファも桜葉が寝るだろう、そうすると水を抜いてバスタブで寝るかぁ?
「なぁ、桜葉お前はどこで寝る?」
未だソファにする割る彼女に問いかける。
「寝る場所?美雨と同じベットでいいよ私別に」
「そうか?」
「うん、広いベットだからもうも起こさずに多分寝れる。流石に先生を床に寝かすわけには行かないですよさ、ほらどうぞ」
彼女は立ち上がり、自分の場所を譲った。
「そうか悪いな、今日は疲れてなー、本当に」
少し幅広なソファの作りになっていて、足までとは言わないが、まあまあの姿勢で寝れ転がる事ができる。
赤石はソファに身を投げ打つ。
「先生私、もう一回シャワー入るからー」
先ほどの赤石の上着を持つ彼女の姿が目に入る。しかしそれ以上は目では追わない。目をつぶる。
「あいよー、明日は八時起きだからお前も早く寝ろよ」
「覗いちゃダメよー」
誰が覗くか。
「いいから早く入れー、じゃあおやすみ」
連日の激しい運動と精神的疲労によって彼の意識は一瞬で闇に沈んだ。
しかし彼の安眠は腹部へ強い荷重で突如終わりを告げる。
ん?
「つー……なんだよ」
浅い睡眠から覚醒をして、動く左手で目を擦り目を開けると、そこには桜葉成見が自分の下腹部に馬乗りになっていた。下着姿で。
「ばっかおい!」
急いで目を閉じるが、その脳は記憶をしてしまった。
艶かしい彼女の下着姿を。下着の色は少し濃い群青、大人の色気を匂わすレースのデザイン。いつもは服に隠されている、なきめ細かい肌、谷間にある黒子、そして彼女ブラジャーから溢れる胸。飛び出ている所は飛び出て、くびれている所はくびれている、成熟した女性の体、その肢体を。
一瞬垣間見た彼女の姿と、腹部にかかる荷重と彼女のショーツの感触がこれは夢ではない、本物だと、見間違いではないと言っている。
動かない!?
彼女を払い退けようと、身をよじるが、体が思うように動かない。中腹部から下腹部に馬乗りになられている。右腕はすでにボロボロで、体側で彼女の太腿によって抑え付けられている力も無い。
唯一自由な左腕で、彼女を払い除けようと彼女の方に触れようとする。
「おい!」
「だーめっ」
動かした左手は彼女の右手に恋人つなぎをして、絡めとられてしまう。
くっそっ。
彼女を動かそうにも繋がれたてしまった左手では難しい。
無理あり握るか? いや俺の握力なら桜葉の手を確実に傷つける。右腕は、器用な動きはもうできない。
左の手の平から、つながれた彼女の右手の感触を感じる。想像以上に彼女の指は華奢であった。それこそ力を籠めたら折れてしまいそうガラス細工のようだ。
「先生」
彼女が左手で彼の上半身を愛撫する様に、優しく触り始める。
「何ふざけてるんだ、桜葉お前」
声を荒げたが、下唇に彼女の左手の人差し指を押し付けられる。
「シッ、でしょ先生。美雨が起きちゃう」
先ほどの自分の様に彼女はさも当たり前のように注意をし、人差し指に力を籠める。
「おい、馬鹿なことを」
赤石は今度は体を起こそうと力を入れるが、腹部に乗られてうまく力が入らない。
そんな赤石を彼女はさらに追い込むように左手で体重をかけて彼の肩を押す。既に五時間の重労働を終えた赤石に抵抗する力はほとんど残って居なかった。
「こうすれば美雨にも聞かれないかもね」
目を瞑っていても、微かに減った荷重と、新たに触れた感触、声の位置で彼女が何をしたかわかる。四つん這いになり、覆いかぶさったのだ。
「ねぇ、先生」
見ずとも、彼女の綺麗な髪が頬や額に当たり、彼女の顔も位置想像できる。彼女の熱い吐息がかかる。
「ねぇ、目を開けて先生」
「断る」
「じゃあ、このままキスしちゃうよ?」
「何を馬鹿な」
髪の感触で彼女の顔が近づくことがわかる。
「本当よ」
耳元で恋人の様に囁かれる。彼女の息が耳に触れるそれだけで、赤石の心拍数は自転車のギアを二段変えたように早くなる。
今全身から全力を出せば、桜葉を力で無理やり横に投げ飛ばす事はできるだろう。しかしそれではアイツが怪我をするかもしれない。クソ。ソファ隣のテーブルはたしかガラス製だ、最悪もあり得る。
渋々と赤石はその言葉に従う。
彼が目を開けたことを確認した彼女は、再び体を起こし馬乗りに戻る。
赤石の目には先ほどよりも鮮明に彼女の肢体が映る。部屋の薄暗く妖艶な雰囲気と、その明かりに照らされた彼女の下着姿は、赤石がこれまで見たアダルトビデオのどんな裸体よりも、優艶で、美しく見えた。見えてしまえしまえば今まで意識しなかったところも意識してしまう。彼女が微かに動く度に、腹部に感じる彼女のショーツのレースの凹凸さえも、今の赤石には敏感に感じることができた。
「お前はやっぱり狂ってるよ桜葉、サイコパスだ」
理性を総動員した彼の心からの感想だった。
「どうして、先生?」
「お前現状わかってるのかよ、蹟大が援交するにを阻止したすぐ後に、これか? どういう用件だ」
「あっんっ」
隙を突き抜け出そうと、力を入れて身動ぎすると、彼女が切なそうに声を出す。
「先生…………いきなり動かないで。擦れて声出ちゃう」
彼女は俺の上で、腰を切なそうに左右に揺らす。彼女が揺れればその胸もたゆんと揺れる。
つっ。耐えろ。俺、相手はあのジャンキー女だぞ。
「これは援交じゃないわ先生、お金だってもらわない、美人局だって違う。触れて欲しい……先生に」
薄暗い室内でも、目が慣れてきて彼女の表情まではっきりと見えるようになる。
「……傷つけてほしい」
彼女は恍惚としている。
「……桜葉」
「もうダメ、さっきシャワーで先生の匂いを嗅ぎながら、自分を慰めても全然なの、ソファで寝ている本物の先生の寝顔と匂いを嗅いだらもう、もう、我慢ができなかったの」
彼女は物欲しそうに腹部の上で、腰でなぞる様に上下に軽く揺らして、切なそうな表情で告白する。
「ねえ、先生…………抱いて」
彼女は甘く蕩けるような声でそう言い放った。
「…………はぁ。なにを馬鹿な事を言っているんだ桜葉」
玉虫色の回答をしても、彼女の暴走は止まらない。
「私じゃ、ダメ? 興奮しない?」
彼女は塞がれていた赤石の左手を解放して、今度は両手で手首を掴み、自身の胸に押し当てる。押し付けられた胸が俺の手の形に変形するのがわかる、手の平からは、ブラジャーの向こうにある、弾力のある存在を感じることができる。
「お前なぁ!」
「だめ、ちゃんと答えて」
彼女は胸に押し付ける手をさらに強める。指は動かさないように集中すればする度に、指先の感度は増していく。
「お前自分の状況が分かっているのか」
「分かっているよ。二十歳と二十七歳の男女がラブホのソファで情事を始めようとしているだけ、だよね」
「言っている事は!」
「先生、鈍すぎるよ」
「え?」
彼女は空いている残りの左手で恋人つなぎをしている俺の左手を、反対側から包み込み、その手を神に祈るように組んで、自分の胸の上に押しあてる。
「私昨日、あんなに精一杯してデートしたのに! 先生に会うまで、どれだけ緊張したか分かる? 朝七時から、何が先生の好みか一生懸命に洋服選んで、メイクして、髪セットして、行くまでの電車で何度も何度も鏡見て、先生の後姿を見つけた時にも、全身確認して、可愛い私を見てほしかったから。でも先生最初に崩しちゃうし……」
確かに昨日はお前が学校よりも着飾っているのはわかったよ、……だからあんなに怒っていたのか。
「あんなにボディタッチしたのに、先生から指一本触れてくれなかったじゃない」
今度はシーシャカフェの時か。
「そんな乳繰り合うほど、楽しい話してなかっただろ。お前」
「たかしかに美雨ちゃんの話をしたのは私だよ。でもさぁ、あんなに胸もお尻も押し付けたのに、指一つ動かさないし先生焦りもしないんだもん。最後の告白も断られちゃうし」
胸に押し付けられている左手から彼女の、今にもはち切れそうなほど早い心音が感じられる。
「触ったら、問題だろうに」
「だからさっき聞いたの、私相手にされてないのかなって!」
あれは蹟大についての話じゃなかったのか! クッソ。選択を間違った。
「……いつからだ」
「え?」
「いつから俺の事を……思っていた」
まずは、時間を稼ぐしかない。こいつが冷静になるために、この状況で暴走するのを防がなくては、俺の利性が持つ前に。
「そんなこと言わせたいの先生、結構鬼畜ね。でも先生が知りたいなら教える。でもはっきりはわからないの。元々、嫌いな先生じゃなかった。前にも言ったけど先生だけは私達を見ていたから。意識し始めたのはこの一週間のどこか、気づいたら貴方を目で追っていた。いつからかは詳しくはわからない」
「……なるほど」
思いを口にした彼女はさらに過激に、彼を責め立てる。再び捕まえている左手の手首を両手でつかみ、今度はブラジャーの下から彼の手を滑り込ませ力一杯に押し付ける。
もう既に直に触れている彼女の秘部に。掌の中心にその感触を感じる。
「先生、そのままね」
彼女は妖艶に微笑むと、左手を開放し、彼が抑えている方の胸のブラを上ずらす。
「おい!」
赤石の左手が彼女の手ブラをしている状態だ。彼が手を離せば、見えてしまう。
「ふふ、先生なら離さないと思った、見えちゃうもんね私の、見たいなら見てもいいし、そのまま揉んで良いんだよ。もう全部先生の物なんだから」
クソが、これで俺の左腕も封じられた。
赤石は手を動かそうにも動かせない、動かしてしまえば自分の意志で彼女の胸に触れてしまうし、手の平に感じる彼女の秘部が見えてしまうから。
「どう、先生ぇ。私はそんなに魅力がないかな? 髪型? 髪色? 胸の大きさ? 性格? なにが先生のお気に召さないの教えて! 全部直すから、あなた色に染まるから、貴方の物になりたいの」
それはもう告白ではなく、懇願だった。あなたの物になるという隷属の宣言。
「…………はぁ。今この場だからその解答には答えてやろう」
今の彼女には、玉虫色の回答では切り抜けられない。彼女の覚悟のためにも、彼女が求めている納得出る解答を口にするために、再び腹を括る。
「男は単純な生き物だ。そう言ったろう。この状況でお前ほど魅力のある女性にそこまで迫られて、興奮しない男はいない。お前は今のままで十分に魅力的だ。これで満足か」
彼女は再び彼のの両肩をつかみ押し倒す。押し付けられ体制が変わった事で、赤石はその手のひらに彼女の柔らかさ、その中にある物を強く感じる。
「じゃあ、先生」
彼女の声は切ない。
「やめろ、蹟大が寝ているんだぞ」
「大丈夫、美羽は多分起きないよ」
彼女の右手が赤石の下唇をなぞる。
「ねぇ、先生。私で興奮してくれるんでしょう、ね、一度だけでいいの」
彼女の熱い吐息と髪が再び顔に触れる。二人の顔の距離はすでに十五センチにも満たない。
「ふざけるな」
「ふざけてなんてない、私っ」
「いいか桜葉お前は一時の感情に流されているだけだ。これは釣り橋効果と言ってな、心理学的にも」
二人の距離がゼロになる。唇に彼女の感触と体温を確かに感じる。唇と唇が触れるだけのバードキス、時間にしてほんの二秒も満たなかっただろう。
「んっ。先生の悪い癖よ、土壇場で確信を話さないで、誤魔化して逃げようとする。いつもそう。先生私は本気なの」
「ばっかやろう、自分がなにを」
再び彼女はキスをする。今度は首を左に振り彼女のキスから逃げる赤石。
「結構可愛いじゃない、先生」
耳元にそう言って、彼女は彼の反応に満足をしたのか再び馬乗りに戻る。
彼女は、今のキスを物欲しそうに右手で唇をぬぐい、その指を舐める。
突然の姿勢移動に赤石の左手は付いていけず、遂にあらわになる、彼女の秘部が。彼女は今更そんなことは気にしない。
馬乗りになり、自身の指を物欲しそうにしゃぶる彼女の姿は実に淫靡だ。
この大馬鹿野郎は自分が何をしたか分かっているのか、おい。
「……先生に私の初めてあげちゃった。ファーストキスだったの私、二十歳まで経験ないなんて引かないで先生」
軽率だった、今日のありとあらゆる行動が軽率だった。クソォ。
「…………はぁ」
深くため息をつき鋭利になった感覚を落ち着け、心を落ち着かせる。しかし心臓は早鐘を打つように強く鼓動をしている。
「ねぇ、先生このまま」
「桜葉」
名前を呼ばれ彼女はこちらの話を聞く姿勢になる。
「もう、逃げない。俺の本心を言うから聞いてくれ」
「ええ、先生」
「俺がお前と学校以外のまったく別のところで出会っていた。もしくは教師と生徒という関係になる前にこうなっていたら、俺はお前を迷わず抱いただろう。何度も言うが、お前ほどの女断る男はいない」
「だったら!」
「だが俺は、未だにお前たちの1年1組の担任で居たいんだよ」
俺が教師である事、それがあいつとの約束でもあるから。
「先生、別に彼女じゃなくてもいいの!」
彼女は再び四つん這いになって覆いかぶさる。
「今日のこれからの事を忘れろというなら忘れる。先生が抱きたいときに抱くでいいの、先生が求めてくれたらどこでも応じる、先生の家でも、学校だって、先生のデスクでも、あの屋上でも……ねぇ先生」
「確かにここで、お前をここで抱けば俺は多分、人生一興奮するだろうよ、言ったろ希少性だ。自身の教え子を抱くなんてアダルトビデオかエロゲの世界だ。お互いに満足した結果も得られるだろう」
「なら! んっ」
三度目のキス。今度は彼女は舌を入れ、赤石の前歯を舌でなぞる。時間にして十秒弱、彼女は赤石の口内を犯す。
離れる彼女の唇からは、自身と赤石との唾液の混合物で糸を引く。
普段の彼女を知っているがゆえに、その妖艶な姿を前に赤石は、体の芯が制御できないほど熱く煮えたぎるのを感じる。
「んっ。だが。それは出来ない俺は教師だから……はぁ……っ。たとえ生徒に劣情を抱いたとしても、それを悟られてはならない、お前たちの指導者であるために。超えてはならない一線つうもんがあるんだよ、俺にも」
限界ギリギリの理性で、彼女に手当てをしてもらった痛むボロボロの右手で、彼女の頬をやさしく触り、親指で彼女の唇をぬぐう。
「なぁ、桜葉。俺にまだ、お前の担任をさせてくれよ。『青春大作戦』とやらは、はじまったばかっかりだろう。蹟大も歪だ形だが助けられたんだ。これからって時だろう」
彼女の顔は今にも泣きそうで、せつなそうで、悲しい表情であった。
体全体に荷重がかかり、彼女と距離がゼロを超える
「先生ぇのーばっかー」
彼女は赤石の背中に手を回し、体を赤石とソファの間に滑り込ませる。彼女は抱きつき添い寝をする姿勢になる。側から見ればそれこそ行為を終えた男女だろう。しかし彼女の喋り口調や纏っていた妖艶な雰囲気は既に感じられない。
赤石からは彼女の顔はは見えない。
「もう、知らないんだからね、先生の不能、意気地なし!」
右耳から彼女の猛講義が聞こえてくるが、ここで振り向く訳にはいかない。今の彼女は上半身裸なのだから、赤石は天井を見つめる。
ああ、好きに言うがいい、なんとでも罵るが良いさ、一世一代のお前の告白を蹴ったんだから俺は。
「ねぇ、先生」
彼女はいつものトーンで、
「なんだ桜葉」
「私が生徒じゃなくなったら抱いてくれる?」
先ほどの艶のある切ない声ではない、いつもの茶目っ気のある彼女の声だ。
「諦めが悪いな桜葉、今その返答にイエスと答えたら学校やめるだろお前は。だから答えはノーだ」
右から彼女の舌打ちが聞こえる。
「なぜわかったし」
「わかるわ、俺はお前達の担任だぞ」
「じゃあ、卒業したら?」
卒業か。
その言葉に赤石は思いを馳せる。
四年後俺はこいつらの担任ができるのだろうか、塀の中にいる方が確率は高いかもな、それかこの世にいないかもな。
「先生?」
彼女は少し体を立てて彼の顔を斜めから見下ろす。
「卒業したらってお前は二十四だぞ、俺は三十一だぞ」
「うぐっ。……先生本当におじさんじゃん」
「所詮はそんなものだ。恋なんてものは脳の電気信号のノイズだ、一時の気の迷いなんだよ。何かに気づいてしまえば、百年の恋も冷める。だから答えはノーだ。俺のことは諦めろ」
「……ふーん」
彼女は口では納得していない様子だったが、表情は晴れやかだった。
「あっ!」
彼女は気づく、今まで彼女が意識をしていなかった部分に。先ほどまで彼女は彼の腹部に馬乗りになっていた、そうしなければ、彼の腕力に負けてしまうから。右手も動かないことも理解していて、女性の腕力で男性の彼に力で負けないよう。しかし今の彼女は赤石に寄り添うように抱き着いている状態だ。むしろ今の今まで気づかず、意識しなかった方がおかしかった。彼女のちょうど太ももにあたり当たっているその熱源に。
「あら?、あらあら先生。これは何でしょうか」
彼女は挑発的な表情になり、その部分を服の上から一撫でする。
赤石は頭からつま先に稲妻が走ったように全身を駆け抜ける快感に襲われる。
「……がっあ」
彼の理性は先ほどのやり取りですでに限界だ。彼の言った通り、彼女ほどの女性にあそこまで妖艶に迫られていたのだ、今でさえ腕には彼女の胸が当たり続けてその秘部を晒続けている。精神では耐えられていても肉体はそれに耐えられるはずがない。
彼女への情動を表面張力ぎりぎりまで注ぎ込まれたコップに、これ以上注ぎ込まれないように理性で無理やり蓋をして、中からのあふれ出る情動を強制的に抑えているだけ、蓋を外してしまえばとめどなく中身はあふれ出てしまう。肉体刺激、それも彼女によるものであれば、その理性の蓋さえも一瞬で崩壊する。むしろ彼女が今までのやり取りで一度でもその存在に気づいた時点で彼はすでに耐えれなかっただろう。
こんな、がぁ、ところで!
赤石は理性の崩壊を防ぐために、右の手を限界の力を込めて握りこむ、
「がああああああああああくぁああああああああああ」
肉体的痛みで強制的に体を起こし、彼女から抜け出し、ソファから転げ落ちる。
「ちょ、ちょっちょー、先生」
「はぁ、はぁ、はぁ……がぁ、っ。もう、この話は終わりだ。いいな、桜葉」
うつぶせのまま彼女に告げる。
もう限界だ、もうアイツの顔さえ直視できん。
「そこまで逃げる必要はないじゃないの、仕方ないなぁ、先生は」
彼女は気づいていないだろう、あと一手でチェックメイト、彼が積んでいたことに。赤石は肉体的痛みという外界の力でゲーム盤を投げ飛ばして試合を強制終了しただけだった。
「あーあ、負けちゃったかぁ。行けると思ったんだけどなぁー」
俺の負けみたいなもんだよ、この手が無ければ終わっていた。
ソファがゆがんだ音を聞き、彼女がソファから立ち上がり、どこかに向かうのがわかる。
「でも、よかったよ、先生がちゃーんと、私で反応してくれて」
恐らく背後に立っているのだろう。彼は振り向く気力もない。
「糞ジャンキービッチが」
「ひどいなー、ビッチじゃなくって処女なんだけどなぁ、あ!」
また下らねぇこと考えやがったな、もうやめてくれ限界だ。
彼女はおもむろに彼の左手に何かを握らせてくる。
「じゃあ、先生、四年後までちゃんと待ってるからね、今はそれで我慢しててよ」
「何を握らせた」
感じる感触からしたら布か。濡れている、タオルかなんかか。
「それじゃ、おやすみー」
彼女がベットに入る音布のすれる音が聞こえる。
「そうだ桜葉」
「なにー」
「今日、この部屋で起きたことは他言無用だ。俺とお前、そして蹟大だけの」
今後の俺たちの関係のためにも。
「もち、それはわかってるよ」
「学校でしゃべってくれるなよ。お前たち二人のどっちかが、今日のことを漏らしただけで俺は一発で終わりだ。お前たちのスマートフォンのGPS情報もあるし俺は逃げられない。一人は連れ混んで、もう一人は呼び出したって記録も残ってやがる。今後話す事も極力辞めてくれよな、障子に目ありだ」
「あいあいさー、じゃおやむみー」
「ああ、おやすみ」
アイツも俺の立場がヤバくなることはしないだろう。
赤石は桜葉寝たことを耳で確認し、体を回転させ、起き上がる。
「糞が、本当に」
本当にギリギリだった、何もかも、ありえるかよ教え子に逆レイプされるなんて。
彼女に何か握らされた左手を開ける。
なんだ、この紐か、いやそれにしては、はっ!
彼女の言葉を思い出し、その物の正体に検討がつく。
『今はそれで我慢しててよ』
赤石の左手には、今まで彼女が履いていたショーツが握らされていた。
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