ハイ・ソサエティ・コロニー

エクセリオン侵攻

 壁を壊して侵入してきた人型兵器。

 その姿は特徴的だ。


 全長数メートル。ずん胴な胴体からは細身の手足が伸びているが、その体形はスマートとは言えない。胸部から頭部にかけて、戦闘機の様なタンデム複座の操縦席が設けられている。そして、その操縦席には風防や装甲がない。操縦士はむき出しの状態になっている。


「おや、そいつはノラベル将軍制作のエクセリオンなのか。よくもまあそんなポンコツを引っ張り出して来たものだな」

「グハハハハ。ポンコツだと? このマシンはエクセリオンの改良型、エクセリオン二号だ。機関砲は35㎜にグレードアップしている。参ったか?」

「参るわけないだろう。ところで貴様は何者だ? 知った顔だが、一応聞いておいてやる」

「聞いて驚くなよ。私はアリ・ハリラー党戦闘隊長のゲップハルトだ」

「僕はハルト君です」


 後部座席の青年も律儀に返事をしてきた。アルヴァーレのお手伝いさんがいつからアリ・ハリラー党の一員になったのだろうか。


「では行きます」


 エクセリオン二号の後部座席からそのまま飛び降りて来たハルト君がララに飛び蹴りを加えようとするもララはあっさりと回避した。そして、回避直後のララに向かって胸部から突き出ている35㎜砲を放つゲップハルト。その砲弾もララははあっさりとかわす。

 そのララに、連続的に攻撃を加える予定のハルト君であったが、セーラー服姿のラシーカを見て体が硬直してしまっていた。


「か、可憐だ。特に……その……豊満な……胸元が……そのせいか……チラリと覗く腹部……しかも素肌……ああ……」


 ヨダレを流して呆けているハルト君。しかし、ララは容赦なく前蹴りを喰らわせた。ハルト君は天井に上半身が突き刺ささり、ぴくぴくを痙攣していた。


「あの? ハルト君でしたっけ? 大丈夫ですか?」

「大丈夫だ。奴の打たれ強さは群を抜いている」


 一応、ハルト君の心配をしている風なラシーカであったが、その視線はエクセリオン二号へくぎ付けとなっていた。


「どうしたラシーカ。ゲップハルトに興味があるのか」

「乗っかっているお腹の出ている方には興味がありません」

「上半身しか見えないのに、奴の腹が出っ張っている事によく気づいたな」

「ふふふ。私はそういうとこ厳しいのです」

「厳しいな……腹の出ている馬鹿作者が泣くぞ」

「他人様の体形を非難しているわけではありません。あのゲップハルトって人に興味が無いのです。作者様には……少し興味があるかも?」

「ぶっ。アレだけは止めておけ。ゲップハルトの方がましだ」

「そうなんですか?」

「そうだ」

「断言してますね。でも、今一番興味があるのはあのロボットです。アニメに出てきそうなキュートなスタイルが素敵♡」

「素敵か」

「ええ♡」

「しかし、我らの邪魔をしてる以上ぶっ壊すことになるのだが」

「お気持ちは分かりますが、鹵獲してもらえると嬉しいかもです。思いっきり可愛がってあげたい」

「それは、ドラゴン形態になった時のペット的なものなのか?」

「それもありますけど、ああいうのに乗って動かしてみたいって気持ちの方が強いです」


 ララとラシーカは二人で話し込んでいる。一人置いてけぼりとなったゲップハルトはいらだち始めた。


「おい。ララ室長。私を無視するんじゃない。ここにいる人員を皆殺しにするぞ」


 いきり立つゲップハルト。周りを囲んでいる触手マシンもその包囲の輪を縮め迫って来ていた。


「なあゲップハルト。一つ交渉しようじゃないか。このラシーカがそのエクセリオン二号を欲しがっている」

「まさか、寄こせというのではないだろうな」

「そのまさかだ。直ぐに降りろ。要求に従うなら殴ったりはせんぞ」

「ぐぬぬ。それはできない。ハルト君! いつまで寝ているのだ!!」


 天井に埋まっていたハルト君は周囲をこわして抜け出し床へと降りて来た。


「ぷはー。酷いな。ヒンヌーのくせに生意気だぞ」


 その、ハルト君の一言にラシーカの怒りに火が付いた。今にもぶん殴ろうと身構えている。


「ララちゃんに対する暴言、許しません」

「ヒンヌーは下衆だ」

「このー」

 

 顔を真っ赤にして飛び掛かろうとするラシーカだが、ララが制止する。

 

「待てラシーカ。そいつは操られているだけだ。確保しろ」

「はい!」


 ラシーカはすぐさまハルト君に抱きついた。ハルト君は赤面して硬直してしまい身動きが取れなくなっている。


「ララちゃん。これで良いの?」

「上出来だ」

 

 エクセリオン二号の右腕から光剣が伸びる。そして、左腕からは電磁鞭が伸びて来た。


「お覚悟!」


 エクセリオンの電磁鞭が床を叩き火花を散らす。

 しかし、ララの姿は其処にはなかった。


「ララ室長。どこへ行った?」

「ここだ」


 咄嗟に振り向くゲップハルト。ララはエクセリオンの後部座席に座っていた。


「何故ここに!?」

「ふん!」


 ゲップハルトは首根っこをひっ掴まれ、ララに放り投げられた。運よく人造触手メデューサの上に落下したが、すぐさまその触手に絡め取られもがいていた。


「ラシーカ。ハルト君を触手へほうり込め。それからここに来い。ちょうど前席が空いたぞ」

「はーい」


 その一言でパッと表情が明るくなったラシーカ。ハルト君を触手に投げ込み、そのままジャンプしてエクセリオン二号の操縦席へとジャンプした。


「きゃー。本物のロボットです。凄い凄い。どうやって動かすのかな?」

「基本動作はAI任せでOKだ。先ずは人造触手メデューサを破壊してここの係員を救出しろ」

「はいです。ではAIさんいいでしょうか?」

「ワタシはエクセリオン二号のAIホシコです」

「ホシコちゃんね。私はラシーカ。後ろの席にいるのはララちゃんよ」

「ラシーカ様にララ様。よろしくお願いします。操縦者はラシーカ様、ナビゲーターはララ様で登録いたします」

「馬鹿ホシコ。何勝手に……ウゴウゴ」


 触手に絡まれているゲップハルトが何か言っているのだが、二人には聞こえていない。


「ワタシはエクセリオン二号のAIホシコです。ラシーカ様ご命令を。先ずはそこにいるゲップハルト隊長をヤッテしまいますか?」

「生意気だぞホシコ。私をヤルなど言語道断だ……グガゴガ」

「メデューサを破壊してください。捕らわれている転送係員の救出、人命を最優先」

「了解しました。胸部35㎜砲に徹甲弾装填、メデューサのコアに対して射撃開始します」


 エクセリオン二号は人造触手メデューサに対して射撃を開始した。

 35㎜砲はメデューサのコアを正確に打ち抜き、その触手は活動を停止した。それでもなお、ゲップハルトとハルト君は触手に絡まれて身動きが取れなくなっていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る