唐突な挑戦状☆ターゲット「vs仇為す鋼達☆潰鬼」

「ララちゃんには手を出させない。私がお相手します」


 突然、両手を広げララの前に立ちはだかったのはラシーカ。難しい話をしている時にはなりを潜めていたらしい。体操服とブルマ姿の豊満女子が胸を振るわせながら叫んでいる。


 それを見た窓の外の黒い顔が何故か赤らんだように見えた。


「私は……弱いものいじめは嫌いなのだ。豊満な少女よ。そこを立ち退きなさい。貴方の様なきょ、きょ、巨乳美少女の出る幕ではない」

「何よ。ララちゃんの様な華奢な女の子に手を出すなんてそれこそ弱いものイジメじゃないの。この卑怯者!」

「それは違うぞ、きょ、きょ、巨乳少女よ。私は一人の格闘家として、そこにいる帝国最強と言われている少女と戦いたいのだ。彼女は一対一の格闘戦では負けたことがない。しかも、10m級の人型機動兵器と対戦しても余裕で撃破する豪傑なのだ」

剛尻ごうけつ? こんな可愛い人に向かって何言ってんの? もう怒った。私が相手してあげる」


 今にも外へ飛び出しそうなラシーカの肩を押さえ静止するララ。首を横に振っている。


「ラシーカ。ここは私に任せてくれ。貴様の名は?」

「我は潰鬼かいき、十二鬼神が一人潰鬼だ」

「資料で見たことがある。“仇為す鋼”の異名を持つ連中の一人か」

「その通りだ」

「エレベーターで下に降りる。おとなしく待っていろ」

「承知した」


 空中に制止していたであろう潰鬼は降下し見えなくなった。ララとラシーカはエレベーターへと向かう。金森とフーダニットもエレベーターに乗り込もうとしたがララは制止した。


「ここで待っていろ。直ぐに片付けて戻ってくる」

「分かりました」


 不安げな金森の顔をエレベーターのドアが塞ぐ。その途端、ラシーカはララに抱きついた。


「ララちゃん。本当に大丈夫なの? 無理してない?」

「ああ、問題はない。私の本職はアルマ帝国の皇帝警護親衛隊隊長なのだ。心配しなくていい」

「でも……」

「では、私がピンチになった時には遠慮せず助けに来てくれ。これでいいな」

「きゃー。わかりましたぁ!」


 さらに力強くララを抱きしめるラシーカ。ララをその豊満な胸に挟み込み、グリグリともみくちゃにしている。


「貴様の胸はある意味強烈な破壊兵器だな」

「どういう意味でしょうか?」

「さっきの潰鬼を見ただろう。アレは巨乳マニアだ」

「どうしてわかるの?」

「それは、貧乳になると理解できる話だ。お前には無理かもしれない」

「ララちゃん意地悪う」

「まあ、奴の意識には創造主のエロネタが一部混入していることは確実だ。それが何と言うか、露骨な恥じらいとなって表現されている所が笑える」

「そうかな?」

「つまり、お前の巨乳で簡単に懐柔できるんだ。ラシーカ」

「そうなの?」

「そうだ。だから、ああいうセクハラ馬鹿はぶん殴って鼻っ柱をへし折っておく必要がある。甘やかしていてはロクなことがないぞ」

「胸で懐柔できるけど、それしないでぶん殴るの?」

「そうだ」

「それは、私が恥ずかしい思いをしなくて済むようにっていう気づかいなのかな?」

「そういう事だ。着いたぞ」


 最上45階から一気に降下した。

 ロビーには警官隊が控えており、また外ではSAT部隊がアサルトライフルを構えて展開していた。


 その中央にいるのは全長18m級の人型機動兵器。

 黒色の機体に赤いラインマークが目立つ。肩のエンブレムは黄金の握り拳だった。


「よく来たララ・バーンスタイン」

「拳に自信があるようだな」

「勿論だ。私はこの拳で私の存在を全宇宙に知らしめるのだ」


 全長18m級の巨体が高らかに叫ぶ。

 しかし、ララは不満そうに首を傾げる。


「私はそんな事には興味がない。貴様とやり合う事に意義を感じない。さっさと立ち去るのが貴様にとっての安全であり安心だと思うぞ」

「私は私の力を世に示す。これが私の存在意義なのだ。ララ・バーンスタインよ。嫌とは言わせぬ」

「ならば条件を示せ。私が勝利したならば何を得るのか」

「なるほど。ララ姫よ、それならば私が勝利した暁に、貴殿が差し出す宝物・財宝があるのか」

「この娘だ」


 ララはラシーカの背中を押し、一歩前に出す。その瞬間、黒色の潰鬼の装甲が赤く発色し、頭頂部や胸部から湯気を噴き出した。ラシーカは不満そうな表情でララを見つめるが、ララは片目を閉じて納得させる。


「わ、わかあっったた。では、き、貴殿が勝利した暁には私の全てを貴殿に捧げる。しもべとして一生こき使うがいい」

「それでいい。勝利条件はどうする。片方が戦闘不能となった時で良いな」

「ああ、構わない。それは生死を問わない事とする」

「貴様の生死はどう判断するのか?」

「胸の中央に心臓がある。これは古代の永久機関だ。ここを破壊しない限り私は再生できる。逆にここを破壊されれば活動は停止し再生はされない」

「ほう。装甲を破壊しても再生されると言うのか」

「戦闘中に即再生できるという様な便利な機能ではなく、相応の時間は必要だ。仮に私が死んだとしても、私の体は現代において失われた技術で構成されている。これを取得するだけで無限の財産を得る。私を殺した方が儲かるぞ」

「なるほど、ところで貴様はその図体で私と戦う気なのか? これだけ体格差があると、勝っても自慢にならないだろう」

「それもそうだな。ではなるべく小さく再構成しよう」


 潰鬼の装甲は黒色の砂と化し、付近を竜巻のように舞う。地上十数メートルに浮遊する黄金に輝く心臓は、当初は2m程度の大きさだったのだがそのサイズを縮小し、直径20㎝程度まで小さくなった。

 その心臓はララの目の前に降下し、黒い粒子が再び渦を巻きながらその心臓を包み込む。そして黒光りする装甲が再構成されていく。


 ララの目の前には身長が180㎝程度に縮小された潰鬼が立っていた。


「これで満足かな。ララ姫よ」

「ああ」


 二人は拳を合わせてから構える。

 生身の人間と古代に制作された人型兵器の格闘戦が今始まった。

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