第2話 甘すぎる僕のお姉ちゃんとの朝ご飯
僕の姉さん、
何言ってんだコイツ、と、僕のことを可哀そうな目で見ることを承知で話を続けさせてもらうが、とにかく姉さんは僕を溺愛している。
いくら僕の身長がギリギリ150センチに到達した(自己申告)程度だからといって、ここまで子供扱いされるのは、至って不満だ。
ちなみに、姉さんは僕より十センチくらい背が大きく、とてもスラっとした体格だ。
これも僕が抱いているコンプレックスの一つなのだが、話が逸れてしまうのでここでは割愛させてもらおう。
ついでに、僕の背が小さいということも一緒に忘れてほしい。
とにかく、春休みの間は一度もベッドに入ってきたりしなかったので、さすがの姉さんも弟離れをしてくれたと思っていたのだが、油断は禁物だったようだ。
「えっ? 春休みもずっと一緒に寝てたよ~。いつもすっごく気持ちよさそうに寝てたから、いっぱい写真撮っちゃったよ~。えへへ~」
……マジか。
どうやら、僕が気が付いていなかっただけで、姉さんはずっと僕のベッドへ潜入していたようだ。
そんな姉さんはというと、鼻唄を交えながら、僕と自分の分の朝食を作っている。
学校指定のカッターシャツの上からピンクのエプロンをかけた姿。
キッチンから出てきた姉さんの手には、今まさに完成した熱々のホットサンドがお皿に載せられていた。
「はい、
言ってくれることは至極まともだが、普段の行動がちょっとアレな姉の至言に素直に頷けない僕だった。
今まで通り、姉さんに甘やかされた生活をしていると、僕はいつまで経っても大人にはなれない。
僕はもう、姉さんから甘やかされる生活から卒業する!
これが、僕が掲げているこれからの目標なのだ!
「あれ?
そう言った姉さんは、何かに気が付いたように、はっ! と声を漏らしてあわあわと震えだす。
「まさか、今日はご飯の気分だった!? ごっ、ごめんね、お姉ちゃん、気づいてあげられなくて……待ってて! 今からすぐにお米炊いて……!」
「あー、違う違う! そんなんじゃないって!!」
目に涙を溜めながらそう言ってくる姉さんに、必死に弁解する僕。
「ほっ、ほんと? お姉ちゃんのこと、嫌いになってない?」
「なってないよ……。それに、僕は朝ご飯はパンのほうがいい……」
「そっ、そっか! えへへ、お姉ちゃん、早とちりしちゃった。でも、どうして元気がないの?」
「別に、元気がないわけじゃないよ。その、僕も高校生になるんだから……」
「あ~、分かった。緊張してるんだね! 大丈夫だよ。
よしよし、と僕の頭を撫でる姉さん。
「姉さん! だから、そういうのはもう……!」
「あっ、
僕の反応で安心したのか、姉さんはまたにこやかな笑顔に戻る。
そのまま、姉さんはキッチンに戻って、僕と自分の分の飲み物を取りに行く。
姉さんはカフェオレを、そして、僕にはブラックコーヒーが入ったカップが置かれた。
「それじゃあ、食べよっか~」
定位置である僕の前の椅子に座って、向かい合って一緒に手を合わせる。
二人で「いただきます」と言って、僕は姉さんが作ってくれたホットサンドに手を伸ばした。
口に運ぶと、塩加減が絶妙な卵とベーコンの味が口いっぱいに広がる。
相変わらず、姉さんの料理の腕はピカイチだ。
普通にしていたら、きっといい姉なのだと思う。
でも、僕の姉さんはちょっと変わっている。
僕がホットサンドを食べている姿を嬉しそうに微笑んで見てくる姉さんから視線を外して、改めてそんな風に思ってしまうのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます