決戦☆再生海獣メカチンゴン
潜水艦の艦首と
それは爬虫類の頭部のようであったが、首から上が正面、即ちララ達の方を見据えた。
「ぽこぽこぽこぽこ」
甲高い鳴き声、とても海の大怪獣とは思えない可愛らしい鳴き声だった。
メカチンゴンと名づけられた巨大サイボーグ兵器。どこかの怪獣映画にでも出てきそうな巨体が徐々にその姿を現してくる。
全身は焦げ茶色で頭部は黒色。そして全身に金属製の突起がある。全体のシルエットは二足歩行をするトカゲと言ったところだろうか。
「ラシーカ!
「分かりました!」
「承知しました!」
波打ち際で遊んでいた二人が元気のよい返事をする。
ラシーカは眩い光芒に包まれ、真っ赤なドラゴンへと変貌を遂げた。そして潰鬼も全身を粒子化し、その体を最大サイズに再構成していく。
全高約40mのメカチンゴン。その前に立ちふさがる真紅のドラゴンと黒色の人型兵器。しかし彼らは18m級であり、そのサイズはメカチンゴンの半分にもならない。
「手筈通り内陸部へ誘い込め!」
ラシーカは真紅の翼を広げ大空へと舞い上がる。潰鬼も背負った飛行ユニットの翼を開き上昇していく。先ずはラシーカがその口より灼熱のブレスを吐き出した。ブレスはメカチンゴンの左後方の海上へと突き刺さり、巨大な水蒸気爆発を誘発する。
「ぽこぽこぽこ」
可愛らしい甲高い声で叫ぶメカチンゴン。その巨大な口を開いて幾条もの火線を吐き出す。それは数十のロケット弾だった。
ラシーカの前に潰鬼が躍り出る。潰鬼は両掌から巨大な光球を打ち出す。光球とロケット弾は空中で衝突し、大爆発を起こした。
爆風がララと金森を襲う。金森はララに引き倒されうつぶせにさせられていた。
「すごい威力ですね」
「ああ。通常の軍艦なら一撃で消し飛ぶだろうな。移動するぞ」
「はい」
ララと金森は砂浜の脇にある森へと走っていく。
ララ達はメカチンゴンの現れると予想された島に陣取っていた。この島は概ねひし形といった地形であった。ララ達がいるのは南東の砂浜。その北東側と南西側にそれぞれ数件のホテルが並んでいる。島の中央は森林地帯となっており、反対側、すなわち、北西側に大規模な浄水プラントがある。ラシーカと潰鬼に牽制させ、メカチンゴンをホテルではなく浄水プラントへと誘導する作戦なのだ。もちろん、浄水プラントまでの森林地帯でメカチンゴンを仕留める算段であることは言うまでもない。
「上手くいくのでしょうか」
「奴は破壊の権化だと聞いている。巨大な人工物、大規模な浄水プラントは格好の餌になるはずだ」
「はい。それはそうでしょうが、何故、メカチンゴンはプラントの反対側から上陸しようとしているのか分かりません」
「それは奴が阿呆だからだ。別の言い方をするなら馬鹿作者の都合(笑)」
「……言って良いのですか?」
「良いに決まっている。私には空中戦やら水中戦は無理なのだ。地上でないと実力を発揮できない。その為に馬鹿作者が合理的な理由を考えるのだが、それは奴の上陸地点が偶然プラントの反対側だったという事だ」
「安易ですが……、喋らなかったらバレなかったのでは?」
「構わん。走れ、上陸してきた」
ラシーカと潰鬼は、彼らの持つ遠距離攻撃を使いメカチンゴンを上手く誘導している。そして、ララと金森が森に入っていく。すれ違いに出て来たのは十数両の戦車だった。予め森の脇に潜ませてあった。
旧ソ連製のT-34-76とT-34-85、米国製M4と17ポンド砲搭載のファイアフライ……のような旧態依然とした大戦期の骨とう品戦車が何故か無人のAI操縦で進撃する。各戦車が一斉に射撃を開始した。
標的が巨大なため全弾命中するも、メカチンゴンの装甲表面にかすり傷さえつかない。大戦当時、絶大な装甲貫徹力を誇った17ポンド砲でさえメカチンゴンを貫けない。
戦車の車列は、二度目の一斉射撃を前にメカチンゴンの吐き出すロケット弾のブレスにより爆散した。
「自走砲部隊射撃開始!」
ララの指示に従い、森林地帯に散開させてある自走砲が射撃を開始した。こちらも全自動化されている。155㎜榴弾がメカチンゴンへと降り注ぐ。メカチンゴン周囲では盛んに砲弾が炸裂し、広範囲に爆炎が広がった。しかし、何のダメージも与えていない。
「ララ室長! 全く足止めになってません。このままだと容易に突破されます」
「問題ない。最終ラインにアレを配置しているからな」
「アレとは?」
「ガンシップだよ。風の谷のアレとは随分と趣が違うがな」
「??」
森林地帯に侵入してきたメカチンゴン。
周囲にロケット弾のブレスを吐くその姿は、往年の怪獣映画さながらであった。
「アレはメカゴジラを模しているのかな?」
「メカゴジラ??」
「本物は50m級だから似たようなサイズだが、火力は貧弱だな」
「どちらがですか?」
「メカチンゴンの方だ」
ララの一言を聞いていたのか、メカチンゴンの両目が赤く輝き周囲の森林地帯へと赤色のレーザービームを放った。それはまるで自らの火力を誇示するかのようだった。強烈な攻撃により、着弾点は巨大な業火に包まれていく。そして、再びビームを放ったがそれは何者かの強力なシールドに阻まれ四散した。
その位置には10m級の浮遊物体がいた。森林迷彩を施した芋虫型のものだった。
「あれが最終ラインのアレだ」
「何ですか?」
「ガンシップ・クロウラ。私の上司が乗っている」
「ガンシップですか」
「本来は高火力なのだが、今回は防御重視の重装甲型を配置した。ガミラス臣民の盾と言われるゼルグート級をちっこくしたような性能だ。盾は物理盾ではないがな」
そのクロウラに再びビームが放たれる。しかし、メカチンゴンのビームは拡散され四散した。
そして、今度はクロウラの目の部分から青白色のビームが放たれるものの、メカチンゴンの装甲に届く前に拡散してしまった。そこにはビームシールドが展開されているようだった。
「実弾兵器は効かない、ビーム兵器もダメ。やはり私の出番か」
その時、ララは不敵に笑っていた。
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