第89話 異世界最強の武術

「最悪の時期は乗り越えましたね。順調に組織は拡大。そのうち建国もできそうな勢いです。食料も情報も行き届いていますので」


 結葉さんが結社とその家族の生活状況を説明し終えた。続いてあまねさんが黒板の前に立つ。


「先日まで結葉さんの住んでたところにいましたが寒かったですね。それはさておき戦況は順調。前線は東の魔王の居城を包囲することに成功しました。ピヨピヨ」


 すばらしい、ブラボー、様々な歓声が上がり、これでやっていけそうだと全員がほっとした。さらに葉月さんが壇上に来た。


「攻城戦の計画もほぼできた。進軍時に気付かれないよう意図しない物音を全てシャットアウトするカッパスーツの作成にも成功した」


 勝ったな。と全員が確信した。


 が、そこでせみさんが最後に口を開いた。


「ところで、この世界の強さランキングを発見しました」


 石板をかかえてせみさんがやってきた。


「この世界は、やってる武術で強さが決まります。ここにそのリストが書いてあります。まず最下位が核兵器」


 会議に参加していた連中がざわめく。


「武術じゃなくない?」


 あむりんがツッコんだ。


「いえ、核兵器は基準値です。それより強いのが二刀流」

「核兵器より二刀流が強いの? じゃあ団長と机さんがいるから勝ったも同然だ」


「間違えた二天一流」

「高無先生って転生してた!?」


「残念ながら海外出張でTwitter見てなかったようです」

「じゃあそれより強いのは?」


「骨法です」

「やったたくさんいる!」


「いませんよ」


 横からKFCさんが口をはさんだ。


「えっ? だって骨法隊は?」

「あれはファンクラブなので、隊に骨法を使える人は一人もいません」


「うわ、そっか……あ、じゃあ無職柔術師範も別の種類の骨法使えるんじゃない?」

「就職したのでここにはいないですね」


「無職じゃないじゃない!」

「彼は無職の柔術師範ではなく、無職柔術の師範なのです^_^」


「ちなみに骨法より強い武術もあります」


 せみさんが石板を読み続ける。


「なに?」

「空手です」


「やった! 今度こそたくさんいる! 巴会さんとか菅さんとか!」


「しかし神の手の称号が必要」

「かみのて?」


「ディバインハンドと読むらしいです」

「どういう意味?」


「この世界の辞書によるとメロン熊という意味です」

「わけわかんない却下。つまり事実上、最強は核兵器なんですね?」


「そうですね。ディバインハンドか、骨法か、二天一流が存在しない限り」


 ふむ。と全員がそれぞれに納得した様子。ところがそこに、秋空を名乗るウサギが飛んできた。


「ご注進です。東の魔王の正体がわかりました。とりあえずシチューを食え」

「いらないけど誰だったの」

「がらんどさんでした」


 しん、と会議室が静まり返る。「終わった」と、誰かがつぶやいた。 


【登場人物紹介】

 

結葉さん:創作クラスタ(異世界ファンタジー他)

異世界の歴史学教師。新婚。極寒の大地で子供たちの指導に当たっていたが戦乱に巻き込まれる。ちなみに新婚。生徒を引き連れて流浪の生活を送り、王国国境まで進軍した結社に合流して保護を求める。なお、新婚でもある。

--

魔王の娘に花束を~双輪の剣に託した未来~

https://kakuyomu.jp/works/1177354054881456726


あまねさん:創作クラスタ

異世界の東方に住まう話す鳥。おとなしめ。東の魔王復活の予兆にいちはやく気がつき、結社の駐屯地に飛び立つ。結社はドラゴンを中心とした魔王の軍団に苦戦していたが、異世界に転生した者は全能力が強化される異世界三倍段というチートがあることを伝え、大きな勇気を与える。

--

散画追集封妖譚

https://kakuyomu.jp/works/1177354054883666460


葉月さん:創作クラスタ

異世界でバイオを研究しキメラを開発した魔導士。間違えて本人も装置に落っこちてしまい、河童となって甦る。水中戦と壁登りを得意とし、魔王城天守閣の堀を渡って一番乗りを達成する。

--

https://www.pixiv.net/member.php?id=3891371

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