仲良しセーラー服

 胸に槍が刺さったまま仰向けに倒れている潰鬼。

 その潰鬼に寄り添い泣きじゃくるラシーカ。その潰鬼の装甲の隙間から蒸気が漏れているのをララは見逃さなかった。


「おい。潰鬼。死んだふりは止めろ」

「え?」


 驚いてララの方を見るラシーカ。黒剣にもバレているのだろう。ニヤニヤ笑っている。胸の槍を自身で引き抜き、起き上がる潰鬼。その胸の穴には黄金のコアが覗いている。


「面目ない。不意を突かれたとはいえ、一時的に行動不能となってしまいました。以後はララ様の盾となり、また、いかなる脅威をも排除することを誓います」

「うむ。貴様の覚悟受け取った。当面の責務としてこのメカチンゴンの機能停止と解体に関する補助を命じる。主にこれを軍事利用しようと近づく輩を排除せよ」

「了解しました」

「良い返事だ。ここは任せたぞ」

「はい!? ララ様は他所へ行かれるのですか?」

「当たり前だ。部下の救出へと向かう必要がある。次はエルダー・ドラゴン・ハイランダーだ。そこに囚われている可能性が高い」

「私は置いてけぼりでしょうか?」

「貴様を信用しているからここへ残すのだ。金森一人では荷が重いだろう」

「はい。承知しました。ところでラシーカさんは?」

「連れて行く」


 その瞬間、真っ黒な潰鬼の表情がさらに暗くなった。どうやらラシーカと離れるのがご不満らしい。


「潰鬼どうした。不満なのか?」

「いえ。そうではありません」

「心配するな。部長にも残ってもらう」

「うむ。無人機部隊の指揮と撤収もせねばならんからな」


 ラシーカとシルビアを交互に見つめる潰鬼だった。その態度から、潰鬼はラシーカの方が圧倒的に好みであることが伺えた。


 不満をくすぶらせている潰鬼を放置し、ララとラシーカは次のコロニーへと向かう。シルビアの調査により、誘拐された面々はここシーマンからエルダー・ドラゴン・ハイランダーへと向かった事が判明しているからだ。

 転送ゲートへと向かう途中でラシーカが立ち止まった。


「ララちゃん。その服ボロボロですね。着替えませんか?」

「それもそうだな。お前も水着では不味いだろう」

「えーっと。不味いんですかね?」

「一般論ではな。プールや海水浴の時以外では水着を着用しないのが当たり前だ」

「なるほど。ちょうどお店が空いてますね。入りましょう」


 何気に入った店。しかし、メカチンゴン来襲に備えて皆が避難していたのに営業中の店。

 ララが不審に思うのは当然なのだが、そんな事はラシーカには関係が無かった。


「キャー。これ可愛いですー。セーラー服が一杯。どれにしようかな?」

「待て、ラシーカ。ここはいわゆるブルセラショップではないのか? 他の店は全て閉鎖中なのにここだけ営業している点も不気味だ」

「関係ありません。可愛いは正義。さあララちゃんもどれか選ぼうよ!」


 強引にセーラー服を着せられるララ。店主らしき老露婦人も笑顔で対応してくれた。話を聞くと、元々はコロニースクールデイズで学生服専門店を営んでいたらしい。ご主人の死後、ここシーマンに引っ越してきたのだという。海辺でのんびりと暮らすことが夫婦の夢だったらしい。彼女は彼の遺志を継ぎ、ここで営業しているのだという。


「何があってもお店は休まない。これが主人のモットーだったのです」

「なるほど、これでいい」


 老婦人の身の上話に感化されたのか、ララはセーラー服の購入をあっさりと認めてしまった。ラシーカもララと同デザインのセーラー服を着て、至極ご満悦のようだった。


 二人は手をつなぎ転送用のゲートへと向かう。

 転送専用のコンテナに乗り込み、転送された。


「一瞬だな」

「ええ。魔法のようです」


 検査担当の係官へ身分証を見せるララ。

 係官は背筋を伸ばし、見事な敬礼をする。

 

 この態度で、ララの持つ特別な身分証にかなりの重みがあることが伺える。現場の職員は全て整列し敬礼する。しかし、そこに乱入してくるものがあった。


 それは複数の触手マシン。

 直径五十センチメートル程の本体から、数十本の触手が生えて居る。長さはそれぞれ十数メートルあるだろうか。


 その触手が転送ゲートの係官に絡みつき捉えていく。


「グハハハハ。待っていたぞララ室長。この触手の餌食にしてやる。グハハハハ」


 壁を破壊し侵入してきた人型兵器。

 その頭部のコクピットには見知った顔がいた。


 ララ達は触手と人型兵器に包囲されてしまったのだ。

 

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