第25話 カワイイ先生と僕からの活動報告
「それじゃあ、掃除当番の人は自分の担当箇所に向かってくださいね」
「は~い、さよなら~、
「だから、
先生が必死に反論をするが、それを聞いてまた笑顔になったクラスメイトたちは、先生の前を横切ってそれぞれの放課後を過ごすことだろう。
我が1-C組のHRは、大方こうして終了する。
「ううっ~、このままでいいのかなぁ~」
頭を悩ませる先生に、僕のクラスメイトたちは容赦しなかった。
「いいの、いいの。先生は私たちのカワイイ先生なんだから」
「あ、ありがとう……ん?」
「じゃ、私たちは掃除に行ってくるね~、
「もう、だから……! 行っちゃった……」
色々な生徒から弄られて、
先生も色々と大変みたいだ。
肩を落とす先生に、僕は話しかける。
「あの……先生」
「ん? ああ、
先生は、落ち込んでいた表情から一変、少しだけ不思議そうな顔をして僕を見てくる。
そんな先生に対して、一応、昨日のこともあったので念のため報告しておくことにした。
「先生、僕、部活に入ることにしました」
僕が部活に入ろうと思ったキッカケは、
だから、先生にもちゃんと報告をしておこうと思ったのだが……。
「えっと、それで……」
あれ? このあと何を言えばいいんだっけ?
全然先のことを考えていなかったので、言葉が詰まってしまった。
しかし、戸惑う僕とは裏腹に、先生の顔が見る見るうちに明るくなっていった。
「そ、そうなの!? 良かったね、
僕の手を握りながら、飛び跳ねるくらいのリアクションをする先生。
いや、実際は飛び跳ねたりしてないんだけど、それくらい、先生は嬉しそうにしていた。
「あっ、そうだ。申請届とかは先生がちゃんと用意するからね。先生、応援するから!」
「は、はい……ありがとうございます」
まさか、ここまで喜んでくれるとは思わなかった。
だけど、こうして嬉しそうにしてくれるのは、何だがむず痒いところもあったけど、素直に感謝したほうがいいのだろう。
「それで、
先生の質問に、僕はすぐに答える。
「えっと、
「にんぎょう……、ああ、
「先生、
「ええ、彼女、ちょっと有名人だから」
少しだけ言いにくそうにする先生だったけど、僕が人形演劇部の部員になることが分かったからなのか、色々と話してくれた。
「
先生は、最後には悲しい声色になっていた。
「先生たちも歩み寄ろうとするんだけど、なかなか上手くいかなかったの」
確かに、初めて
そんな
そして、
他人の目を気にして話すほど、苦痛なことはない。
僕はそれを、自分自身でよく知っているから。
でも、その態度の裏には、きっと汐さんなりの理由があるんだと思う。
たった一日だったけれど、汐さんの瞳を見て話した僕は、そんな風に感じたのだ。
「でも、同じ学生の
そう言った先生は、どこか僕に期待を込めているようだった。
「それじゃあ、明日の朝までには部活に必要な書類はこっちで用意しておくわね」
先生の顔は、いつもの柔和なものに戻っていた。
よろしくお願いします、と僕は先生に伝えて、教室を後にする。
今日から僕も、部活動を開始する。
中学のときも、帰宅部だったので、ちょっとだけ緊張している自分がいた。
僕は意外と身構えると固くなるタイプなのだと、このとき初めて知ったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます