第67話 異世界ドタバタ紀行

 かくして一行は異世界の捜索を開始した。文明はそこそこ発達しており、産業革命は迎えていないが中世ヨーロッパよりかなり清潔であり、要するにナーロッパであった。カクヨムでこの単語使っていいのだろうか。トリに突っつかれたりバーグさんに字引きではたかれたりしたらどうしよう。


 さてそんな中、一行は各地に分散し、メンバーの一部は葛西先生の屋敷を訪問していた。


「この異世界では、既存の武術や格闘技では必ずしも身を守れません。そこでこのような書籍を書きました。間接護身入門です。驚かれる方もいらっしゃるかもしれませんが、お付き合いいただけると嬉しいです」


「某が見る限り、これは兵法書ですね」

「異世界にもあるのか~ハァハァ」


 ランさんと西紀さんがのぞきこむ。どうやって使うのかと持ち上げ、ぱらりと真ん中のページを開けた。


 直後、書籍から閃光。白。爆音。はるか彼方の山脈がえぐれてぽっかりと風穴があいた。


「このような護身術の達人になっていただきたいと考えています」

「これは強いね」

「やっぱ攻めの姿勢だなあ、大事なのはハァハァ」


  ※※※


 その一方、古月さんは資金調達のため、別の異世界の住人を訪ねた。


「お金の無心に参りました。断ると斬ります」


「はい、かわのです! この世界はAWSによってつくられたクラウド環境なのでセキュリティ設定をお忘れなく! 弊社の迅速で完璧なコンサルティングサービスをよろしくおねがいします!」


「どうして私の発言はギャグシーンにしか使われないのか」


  ※※※


 さらにその一方、十五さんと桐華さんは得意の聞き取りを続け、この世界は3人の賢者がいるという真実を解明した。その1人が誰もが知る四角形、みんみんぜみである。


 草の庵の中、十五さんが慎重に挨拶を交わして、肝心の質問に入った。


「あなたが3人の賢者の一人のせみさんですよね」

「そうなんですか! それは光栄ですね」


「自覚ないのか……」

「いや、3人と言いますけど、私しか出てこないですよ多分」


 意外な言葉に十五さんが口を結ぶ。かわって桐華さんが質問に回った。


「なぜですか?」


 冷汗をおさえてせみさんに訪ねる。


「養徳継心さんとちていのきさんがイイネしてないからです」

「見た目は冷静、心はテンパる事案発令」


「予想が失敗するとこういうことになるから厄介ですね」

「もういっそのこと僕が賢者になろうかな(笑)」


「ワロスwww」


 せみさんと桐華さんが乾いた笑いを交わす。あきれ果てて、草のベッドに十五さんが寝っ転がった。


「もう真面目に考えるのやめよう。婚活パーティーになったら呼んでください」


【登場人物紹介】


 葛西さん:武術クラスタ(競技推手ほか)

 異世界ファンタジーで現世の武術だけでは切り抜けられないと提唱し、直接攻撃を一切必要としない異世界武術、間接護身と呼ばれる魔術を編み出して一切のリスクを排除し、パーティをたびたび救う。


 かわのさん:セキュリティ・クラウドクラスタ

 結社構成員の中で武術家でも作家でもない唯一のメンバー。恐ろしく話術が巧みで、大魔王と交戦中の帝国と交渉、結社の活動資金をほぼ独力で調達し、伝説の商人として「かわのバーグ」を建設する。


 せみさん:武術クラスタ(主に古流剣術・柔術など)

 異世界武術の文献の秘密を知る三博士の一人。とてつもない博覧強記で異世界の武術に関するほぼすべての情報を網羅しており、伝承の真偽に厳しい。世界の調和をもたらすには素手でドラゴンを倒すこと必要があると伝え、結社一同を騒然とさせる。

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 独断と偏見による日本の剣術史

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054887946957


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