突入! アッシュワールド

到着☆アッシュワールド―いきなり遭遇下半身ドラゴン―

 p.w.カンパニーの異世界転送ゲート。

 最大一辺が10m以内の立方体を異世界に転送できるという。


「これは魔法なのか?」

「いえ、科学技術の粋を集めた高度な技術です。世に存在する魔法も、全て科学に置き換えることができるのです」

「なるほど、どこかで聞いたことがあるな」

「それは?」

「十分に発達した科学技術は魔法と見分けがつかない……だったかな」

「ええ、SF作家アーサー・C・クラークが定義した三つの法則の一つです」

「そうだったな」

「ではこちらへ」


 一辺が10mの巨大なコンテナ。その中に入るララ室長。ララに付き添っている男は金森という。p.w.カンパニーにおいて異世界転送技術に携わる技術者だ。黒縁眼鏡をかけ、背広の上に白衣をまとっている。


「転送は一瞬です」

「うむ」


 コンテナが光に包まれる。

 そして元に戻る。正面の扉が開いた。


「到着しました。アッシュワールドへようこそ」

「早かったな」

「ええ」


 ララ室長と金森がコンテナから外へ出る。そこへ突然すっ飛んでくる巨大なコンテナが一つ。

 ララは金森の首根っこを引っ掴まえて回避行動を取った。


「くく苦しい」

「我慢しろ」


 ズダダダーン!!


 ララ達が乗って来たコンテナと同型のコンテナが衝突し、そして、それらはひしゃげて潰れ、破片をまき散らす。

 トラックやフォークリフト、クレーン等の機械類もすっ飛んでくる。


「何だ? 何が起こっている?」

「金森、ここは何処なんだ」

「アッシュワールド1番コロニーのはずなのですが、こんな騒乱状態になっているとは!?」


 すっ飛んでくる電動スクーターをひょいとかわしたララが見たものは、巨大なドラゴンの下半身だった。

 

 赤い鱗、太い足と尻尾。

 お腹の部分は見えるが、それより上は暗黒の巨大な渦巻きに遮られて確認できない。


 その下半身が暴れているのだ。

 その辺りにある色々なものを蹴飛ばし、踏みつぶしている。


「なあ金森。あれは何だ?」

「わかりません。こんな、信じられない。ララ室長、ここは避難しましょう」

「避難と言っても何処に逃げるのだ。あんなモノが暴れていては、このコロニーが破壊されるかもしれないじゃないか」

「そうかもしれませんが、アレをどうやって鎮圧するのですか?」

「それもそうだな。ぶん殴ろうにも顔がない」

「そ……そうですね。しかし、顔が重要なのですか?」

「顔面へのパンチが一番効くんだよ。試してみるか」

「いえ、結構です」

「ところで金森」

「何でしょうか」

「あの下半身の奴を何とか出来たら、ハンターの資格をくれ」

「それは大丈夫です。と言いますか、ララ室長でしたら書類を提出されるだけで資格は授与されますが……って聞いてない!」


 ララは金森の返事を待たず、下半身だけのドラゴンへ向かって走っていく。そして、巨大な脚による蹴りをかわし、尻尾に取り付いたのだった。

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