魔女っ娘探偵アルヴァーレ☆アッシュワールド・バウンティハンター☆ララ室長が主役ですか?

暗黒星雲

プロローグ

異世界温泉ツアー☆アッシュワールドへ

 ララの目の前に短髪の男がいる。地味だが仕立ての良いスーツを着こなし、キザな銀縁眼鏡をかけている。彼の名はアリ・ハリラー。日夜、悪さをしでかすアリ・ハリラー党の元締めだ。


「何か用か?」

「うふふ。もちろんですとも。私がわざわざ、この内閣魔法調査室の吉原分室へ顔を出したのには相応の理由があるのです」

「その理由とは?」

「休戦協定を締結したい。そして和解のためのリクリエーションを提案したい」


 アリ・ハリラーはニコニコ笑っている。心ここにあらずといった印象で浮わついている。周囲にはハートマークがいくつも飛び交っているようだ。


「話してみろ。アリ・ハリラー」

「はい、ララ室長。この度、私は温泉ツアーの無料招待券を入手したのです。これは10名分なのですが、我らアリ・ハリラー党だけではチケットが余ってしまう。そこで、日ごろララ室長もお誘いしてはどうかと思った次第でございます」

「温泉ツアーか。面白そうだな」

「ええ、行先は異世界アッシュワールド。皆さんが体験したことがない未知の温泉郷であるとの事です」

「アッシュワールド? 知らないな」

「そうです。圧倒的に知名度が低い。なので、期間限定で無料招待企画を実施しているのです。私がそれに当選したという訳です」

「10名分もか?」

「ええ。私のところではミスミス総統、私、ノラベル将軍、ゲップハルト隊長、戦闘員が二名、計6名なのです」

「ふむ。残りの4名を我らから」

「そうです。ララ室長とアルヴァーレの三名ではいかがかと……」

「私は行かない」

「そんな冷たい事をおっしゃらずに」


 その時、隣部屋に隠れていたアルヴァーレのメンバーが飛び出してきた。リーダーのヴァイにブランとレイス、そして助手のハルト君だった。


「キャー。温泉ですって」

「未知なる秘境!?」

「お肌に良いのかしら」

「傷の治療にも!? でも僕は人数外でしょうか??」


 突然の乱入者に顔をしかめるララ室長。しかし、アリ・ハリラーは破顔し、だらしない表情のままデレデレしている。


「貴様の目的は理解した。残り四人、この者たちを行かせよう」

「本当に? ララ室長、ありがとうございます」

「キャー。嬉しいわ!」

「温泉って聞いただけで興奮しちゃう」

「僕も行って良いのですか?」

「ああ。羽根を伸ばしてこい」


 アリ・ハリラーはその場にいた人数を数えながら首を傾げた。


「おや? アルヴァーレのメンバーはヴァイさん、レイスさん、ブランさん、そして助手のハルト君。これで4名。ララ室長は??」

「私は行かない」


 その一言に何故か(´▽`) ホッと安心しているアリ・ハリラーだった。


「何か問題でもあるのか」

「いえ。何でもありません」

「バレバレだ、アリ・ハリラー。私が参加しない事で安心しているのだろう。私の部下に対する覗きやお触りは厳禁だからな。事実が発覚した時点で貴様の心臓を握り潰す」

「わ、分かっておりますとも」

「出発は?」

「三日後の午前7時です。ここまでお迎えに上がりますよ」


 こうして「異世界温泉ツアー」は始まる。

 謎の異世界、アッシュワールドへの無料招待温泉ツアー。10名の無料招待との破格の条件に違和感を持っていたのはララ室長だけだった。

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