突入☆メカチンゴンを停止せよ!!
金森から小型通信機を内蔵したヘッドセットを装着したララは、ガンシップとの交信を試みる。
「部長。聞こえますか?」
「よく聞こえるぞ。ララ室長」
「奴の弱点は解析できたのでしょうか?」
「ああ。奴は非常に危険だ。動力に
「縮退反応炉? 聞いたことがありませんが?」
「我々の世界では爆縮反応弾の基礎理論と同一のものだ。しかし、動力炉としては理論構築されていない。別の言い方ではブラックホール動力炉と言ったところか」
「ブラックホール動力炉……」
話を聞いていた金森が目を輝かせた。そして得意げに話し始める。
「その理論は研究した事があります」
「あるのか?」
「ええ」
「さすがp.w.カンパニーの技術者だな」
「マイクロブラックホールの生成とそこに発生する超重力を利用する原理なのです。荷電粒子をブラックホールへと落下させ、その時に発生する超加速を利用して動力源とするものです。マイクロブラックホールの起動に約100メガトン級の水爆を使用するなど、扱いの難しいことが特徴なのですが、一旦起動すると約1000年補給の必要がない反永久機関と呼ばれています」
「そいつをぶっ壊せばいいのだろう?」
「ララ室長。それでは不味いのです」
「どうしてだ?」
「縮退反応炉を破壊してしまうとマイクロブラックホールが制御不能となるのです。反応炉を中心として半径約1000㎞程の、これはあくまでも推測なのですが、巨大な空間そのものがマイクロブラックホールの中に瞬時に吸収されてしまうのです」
「つまり、我々を含めアッシュワールド全体が消滅するんだな」
「その通りです」
メカチンゴンのビーム攻撃を受け止め、拡散させているガンシップ。既に数回の攻撃を受けており、そのシールドは青白色から赤橙色へと変化していた。
「ララ室長。こちらもそう長くはもたないぞ。今、奴の情報を送ったので対処しろ。その縮退反応炉を安全に停止させるのだ。頼むぞ」
「了解しました」
普通に返答しているようだが、ララの表情は暗い。
ララは歯ぎしりをしながら通信機を地面にたたきつけた。
「私にどうしろというのだ。ぶっ壊せばよいと思っていたのに話が違うじゃないか。全く」
「ララ室長。この情報は……行けそうですよ」
「行けるのか?」
「はい。そもそも、このメカチンゴンは兵器として設計されております。そして、現状そのコントロールが失われているのですが、非常停止用シークエンスが存在しています」
「それは?」
「基本的にメカチンゴンは自立思考型なのですが、直接操作する為のコントロールルームが設置されています」
「そこへ侵入し、停止させるんだな」
「その通りです」
「うーん。これは何か既視感があるな……エヴァの第7話、JA(ジェットアローン)が暴走してミサトが決死の突入をする回だ」
「そ、そんなどうでも良い情報を。読者様が混乱されますよ」
「私はああいう本編とはあまり関係がないストーリーが好きなのだ。それでいて意味深な情報が盛り込まれていたり……むふ」
「そうかもしれませんね。でもあのJAは格好が最悪でした」
「うむ。私も、もう少し格好よくしても良かったんじゃないかと思うぞ。まあ良い。行くぞ金森」
「はい。って、私も行くんですか?」
「当たり前だ。お前が付いてこなければその縮退反応炉をどうやって停止させるのだ」
「……」
「お前に拒否権はない。侵入ルートの提示」
「……はい……メカチンゴンの延髄に相当する部分に侵入用の非常ハッチがあります……そこから下方へと降りていきますと……心臓に相当する部分に……コントロールルームがあります」
「動力炉は?」
「その下……腹の部分です」
「失敗したらイチコロだな……おい、震えているのか?」
「……」
金森の両足は震えそして携帯端末を持つ両手も震えていた。ララは右手を挙げメカチンゴンの方へと振る。攻撃の合図だ。
「ラシーカ、潰鬼、攻射撃だ。目標は下半身。いいな」
空中で旋回していたラシーカと潰鬼はそれぞれ頷き、メカチンゴンの足元へと攻撃を開始した。
ララは金森の方を向きニヤリと笑う。
「コントロールルームまでは運んでやる。チビるなよ」
「わかってます!!」
メカチンゴンは背後からビーム攻撃を繰り返す潰鬼に向き直り、ロケット弾のブレスを吐いた。ちょうどララ達に背を向けた格好になる。
「行くぞ。落ちるなよ!」
「はい!!」
ララは金森を背負い走り出す。そして跳躍した。瞬間的にメカチンゴンの延髄部分、頸部後ろに取り付く。そして豪快なパンチを浴びせ装甲を破壊した。
そこには人が入るスペースがあり、二人は内部へと入り込む。
金森は正面にある金属製の扉の横にある端末を操作し扉を開いた。そこには上下に連なる竪穴があり、梯子状の取っ手が付いていた。
「ここを降りればいいのか?」
「はい、間違いありません」
ララは頷き梯子を伝って下へと降りていく。金森もその後へと続く。その梯子はそのままコントロールルームへとつながっていた。
ちょうど二人分の席があり、ララと金森はそれぞれ席に着く。眼前には大型のモニターが設置してあり、外の様子が現在進行形で映し出されている。
「これはいい眺めですね」
「感心してないで早く作業しろ」
「はい。制御OSは起動済み。遠隔操作不能でしたが直接の操作を試みます」
「任せる」
金森は計器盤にあるキーボードを操作し必要事項を入力していく。そしてパスワードの入力画面が表示された。
「パスワードは『kibou』と。エンター」
「!?」
モニターにはerrorが表示された。
「信じられない。もう一度『kibou』……駄目だ。入力できない」
「パスワードが変更されているんだ。メカチンゴンを暴走させた奴がいるなら当然の処置だろう」
「そうですね。他のパスワードを入力してみます」
「ああ」
「希望。英語ではhope、フランス語ではespérer、スペイン語ではesperanza……」
ララは腕組みをしつつモニター画面を睨んでいる。
金森は必死に多言語で入力しているが、全てerrorが表示される。
「ララ室長。どうすれば良いのでしょうか。このままでは浄水施設のみならず、このコロニーシーマン全てが破壊されてしまいます」
「zekebarmot」
「え?」
「ジーク・バラモットだ。騙されたと思って打ち込んでみろ」
「はい」
金森が『zekebarmot』と入力するとログインの文字が表示され、そして管理画面が表示された。
「やりました。これでメカチンゴンのコントロールを奪回しました。縮退反応炉の停止シークエンスに移行します」
「ああ。頼む」
金森の操作によって動力炉の停止手順に入った。表示される情報によれば、安全に停止するには約300時間が必要だという。
「成功です、ララ室長。これでメカチンゴンを掌握できました。ところで、その、ジーク・バラモットとは??」
ララはしかめっ面をして溜息をつく。そして首を振りながら徐に話し始めた。
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