第58話 謎の武術
一方、乱戦が始まった渋谷区では、軍事組織と化した抵抗勢力が魔族に圧勝を繰り広げていた。なにしろこのあたりから武術クラスタが次々にイイネをクリックし始めたのである。まさか道場の指導者クラスの方までがアカウントを知っていると思わなかったので、さすがの作者もビビった。
「日本泳法、ビッグウェーブが来てる」
カナヅチの魔族たちが次々に沈んでいく中、嘉陽さんに水泳を習った人々が次々に命を救われていた。
「夜の109は何時も綺麗なのです」
インスタ映えする写真を背に、MBCさんがナイフを振るった。
「熱中症指数計がご入用の方はこちらまで!」
まるkさんが棒とタオルで怪物をなぎ倒しながら市民を救っていく。
そのとなりではあおいさんがアルマジロみたいな魔物を蹴り飛ばしていた。助けられた子供が不思議そうにその姿を見て聞く。
「魔物蹴って痛くないの?」
「痛いか痛くないかで答えるとすれば、そうですね、気持ちいいです」
しかしそんな中、倒壊したと思われた都庁ロボがのそりと立ち上がり、最終兵器を繰り出そうとしていた。
「あれだけは素手じゃどうにもならないですね。最終兵器埼玉はすでにブームが終わってしまったし」
そうあおいさんがつぶやいた時。まるkさんの喫茶店でなぜか抹茶を飲んでいた武士風の男が立ちあがった。戦えるようではあるが、武術クラスタではない。腰には恐ろしく巨大な筆を一本携えていた。
「骨法隊が珍しく撤退したぞ。あんたも退却にあわせて引いたほうがいい」
逃げていた市民が和服に声をかける。しかしそう聞いても編み笠を深くかぶった男は動じることなく、目を巨大な建造物へ向けて襟を正した。
「宛のない旅は、辛い。そして、孤独だ」
言って男が腰に手をやった。
「美味しい茶だった。末期の茶にしても構わぬほどにな」
「なにを冗談を」
侍風の男は答えなかった。ただ、胸のうちにつぶやいた。生きる為に必死だった頃の豪気はどこに消えたのか。それほど、今の生活が惜しいのか。
(敵は東京都庁)
直木流創作術門下、筑前筑後。
彼には勝算があった。
【登場人物紹介】
筑前さん:創作クラスタ(時代劇・歴史)
九州の武芸者風創作者。直木流創作術と呼ばれる謎の技を使う。その実力にも関わらず抵抗勢力下では冷遇されていたが、都庁ロボが復活した際に筆一本で立ち向かうことを決意する。仲間には無謀と呼ばれたが、彼には勝算があった。
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それは、欲望という名の海
https://kakuyomu.jp/works/1177354054885223644
嘉陽さん:武術クラスタ(日本泳法、フィリピン武術カリ、薪伝鄭子太極拳)
日本泳法の指導者。都庁ロボによる地割れと堤防決壊で水害が続発する中、水没した家屋から多くの人命を救い、一躍時の人となる。
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http://mukairyu.seesaa.net/
MBCさん:武術クラスタ(Martial Blade Concepts)
前線で活躍する武術家の一人。数々の実戦を経て、結局魔族のボディに拳銃弾2発では止まらないので、抵抗組織には近接格闘も必要であると結論付け対魔族格闘術(自己責任でメガネ可)を創始し、同調した抵抗勢力が全員メガネをかけ趣旨と全く違う組織が出来上がる。
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https://www.facebook.com/groups/MBCJAPAN/
まるKさん:武術クラスタ
棒とタオルを駆使した全く新しい紅茶を編み出し、壊滅した東京で喫茶店を始める。戦場が夏になりバタバタ味方が倒れる中、熱中症指数計を配布して多くの命を救う。
あおいさん:武術クラスタ(天真館空手道連盟)
道着でできる空手家。この集団にはそもそもかなり多い空手家の一人だが、分身やグルグルパンチ、ジャーマンスープレックスなどが入ってくるので実は忍者でカンフーでプロレスなのかもしれない。襲来した都庁ロボに対抗すべく最終兵器埼玉を起動するべきか思案している。
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