第13話 甘すぎる僕のお姉ちゃんとのバスタイム(中編)

 さて、ここで一応、前回のおさらいをしておこう。


 僕、天海あまみりくは、三歳年上の姉、天海あまみ紗愛さらと一緒にお風呂に入っています。


 以上、おさらい終わり。



 結論、世界がヤバい。

 というか、僕だけがヤバい。



 このままだと、僕は姉さんと一緒に浴槽に入ることになる。


 タオルも何もない状態で、真正面から姉さんの姿を見ようものなら、僕は間違いなく、色々とマズいことになる(自主規制)


 そんな危機から脱するためにも、僕は僕の戦いをしなくてはならない。


 姉さんがいるこのお風呂場から、エスケープする。


 これが、今回の僕の重要なミッションだ。


 頭の中では、某有名な映画のBGMが流れ始めてきた。


 とにかく、今は状況把握を優先させよう。


 現状、僕が浴槽にいて姉さんがシャワーをしている。


 身体も洗い終わり、あとはボディソープを洗い流してしまえば終わりというところまで来ている……と、音だけでなんとか判断した。


 おそらく、この推論は間違っていない。


 なんとしてでも、この状況から逃げ出さなくては。


「陸くん~、おまたせ~。もうすぐお姉ちゃんもお風呂に入るからね~」


「!?」


 しかし、僕がのぼせそうな頭をフル回転させていると、ついに、その時は訪れた。


 このままだと姉さんが浴槽にやってくる。


 姉さんの姿を見まいとしていたのに、僕の視界に艶やかな姉さんのつま先が映ってしまう。


 駄目だ!

 これ以上は、僕の中にある何か恐ろしいものが爆発してしまう!


 こうなったら……こうなったら!!


「ね、姉さん! やっぱり狭いから、一緒に入るのはやめよっか! そうだ! あはは! 僕、まだ身体洗ったりしてないんだった!! 姉さんがゆ~っくりお湯に浸かっている間に、僕はシャワーを使わせてもらうね!」


 僕は勢いよく浴槽から立ち上がり、絶妙なタイミングで姉さんと入れ替わるように浴槽から出ていた。


 こうすれば、僕は自分の姉と一緒にお風呂に入るという状況を回避できるはずだ。


 本当は、そのまま自分が出ていけばいいのかもしれないが、おそらく、それじゃあ姉さんは僕が姉さんを避けて出て行ってしまったと勘違いしてしまう可能性がある。


 そうなったときの姉さんの面倒くささといったら、弟の僕がよ~く分かっている。


 意外に傷つきやすい性格なんだよな……困ったことに。


 なので、ここで適切でWin-Winな関係を築くためには、



 ①姉さんは、僕と一緒にお風呂に入れたと大満足する。

 ②僕は、姉さんの身体をなるべく意識しないような立ち位置に移動する。



 ということが必要だ。


 僕が身体と頭を洗えば、また浴槽に入っておいでと言われるかもしれないけれど、そのときは「少しのぼせちゃった」とでも言って、出来るだけ姉さんに怪しまれないようにして離脱するのだ。


 そして、僕が恥ずかしがってお風呂から離脱したとも思われたくない。


 これは、なんとなくの理由でしかないんだけど『僕は、姉さんの裸なんてみても、全然恥ずかしくないんだからねっ!』と、言える行動を取らなくてはいけない。


 なんだか口調が僕の幼なじみにそっくりになってしまったが、ご愛嬌で。


 とにかく、努力が功を奏し、僕は先ほどまで姉さんが座っていたバスチェアにいて、姉さんは浴槽にいるという状況が出来上がった。


 つまり、入れ替わりが見事に成功したのだ。


 ちゃんと視線を向けられないので、あくまで気配だけだったが、浴槽のところで立っている姉さんも、しばらくすれば、ゆっくりと座ってお湯に浸かるはずだ。


「えっ? そうなの……だったら……」


 だが、心理戦は、姉さんのほうが一枚も二枚も上手だった。



りくくんの身体、お姉ちゃんが洗ってあげるね!」



 …………はい?


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