第6話 甘すぎる僕のお姉ちゃんの友達
「……やっぱり、
疲労困憊という様子の
そんな二人に囲まれながら、僕は
そして、少し坂を上ったところで、僕たちがこれからお世話になる校舎が姿を現した。
「ふふふ、これからは
ニコニコと隣で笑顔を向ける姉さんと違って、僕はため息をついて頭を抱えてしまう。
「……あのさ、姉さん。何度もいうけど学校では、あんまり羽目を外さないようにしてね」
「ん~?」
僕が何を言っているのか分からないというように、首を傾げる姉さん。
がっくりと項垂れる僕だったが、代わりに
「だから、必要以上に
「いや、
「
は、はい……よく分からないけど、ここは本能的に大人しくしておいた方が身の安全だと判断した。
「ダ~メ! いくら
「ひっ、独り占めって、そっ、そそそそんなつもりで言ったんじゃないからね!」
ううっ~、と獣のように唸ったあと、何故か僕に向けてキッと睨みを利かせる
僕、何も悪い事してないよね?
このままでは、僕に対して悪態の一つや二つ出てきそうなところだったが、
「…………絶対に、
最後のほうは、残念ながら上手く聞き取れなかったけど、おそらく僕に対する文句なので気にしないことにした。
でも、
「ふふ、少し早めに来たら面白いものが見れたわ。両手に花も大変ね、弟くん」
すると、クスクスと笑いながら、前から僕たちに近づいてくる人影。
「あ~、
にっこりと微笑む姉さんに対して、彼女、
「おはよう、
銀色のショートカットにカチューシャ姿。
身長は姉さんよりも一回り大きい。
スカートから覗く白くて長い脚は、芸術品のようであった。
何度か家に来て話をしたことがあって、僕も面識がある。
不思議な雰囲気を持っているけれど、優しい人なのだ。
「弟くん、遅くなったけど入学おめでとう。こんなに可愛い後輩ができて、私も嬉しく思うわ」
少しだけ口角を上げて微笑む
可愛い、と言われるのは僕にとってタブーの一つではあるのだが、
「ちょっと、誰? この人」
僕に耳打ちするように、不審げに
「おはよう、可愛い新入生さん。私は
「……
警戒心むき出しの猫のように、僕の背中に隠れるようにして名乗る
意外と人見知り体質なのだ。
しかし、そんな態度の
「私、この
自らの役職も名乗った
「ちなみに、弟くんの隣にいるこの子が、この学校の生徒会長よ。あんまり頼りになりそうにないけど、仕事はきっちりやってるわ」
「え~、酷いよ
「はいはい」
姉さんが異議を申し立てても、
「でも、弟くんも高校生なのね。制服姿もなかなか似合ってて、とってもいい男」
まるで僕を吟味するような眼差しが少し気になってしまうが、まぁ、大した意味はないだろう。
「これは、毎日抱きしめたくなる
……おいっ。
僕は情報の発生源と思われる姉さんを見ると、彼女は何故か「でしょ~!」と身体をくねくねさせて恥ずかしがっている。
ああ、もう駄目だ、この姉さん。
学校での姉さんの株価も、リーマンショック以来の大暴落を起こしてしまう日は近いかもしれない。
「あら、少し冗談が過ぎたかしら? いけないわ、弟くん。君をからかったつもりだったんだけど、君のお姉さんが餌に喰いついてしまったみたい」
言葉とは裏腹に、
「だっ、抱きしめるって!? ちょっと、変なこと言わないでよ!?」
そして、遅まきながら、僕の背中からひょいと顔を出している幼なじみが、先ほどの
すると、その瞬間――。
「フフッ、そうね、これも青春だわ」
まるで、新しい玩具を与えられた時のような顔で、
「なっ、なんですか?」
「いやいや、楽しみは後にとっておくわ、
しかし、
「ん? 私?」
「
「え~、もう少しゆっくりしてても大丈夫なはずだよ~?」
「いやいや、殊勝な生徒会長さんにはお仕事がいっぱいあるのよ。せっかく早く来てくれて、副会長の私も助かったと思っていたところなの。ひとまず、一度生徒会室によって、もう一度、今日の始業式の段取りを確認させて貰うわよ」
「ううっ~、鬼副会長~!」
「鬼で結構。生徒のために粉骨砕身で働くのが、我が日暮高校生徒会の教訓でしょ?」
そう告げると、
「うわ~ん、
まるで今生の別れを拒むように引っ張られていく姉さんを見送っていると、姉さんには分からないように、僕にウインクをしてくる
「……ほんっと、変な人ばっかり。
だから、何故僕のせいする。
それに、
「ふ~ん、庇うんだ、あの人のこと」
「いや、別に庇うって訳じゃないけど……」
「……そう、ならいいけど」
フンッ、と首を振って素っ気ない態度をとる
どうやら、今日は華恋のことを怒らせてしまう厄日らしい。しばらくは大人しくしておこう。
たしか、校舎の前にクラス発表の紙が貼られていると、学校から送られてきたプリントには記載していたはずだ。
しかし、
ヒソヒソと。
僕たちをチラチラ見ながら、周りの人間が囁く。
――さっきの人たち、すげー美人だったな?
――知らねーの?
――マジで!? オレ、生徒会入ろうっかなー。
――ってことは、その人たちと喋っていたあいつらって、何者?
……少し、目立ち過ぎたか。
「
「……
僕は
まるで、その場から逃げるように。
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