第二章 お姉ちゃんと僕と部活動
第16話 甘すぎる僕のお姉ちゃんとの距離
僕が
何か変わったことがあったのか、と聞かれてしまうと残念ながら僕の生活は、何一つ変わっていない。
もちろん、姉さんとの関係も同じ。
朝起きようとしたら、姉さんがベッドの中に入っていたり。
僕の制服姿を朝から何度もスマホで撮影したり。
お風呂に一緒に入りたがったり。
そんな姉さんを相手にするのも、僕の日常生活の一環だ。
「はぁ~~~~~~~~~~」
「うるさいわね、ため息は幸せが逃げるわよ」
昼休み。
机につっぷしてる僕に対して、
「どうせ、また『姉さんが僕を子供扱いする~』とかで、悩んでるんでしょ」
さすが幼なじみ。
よくわかっていらっしゃる。
他のクラスメイト達が、スマホでみつけた面白動画を見て盛り上がっている中、教室の端で大人しくしている僕たち。
おかげで、華々しい高校生活なんてあったもんじゃない。
だが、それよりも深刻なのは、全く成長しない姉さんとの距離感だ。
「なぁ、
「うーん、身長伸ばすとか?」
それができたら苦労しないよ。
僕だって好きで150cm(くらい)で止まっているわけじゃない。
「そういうのじゃなくて、こう……精神面で大人だってわかってくれたら、姉さんもある程度、距離を離してくれるんじゃないかな?」
姉さんが僕に構うのは、おそらく、まだ姉としての責務を果たそうとしているのだろう。
結果、姉さんは僕を目いっぱい甘やかす。
それ自体は、姉さんの優しさであることは重々わかってはいる。
だけど、いつまでも姉さんに甘えているわけにはいかないのだ。
「精神面……ね」
じゅるるー、と今までよりも早いペースでパックジュースを飲んだ
「か……彼女、とか……つくればいいじゃない?」
「ん?」
「だっ! だから!
「彼女か……」
たしかに、
だが……。
「無理だよ……彼女どころか、友達だって
恋人ができるなんて、僕の身長が180cmのモデル級になるくらいありえない。
自分で言ってて悲しくなるけれど、それがこの世の現実だ。
「で、でも……意外と、身近にいたり? 案外、自分が気づいてないだけとか……」
なんだ? 今日の
一体どうしたのかと、逡巡する僕。
身近にいる人……。
ずっと僕の傍にいてくれた人って……
「あっ!」
と、僕はある可能性に気付いてしまう。
少し声を上げてしまったからなのか、座っていた
「もしかして、
「なっ、なによ……」
僕はゆっくりと、彼女に告げる。
「えっとね、
生徒会長である姉さんとの関係で、僕も少し彼女と交流があるのだが、彼女と恋仲になるなど、僕のような人間では断じて成立しない。
「は、はあっ?」
しかし、
「あれ? 僕、てっきり
入学式では、
「ち、違うわよ! なんであたしが、あのちょっと美人だからって
ふむ。どうやら、僕の的は外れてしまったらしい。
えっと、でも、だとしたら残っているのは……。
ああ! あの人か!
「もしかして、ニコさんのこと? でも、ニコさんはアイドル的な可愛さがあるかもしれないけど、それこそ僕たちはお客と店員っていう関係で……」
「もういいわよ! バカ
バンッと、何かが爆発した音が教室に響き渡る。
幸い、中身は全部飲み切っていたので二次災害は起こらなかったけど、その元凶である
どうやら、また僕は何か華恋を怒らせることをしてしまったらしい。
「……はぁ」
もう一度、小さなため息を吐いたが、今度は声をかけてくれる人はいない。
そのことに寂しさを覚えてしまうのは、少し我が儘なのかもしれないと思う僕だった。
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