第60話 勝利は目前

「下がれ! モノリスが命中するぞ!」


 誰かが叫ぶよりも早く、複数の黒い黒板(冗長な表現)が都庁に命中した。なぜかすべてに「天気の子はいいぞ」と書かれている。イルシスさんが召喚したのだろう。


「魔族じゃなきゃ、友達になれたのかもな」


 筑前さんがつぶやいた。彼が巨大建造物に書いたマルとバツは一見して羽子板の罰ゲームのようだが、これに向かって黒い黒板(同じ意味の言葉の繰り返し)が殺到していくという理屈だったのである。階段のように積み重なった黒い黒板(不要な形容詞)に、筑前さん伝家の毛筆を譲り受けたmuyaさんが駆け上がり、頭部にそれを投げつける。


「かかれ!」


 さらになかいさんが叫ぶと配下のゾンビが建物に殺到した。ゴリ押しにゴリ押しを重ねたようにしか見えないが、とにかくついに都庁は力尽き、灰となって消え去った。都の記録とかも一緒に無くなったので、地味に後から響きそうだ。


「ついにやったか」

「中身が問題っすね」


 ランさんとショーグンさんがつぶやいた最中。箒にまたがり、ついに黒幕、赤坂ぱとりんが部下を引き連れて現れた。隣のドローンによしみんも乗っている。


 あむりんと美少女が瓦礫の中から空を見上げる。


「ああいう容姿の人だったんだ」

「一度も会ったことないから実在しないのかと思ってました」


 大空へ幻灯のように魔女の微笑が浮かぶ。赤い唇が動いた。


「そろそろ秋になりましたのでセーターを出していたのですが、おかげ様で熱い紅茶がかかってしまいました。そこで御来賓諸兄には、丁重なお礼を差し上げようかと思います」


「ぱとりん、ティーカップを運んできたよ」


 隣にひかえるよしみんがつぶやくや、空に浮かんだ飛行船のように巨大なティーカップからぐらりと傾く。熱湯が濁流のように降り注いだ。


【登場人物紹介】


イルシスさん:創作クラスタ(SFほか)

東京生まれ東京育ちの宇宙人。同居人が少し変わりものである。二進数の世界からモノリスを召喚、都庁ロボに叩きつけて大ダメージを与える。

--

わたし、‘わたし’、“わたし”。

https://kakuyomu.jp/works/1177354054881102958


muyaさん

陸上選手。競技中にグランドがぶっ壊されたのをきっかけに抵抗勢力へ参加。都庁ロボと一進一退の攻防を繰り広げる筑前さんから毛筆を譲り受け、イルシスさんの召喚したモノリスを駆けあがり必殺の投擲で命中させ、ついに都庁ロボを倒壊させる。


なかいさん:創作クラスタ(現代ファンタジーほか)

休憩中の高校生。故郷でなじみが深かったゾンビを従えて一路東京を目指すが、多くの話を聞いていくうちにこれは規模の大きなデスゲームなのではないかという事実に気がつき、最初から死んでいるゾンビならなんとかなるだろうと思い始める。

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ムラオカ・ゲーム

https://kakuyomu.jp/works/1177354054882633976

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