第8話 星空のラーメン

時刻は十六時五分、赤石は今日の部活動に関して、副校長に業務連絡をしていた。


「ほう、小望月さんのお父様がそんな物を」


「ええ、非常にありがたい限りです。これで見てくれだけですが、天文学部として活動ができます」活動する気なんてあるわけがない。


「それで活動は何ですが早速、今日行います。申し訳ないのですが、優幻も居るので他の教員の方には、屋上へこないよう通達をお願いします」


「わかりましたよ」


「ありがとうございます」


 天体望遠鏡の粘弾はもちろん伏せた。副校長だってあの値段を聞けばなにか、優幻のお父さんに電話くらいはしなくてはいけなくなるからだ。副校長は彼女のお父様が10年ほど前に使っていた、もう使わない型落ちの望遠鏡をご厚意で貸していただいた、としか説明をしてない。それに今日部活動が終わった後に桜葉に煙草を吸わせる約束があるので、間違っても来るなよとほかの教員へのけん制をした。


 時刻は十七時四十分、赤石はいつも通りのショートホームルームを行った。


 天文学部の件は言わなかった、どうせ蹟大、龍頼、渡辺、御伽噺は来ないだろうと踏んだからだ。言っても意味が無い。


 その後、彼はほかにやることもないので、二限から三限に掛けて部活動の準備をした。準備したのは机と椅子だ。彼が二日前の実地調査と、今日の作業中に気づいたのは、座る場所が無いことだ。最も屋上は生徒の憩いの場ではない、無くて当然だ。しかし部活中に彼女達にずっと立ちっぱなし、もしくは地面に座れというのも非常に酷だ。幸いここは学校、机と椅子だけは無限にあるので三人分の準備をした。


 その後は彼女達が、社会科職員室に訪れる時間まで、今日購入した『異世界転生してみたけど、俺のスキルが弱すぎてヤバい』を読むことにした。


「意外とおもしろいじゃねーの」


「おっじゃましまーす」


「失礼します」


 扉を開ける音と同時に、桜葉成見と小望月優幻二人の声が聞こえてくる。


「おう、来たか」


 彼は桜葉にばれないように速攻でコミックを引き出しに入れて、彼女達を迎え入れる。


「じゃあ行っちゃいますかー! 屋上へ!」


 桜庭は煙草が吸いたくてか、テンションが高い、左手を天に突き上げた。


「ああ、いこうか」


「ちょい、ちょい、ちょーい、どこいくねーん!」


 職員室を出ようとする二人を桜葉は引き止めた。


「どこ行くねんって、普通に屋上だけど」


「いやいや、懐中電灯さんは?」


 確かに前回と前々回は彼女に懐中電灯を渡した。だがそれは見回りも兼ねてと、最初は怖いと思い渡したものだ。


「三度目だろ、懐中電灯いるか?」


「いや、私はいらないよ。いらないけど、小望月さんは怖いんじゃない、行ったこともないだろうし」


「そうか? ちなみに小望月は、今日の昼間に上ったから場所はわかるぞ」


「え そうなの?小望月さん」彼女は架かると思っていた梯子が、架からないことに気づく


「う、うん」


「で、でも、あの廊下お化け出るかもしれないじゃん」


「出ねぇよ」


 こいつ、まさか暗がりが怖いのか? その年で。


「ほらよ」


 今日は、こんなところで時間を食ってはいられないので、懐中電灯を渡す。


「ないっすぅ。はぁー、私の懐中電灯さん」


 彼女は懐中電灯をめでるように撫でていた。


「じゃあ、行くぞ」


 桜葉は、屋上までの道すがら二人に話しかける。


「今日昼間にって、どしたの?」


「いや別に大したことはしてない、行けばわかる」


「わ、わかります」


「なによー。なによ、二人してなにしてたああああああああああああああああああ」


 桜葉は会話の途中で悲鳴を上げる。


「おい! うるっせぇぞ」


「だって、だって、今なんか動いた」


「なんだ、お前が怖いんじゃねぇかよ、というかこの前はそんなに怯えてなかったよな、お前」


「この前は一応、桜葉さんにも二十歳のプライドがあったのよぉぉ」


「この前って何?」


 小望月の鋭い指摘に二人は固まる。


「こ、この前、実は実際の屋上をね、見学してきたのよ」


「そうだな、そうだ。見学してきたんだ」


「そ、そうですか」


 彼女は彼と二人のノリで突っ込みをしてしまったが、ここには桜葉も居ることを思い出し、どもってしまい、次の質問には繋げられなかった。すると今度は桜葉から質問を投げかけた。


「というか、小望月さんは暗いのは大丈夫なの?」


「う、うん、ホラーはそこまで嫌いじゃない。むしろ好き」


「え、すっごーいいいいいいいいいいいいいいい」


 そりゃそうだ、そいつはホラーゲーム大の得意だ。そんなんじゃビビらん。それより会話の途中に叫ぶお前の方が怖いよ桜葉。


「ほら、着いたぞ」屋上への扉を開けて二人を招き入れる。


「わー、相変わらずの、そこそこの眺めー」


「ほらこっちだ」彼は先ほど、持ってきた机に彼女達を誘導する。


 夜の校舎の屋上で、三つの机が給食を食べるように向かい合わせで並んでおり、その各机には赤石が理科室からかっぱらってきたアルコールランプが光り輝いていた。


「うわ、なにこれ、ムーディじゃん」


桜庭はその風景に、スマートフォンを取り出して写真を撮り始めた。


「だろ」


そしてその横に鎮座する巨大なものに気づく。


「うわっ。すごいね、これ望遠鏡?」


「そうだ、小望月のお父様がご用意してくださったものだ」


「え、すっごーい。小望月さんもしかして、こういう趣味あるの?」


「い、いや私は……」


 ここは、一応この部活動の目的である、コミュニケーションの時間を作るか。


「俺は望遠鏡の準備してくるから、お前達すこしそこに座ってしゃべってろ」


「はーい」


「はい」


 彼女達は彼が用意したに着席し向かい合う。彼があえて机を二個にしなかったのは、向かい合わせを桜葉と小望月が向かい合わせで座らないためである。ただでさえコミュ障なの彼女には学友と目を見て話すことなんてできないからだ。


「ねえ、小望月さん」


「な、なんでしょうか、お、桜葉さん」


「先生から聞いたと思うのだけど、ストレートに言うと、私はあなたと仲良くしたいと思っているの」


「は、はい。そうですか」


「今日はそのために少しだけお話ししましょう」


「わ、わかりました」


 彼女はすでに借りてきた猫の状態だ。いつも彼と話している彼女はどこに行ってしまったのか。その落差にセッティングと称し聞き耳を立てている赤石は悩む。


「まずはお互いの呼び方から変えてみない?」


「よ、呼び方ですか」


「そう、まずはお互い下の名前で、呼ぶのはどうかしら、同じ同性同士だし、クラスでは美羽と陽十美は、私のことを、成見って呼んでくれているわ。私はあなたを優幻ちゃんって呼びたい」


「おおおお、おまかせします」


 いきなりハードル高いところをぶっこんでくるな桜葉。だがここで下の名前呼びをはじめに、了承しておくとは作戦だ。さすがコミュ力お化け。今日昼間おやっさんのところで話を聞いたら、もうほとんどの常連と仲良くなってやがった、こいつのコミュニケーション力は確実にゲームならカンストしてやがる。


「やったぁ、じゃあ、今度からは優幻ちゃんって呼ぶわね、うふふ」


 うふふとか余裕ぶってやがるが、さっき屋上来るときにあれだけ叫んでて、今更大人ぶるなよ、遅いぞ。


 は、はい。よろしくお願いいたします。」


「優幻ちゃん、貴方やっぱりほとんど、メイクしてないのね」


「え? そうですけど。いつもは出るときにママが少しやってくれて」


「それに肌もすっごく綺麗」そういって彼女の手を自然に握る。


「え? そ、そうですか。な、なな成見さんのほ、ほうが、おお、大人でき、綺麗です」


 彼女も精一杯の努力で会話をつなげようとするが、どう聞いても壊れたレコードだ。


「いや、優幻ちゃん、見れば見るほど貴方可愛いわ」


 どんどんと彼女の顔は赤みを帯びてゆく。


「せ、先生!まだ準備は出来ないの」


 彼女は流石に限界が来たのか、彼に助け舟を要求した。


 まあ、最初はこんなもんか。


 振り返ってみると、桜葉もここまでと、サインを送ってくる。


「おし、いいぞ、こっち来てみろ」


  先ほどよりも少し彼女達の距離は縮まった、それは彼女達の物理的距離がそれを表していた。


 彼女達に囲まれ赤石は首をひねる。


「しかし、おかしいんだ。肉眼ではすこしは光る星を見つけられるのに、望遠鏡をのぞくと全く見えない」


「ピントじゃない?」


「なになに、先生、使うの初めてなの?」


 昼間は隣のビルを見ることは、出来たはずなのに、おかしい。


「いや、すこし待て、これをこうして」


「どう?先生」少し不安そうに小望月が彼の顔を見上げる。


「んー、角度的には見えるはずなんだが、どこだ」


 その時、背後の扉が元気よく開かれる。


「あー、いたっすよ美羽、もー、先生探しました!」


 そこにはコンビニ帰りだろうか、ビニール袋を持った蹟大美羽と、龍頼陽十美の二人の姿があった。


「お、龍頼? と後ろにいるのは蹟大か?」


「もー、だいぶ探したっすよ。わたちんが屋上まで上がる階段、教えてくれなかったら絶対わからなかったっすよ、もう。場所はきっちり教えてくださいよ」


「お、お前ら、どうしてここに」


「どうしてって、先生、今日部活するんでしょ!天じん学部!」


「陽十美、天文学部。恥ずかしいから間違わないで」


「ああ、たしかにするといったが」


「うわー、なんすかそれ」


 彼の疑問に答えることよりも、龍頼は三人の前にある、天体望遠鏡に興味津々だ。


「ああ、これか、これはな」


 疑問に対しては回答をあきらめ、龍頼に天体望遠鏡の説明を始めようとしたときに彼女の声が凛と響く。


「先生、方角が違うよ」


「え?」赤石は突然の蹟大からの指摘に、理解が追い付かない。


「予報では、放射点は南西の高い位置から言ってたから、こっち」


 そういって彼女は、赤石が机を用意したさらに向こう、屋上の入り口から見えない壁の向こうへ消えていった。


 訳も分からず、一同は彼女についていく。


 そして彼女が夜空に向かって指を差した。


「ほら。綺麗」


 その時、夜が泣いているように、赤石は見えた。


 東京の紺色の夜空に一筋の光のきらめきが流れていった。


「えっ」


「え、なになに」


「えーなんすか!」


 するとまた一つ、また一つと夜空に白い線を描くように軌跡が現れる。


 周期はバラバラで、一つ流れたと思うと、三つ同時に流れるものもある。長く、彼らを横断するように長く軌跡を残すもの、ほんの一瞬だけ直線が見えるもの、流星群が彼らの見上げる空には流れていた。


「綺麗」そう誰かがつぶやいた。


「なになに、これ!すごーい」


 あまりの綺麗さに、言葉を失っていると蹟大が話しかけてくる。


「先生、今日これがあるから活動日にしたんでしょ」


そういって彼女はスマートフォンの画面を見せてきた。そこには『今日は三十三年に一度の大流星群の接近日!ぜひ肉眼でも満点の夜空を見上げましょう!』と書かれていた。そして彼は思い出す今朝のお天気お姉さんが言っていた言葉を。『今日は蒼天の夜空に流星群が大接近の予定です!』


「あ、ああ、そうだとも。いやーまさか角度が違うとはなー、お前には助けられたよ」


「うわぁ、なにこれエモすぎでは」


「す、すごい」


 お各々が流星群の感想を述べている時、再び屋上のドアが開く音と聞きなれた声が聞こえる。


「すいません、遅れましたー、あれ?」


「あれ?誰か来た?」


 声の主がわかった赤石は、入り口までダッシュする。


「かえ、御伽噺!」


「あ、先生、もうみんな帰っちゃいましたかね?」


「いや、帰ってはいないが、家の方は大丈夫なのか! それにおまえその姿」


 彼女はいつもの私服ではなく、家で仕事をしている割烹着を着てきていた。


「お父さんが今日の話したら、お客さんも居ないし行けって、そこまで送ってくれて、それに、これも持たせてくれて」と、彼女は両手に持っている岡持ちを上に持ち上げた。


「あいつらは、とりあえずこっちだ」


 そう言って彼は彼女も、みんなも居る流星群の見える位置に案内する。


「あー、楓っちだー」


「こんばんは」


「みなさん、こんばんは。わぁすごく綺麗」


「その両手の奴、なんすか、なんすか!」


「ああ、これは皆さんに差し入れです」


 片手の岡持ちを地面に置いて、片方を開けて見せる、そこには幸来軒の一番人気メニューの中華そばが入っていた。


「うわ!美味しそう!あたしぺこぺこー」


「この時間に、ラーメンはちょっと」


 難色を示した蹟大に桜葉がアドバイスをする。


「ねえ、美羽。ラーメン×夜の学校×流星群×女子高生生って、誰もやったことないだろうし、とっても良いネタだと思わない?」


「それだ」彼女は指パッチンをして同意をする。


 それは、ありなのか? 優幻もラーメンに興味を示しているようだ。


「なあ、蹟大」


「なに」彼女はそっけなく反応をする


「この流星群は、あとどれくらい続くんだ」


「予報では、あと1時間って書いてあるね」彼女は再びスマートフォンで確認をしてくれる。


「おし、御伽噺のお父さんのご好意で差し入れをいただいた! これから夜食休憩をしようじゃないかお前達」彼は生徒全員に聞こえるように、声を張る。


彼女達は歓喜の声を上げた。


「龍頼!」


「はい!」


「あそこの机じゃたらないから、追加で運ぶの手伝え!」


「了解道中膝栗毛!」


 マジでそれ、はやってのな。


「桜葉、ここの机のセッティングは任せた、あと机は三脚持ってくる、ここはまかせた!」


「了解道中膝栗毛!」


 本当なんだな、それ。


 屋上からの階段を降りつつ、赤石は、龍頼に疑問を投げつける。


「なあ、龍頼」


「ん? なんすか」


「本当は、どうして今日来たんだ」


「本当は忘れてたんすけど、美羽ちゃんが部活行こうって誘ってきたんすよ」


「美羽が」


 こういった行事が嫌いだと思っていた彼女の名前が出たことに驚きを隠せない。むしろこいつが無理やり引っ張ってきたと思っていた。


「私達いつもガッコ終わりに、近くの公園でよくだべるんすよ」


 それは入学時に補導されるからやめろと注意しただろうが。


「そしたら、美羽ちゃんが、スマホ見せてきて、なんたら流星群が来るから、それ取りたいから高いとこ行きたいって言いだして、屋上じゃねってなって」


「なるほどな」


「で、来たっす」


 その後赤石は、三脚の机を下から運んできて、机を小学校で給食を食べるように合体させた。そして、四月の食育でも行わなかった、全員で一緒に『いただきます』をした。


 五月の今日俺たちは星が降る夜に、夜中の校舎でラーメンを食べた。彼女達は生まれも違えば、育ちもちがう、それぞれ学校に来ている理由だって違う、抱えている問題だって様々で、いつもはずっとバラバラだ。しかしこの瞬間だけはここにいる全員が俺は同じ気持ちを共有できたと思いたい。


 ラーメンも食べ終わり、一緒ではないが各々が好きなように流星群を見ている。


 問題児コンビは流星群をバックに、自撮り写真が撮れるか挑戦をしている。優幻と楓ちゃんは机の上で、なにか話している。と彼女達を眺めていると声を掛けられる。


「せーんせっ」


「なんだ桜葉か、どした」


「『どした』じゃないですよー、私吸いそびれちゃったんですけどぉ」そんな彼女の声もどこか満足そうである。


「ああ、元々はそんな目的だったか」


「『だったか』じゃないですー、どうするんですか」


「でも、良いもん見れたし、体験できたろ」


「そうですね。少し違うかもしれないけど、これが青春ってやつなんですかね」彼女達を眺める彼女の横顔はどこかうらやましそうに見える。


「ああ、これがお前たちの青春だ」自信満々に赤石決めて見せた。


「なーんか、良い感じに閉めてますけど、明日は吸えるんですか?」いつもと彼女は変わらなかった。


「はぁー。ほんとにジャンキーなんだから」


「明日は、どうにか埋め合わせするよ」


「わーい」


 そう言って彼女は問題児コンビと合体して姦し三人娘になった。


「私も混ぜてー」


「良いっすよー」


「じゃあ、いくよー」


 すると、今度は御伽噺が話しかけてきた。


「先生ー」


「どした、御伽噺さん」


「小望月さん寝ちゃいました」


 なに? いつも深夜アニメ見てるアイツがこの時間に?視線を向けると机で、寝ている優幻の姿が目に入る。


 おいおい勘弁してくれよ。


 彼は先ほどの龍頼で、会話で気になる事があり御伽噺にも質問をする。


「そういえば、お前もどうしてここにこれたんだ、屋上の道は知らないはずだろ」


「実は校門に渡辺さんが待っていて、四階の廊下前まで案内と、岡持ちを持つの手伝ってくれたんです」


「そうか」


龍頼と同じようだ。


「渡邊さんは、自分は帰るとおっしゃっていたので、彼女の分もありましたのでお渡ししました」


 手ぶらでラーメンだけ持って帰れって、それはそれでどうなんだ。


 時計を確認すると、もう良い時間になっている。いつまでも寝かせるわけにもいかないので彼女の体を揺する。


「小望月おい、起きろ」


 すると、寝ぼけているのか寝言が聞こえる


「ママ、今日は学校……楽し……かったよ」


 なんて満足そうに寝ていやがるんだコイツ。なれないことして疲れたんだな。


 彼は彼女を起こすのは後五分だけ待つことにした。


 楽しい時間は必ず終わりが来る


 流星群が見えなくなると、誰が、そうさせたわけでもなく、彼女達は再び先ほどの席に戻った。


「今日は天文学部、第一回の部活動によく参加してくれた、俺は」


 彼は、昔のように生徒たちを鼓舞しようとしたが、飾り飾った大人の言葉でなく、自分の気持ちをストレートに表現した。


「深夜の校舎に屋上で、星を見ながらラーメン食べるとか、なかなか面白い体験だっただろお前達」


 彼女達は各々に思ったことがあるらしく、その瞳は満足そうだ。


「どうだ、少しは面白かったろ、毎回こんな日はねぇけど、たまの時には、また集まって騒いでみるのも面白いかもな、あっそれと!」


 赤石は人差しを立てて。


「今日ここで起きたことは、秘密な」


「え?」


「え?」


「もう、アップしちゃったんだけど」


「なん……だと」


 姦し三人娘はいつでも俺の期待を裏切ってくれる。


「おい見せろぉ!」


 代表をして桜葉のスマートフォンでその投稿を確認する。


 そこには、#深夜にラーメン、#流星群、#夜に学校、#foodとタグが並べられていた。


「個人が特定できることは、あるのか?」


「友達なら変わると思うけど……」


 はぁじゃあいいか


「バレると俺が面倒な事になるんで、お前達よろしくな」


「なんでー」


「だってそうだろ、天文学部は深夜に屋上でラーメン食べる部じゃないだ」


「ぷっ……たしかに」黙っていた蹟大が笑っていた。


「じゃあ、今日はもう夜も遅い、ここの片付けは俺が明日やっとく、だから今日はこれで終わり解散!」


 これがこのクラスで初めての終わりのショートホームルームだった。

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